なぜ製品のIoT化が進まないのか、「通信の壁」を打破する10年2000円の破壊力製造業のIoT活用

製造業がIoT対応を進める上で、大きな障壁となっているのが通信機能の組み込みや地域対応、料金設定などの難しさだ。こうした課題を解決するためにはどういう手が打てるのだろうか。

» 2023年01月26日 10時00分 公開
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 稼働監視や予防保全など、製造業において製品にIoT(モノのインターネット)機能を付け、サービス・ソリューションを展開する動きが加速している。しかし、従来通信機能のない製品を開発してきた製造業にとって、通信料金の問題や地域対応の問題などの新たな課題の対応に苦慮するケースが多いのも現実だ。

 こうした障壁を打破するために、IoT回線サービスを専門としてグローバルで通信サービスを展開しているのが、2017年にドイツで設立された1NCE(ワンス)だ。1NCEでは、2022年10月から国内企業に向け、低容量IoT回線サービス「1NCE IoTフラットレート」の提供を、独占販売パートナーであるソフトバンクを通じて開始した。

 なぜ、1NCEのサービスは製造業がIoT化を進める上での課題を解決できるのだろうか。そのインパクトや今後の展開について、1NCE日本法人の代表取締役社長 小野仁氏と、ソフトバンク グローバル事業本部 新規事業統括部 統括部長の工藤裕哉氏に話を聞いた。

製造業の製品IoT化を阻む3つの壁

 製造業のIoT活用は2015年頃から広がり始め、多くの工場などで実際に導入も進んでいる。しかし、大手の製造業では自社で進めることは可能でも、中堅以下の製造業では通信機能を新たに加えることなどが障壁となり、順調に進展しているとはいえない状況だ。

 特に、自社製品のIoT化については、多くの製造業が対応に苦慮するケースも多く、その理由について、1NCE日本法人の小野氏は「通信コストの高さ」「グローバル対応の難しさ」「回線マネジメントの煩わしさ」の3点を指摘する。

1NCE日本法人の代表取締役社長 小野仁氏 1NCE日本法人の代表取締役社長 小野仁氏

 「2015年当時からIoTの普及に関わってきましたが、工場のIoT化や新たなIoTサービスの構築など、達成したい目標がありながらも導入に踏み切れない製造業に多く出会ってきました。IoTは通信コストの問題や料金体系の問題など、複雑で不確実な要素が多く、事業計画立案が難しくなりがちです。特に製造業はグローバルに展開している企業が多くありますが、通信サービスのグローバル対応については、国によって月額基本料金やデータ通信料金単価が変わるためTCO(総所有コスト)が分かりにくく、さらに、現地の通信会社と個別に契約しなければならない問題があります。製造業が単独でこれらの課題をクリアするのは相当ハードルが高かったといえます」(1NCE日本法人の小野氏)。

ソフトバンク グローバル事業本部 新規事業統括部 統括部長の工藤裕哉氏 ソフトバンク グローバル事業本部 新規事業統括部 統括部長の工藤裕哉氏

 同様にソフトバンクの工藤氏はこれらの3つの課題について、それぞれを進める上での作業の複雑さを指摘する。「例えば、工場はそれぞれ構成やニーズが異なるため、回線数やデータ量など通信に関する契約はオーダーメイドになります。そこで、どうしても現場責任者との話し合いが必要になります。大手企業であれば交渉担当者がいますが、中堅以外の企業では、通信の専門家がいないケースもあり、そのような状況でのコスト把握や通信事業者との交渉は現実的ではありませんでした。これが今まで中小製造業にIoT活用が広がらなかった理由の1つだと考えます」(ソフトバンクの工藤氏)。

 さらに、こうした課題が生まれている背景として1NCE日本法人の小野氏は「通信キャリア企業が通話やデータ通信など通常の携帯電話端末(スマートフォン端末)向けサービスを前提としてIoTについてもサービス構築を進めてきたことが要因としてある」と説明する。

