生産を止めずに統合ネットワークを構築、工場DXに向けイノベーションを追求スマートファクトリー

エンジニアリング商社の進和は、メーカー機能として展開する製造部門の事業拡大を続けている。中でも、工場内の見える化や生産設備をつなぐ役割を担ってきたFAシステムセンターは、スマートファクトリーイノベーションセンターに改称するとともに、高度化するスマート工場への要求に対応すべくシスコシステムズとの協業を加速させているところだ。

» 2022年11月07日 10時00分 公開
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 創業から70年以上の歴史を持つ進和は、商社機能とメーカー機能を兼ね備えたエンジニアリング商社として、3000社を超える得意先、4000社に達する仕入れ先をつなぎ、自動車関連産業を中心とした幅広い産業界の要望に応えている。

 独自に培った技術をメーカー機能として展開する製造部門では、メンテックセンター、ジョイテックセンター、FAシステムセンター、メカトロシステムセンター、航空宇宙機器課、計測技術課、エンジニアリング課の7つのチームが活動中だ。モノづくりを支える生産設備からシステムの設計、開発、製造、計測、部品接合やメンテナンスまで、バラエティに富んだ製品やサービスを届けている。特に注目すべきなのがFAシステムセンターの取り組みであり、シスコシステムズ(以下、シスコ)との協業によるスマート工場に向けたセキュリティソリューションの本格展開を開始した点だ。

商社機能とメーカー機能の2つの顔を持つ

進和の石川修示氏 進和 取締役常務執行役員 営業本部長 兼 中部本店長の石川修示氏

 進和が創業したのは1951年のこと。溶接材料を海外から輸入する商社としてのスタートだった。しかし、それから7〜8年が過ぎた頃、顧客からの要望に応える形で、主にエアコンや給湯器などに使われる熱交換器