 多くの大手通信キャリア企業も以前からIoT回線サービスを提供してきたが、どの事業者ももともと携帯電話向けにインフラを構築し、大容量のデータのやりとりを前提としたコンシューマー向けのサービスを柱としており、IoT回線に関しても既存のプランを当てはめる形でサービスを提供していた。その結果、IoT通信サービスに合致しないオーバースペックな機能が乱立したり、各社がさまざまなレートプランを用意したりして、適用を広げるには難しい環境が生まれていたという。

 「IoT通信にもさまざまな使い方がありますが、利用用途の大部分を占めるのは『1日に数回pingを飛ばす』『異常を検知した時だけ通信を行う』など、パターン化された低容量のデータ通信です。これは大容量の通信を前提としたコンシューマー向けのサービスとは全く異なるもので、通信の使い方も大きく違ってきます。既存のキャリア企業のサービスでは、こうした点でIoT需要を満たす通信プランやインフラを提供できていませんでした」と1NCE日本法人の小野氏は問題点を指摘する。

 こうしたIoT通信サービス特有の課題を解決するために設立されたのが、1NCEである。1NCEは、現CEOのAlexander P. Sator(アレクサンダー・P・セーター)氏とドイツテレコムが2017年に共同出資する形で創業。ドイツのケルンに本社を置き、IoT向け通信サービスを世界140以上の国と地域で提供している。高い安全性と信頼性が評価され、導入企業は世界で1万社以上、契約回線数は1500万回線に上る。同社の特筆すべき点は、セーター氏をはじめとする創業メンバーの多くがボーダフォンやテレフォニカなど欧州のキャリア企業の出身で、長らくIoT分野に携わってきたということだ。

 「IoT市場自体が伸びる一方、IoT回線の導入率の伸び悩みに課題を感じ、顧客の声に応える形で1NCEを起業したのです。IoTニーズに応える通信を誰も用意できないのであれば、われわれが作ろうというシンプルな発想で生まれたのが1NCEという企業です。そのため、当初からIoT領域向けにグローバルでも一括で使えるレートプランやソリューションを想定したビジネスモデル構築を進めてきました」と1NCE日本法人の小野氏は説明する。既存のサービスの延長線上ではなく、顧客のニーズから逆算して創り出したサービスだという点が、従来のセルラーIoTサービスとの大きな違いだ。

10年間500MBまで2000円という低価格を売り切りで実現

 その中で2022年10月から日本国内に向けて低容量IoT回線サービスである1NCE IoTフラットレートの提供を開始した。1NCE IoTフラットレートの大きな特徴は、プリペイドで10年間、一括2000円(税別)で使えるという低価格と分かりやすさだ。

 プランにはデータ容量500MBとSMS250通の他、回線管理プラットフォームやAPI接続機能、IoTデバイス管理ツールなどIoTの導入に必要な機能が全て含まれている。このサービスを世界140以上の国と地域において、同価格で利用できるのも強みだ。10年間のうちに500MBを使い切ってしまった場合には、管理画面からさらに2000円(税別)で500MBをチャージできる。10年の期限を迎えそうな場合も、有効期限の3カ月前から延長が可能だ。

photo 1NCE IoTフラットレートの特徴[クリックで拡大] 提供:1NCE

 SIMカードはオンラインストア「1NCE Shop」で1枚から購入可能で、注文後は最短3営業日で手元に届く。購入前の商談や最低ロット数での購入などが不要のため、ユーザーが「欲しい」「試したい」と思ったタイミングで入手できる。月額基本料金制のサービスでは利用直前まで料金を発生させないために利用開始時の各種設定を自身で行う必要があるが、1NCE IoTフラットレートはプリペイド式のためアクティベートされた状態で手元に届く点も魅力だ。ユーザーはIoTデバイスにSIMを挿入し、簡単な設定をするだけでIoT通信を開始できる。OpenVPN機能(無償オプション)を用いた接続も可能なため、セキュリティ面も安心だ。

 先述したように1NCEでは、こうしたIoTニーズに寄り添う通信サービスを構築するためにビジネスモデルを一から構築したことが特徴だ。例えば、この低価格を実現するため、1NCEは「セールスコスト」「IT開発コスト」「ネットワークコスト」という3つのコストを徹底的に抑制している。

 オンライン販売を推奨することで大幅にセールスコストを抑制し、IoTに領域を絞った機能拡充と自社開発を推進することで、外部調達コストをかけずに優れたサービスを実装している。また、ドイツテレコムとの資本関係によって、MNO(Mobile Network Operator)と同等の条件でネットワークを調達可能にした。IoT通信の専門企業としてビジネスモデルを確立しているからこそ、低価格でありながら高品質なサービスを提供できるのだ。

photo 1NCEが低価格と高品質を両立できる理由[クリックで拡大] 提供:1NCE

中小企業から大企業まで、世界で1万社が利用中

 1NCE IoTフラットレートは低容量に特化しているため、1日当たりの通信頻度やデータ容量が少ない場面への導入に向いている。建物や工場の設備管理や物流のトラッキング、スマートメーター、IoT家電、設備監視、保有資産のトラッキング、テレマティクスなど、幅広い用途で活用できる。1回線から契約できるため、研究開発や実証実験など、本格的なサービス導入前の検証などにも気軽に利用できる点もメリットだ。現在はグローバルで大手企業を含めた1万社に利用されている。

 例えば、フリート管理の米Targa Telematicsが物流およびリース資産の位置情報管理に利用している他、業界大手のエレベーターメーカーがエレベーターの遠隔管理や監視で活用している。また、世界的なコーヒー機器の総合メーカーが機器の位置情報把握や遠隔サポートなどにも利用しているという。「1万社の利用は大企業だけでは難しく、中小企業までを含めた、幅広い企業で利用しやすいサービスであるということを証明しています」(ソフトバンクの工藤氏)。

photo 実際に導入され使用されている主な用途[クリックで拡大] 提供:1NCE

IoTを普及させ、よりよい社会の創造に貢献したい

 今回の両者の協業により、1NCEではソフトバンクのネットワークを生かし、日本での展開を加速させる一方で、ソフトバンクにとっては日本を含むアジア19カ国および地域において、独占的に1NCEのサービスの取り扱いを行うことで、幅広くIoT化を支援していく方針だ。

 両社の取り組みは2022年の10月に始まったばかりだが、すでに国内での導入実績も順調に増えつつある。大企業から中小企業まで企業規模によらず、さまざまな業種に広く導入されているという。「工場のIoT化はもちろん、工場で生産しているモノに通信機能をパッケージ化するという用途でもご利用頂いています。これまで、通信機能を製品に組み込みたかったが制約が多く断念されていた顧客が潜在的に多くいることを実感しました。われわれのサービスがIoT導入のハードルを下げることでIoTの普及を促進し、最終的により良い社会の創造に貢献できると考えています」と1NCE日本法人の小野氏は述べる。

 一方、ソフトバンクの工藤氏は「1NCE IoTフラットレートを紹介するとわれわれが想定していなかった用途について相談されるケースも多く生まれてきています。今までは通信サービスの条件により断念せざるを得なかったアイデアが、制約が打破できたことで新たな価値創造につながってきているのだと考えます。われわれも単に回線だけを売るのではなく、新しいユースケースをユーザーと一緒に作り出していきたいと考えています」と抱負を語っている。

 これまで製造業がIoT化を進める上で、通信の制約条件はさまざまなアイデアの実現を阻む壁となってきていた。1NCE IoTフラットレートがもたらす新たなIoT通信の選択肢は、これまで難しかった工場のIoT化やIoT製品の実現のアイデアを強力に後押しする推進剤になってくれることだろう。

photo 1NCE日本法人の小野氏(左)とソフトバンクの工藤氏(右)

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年2月12日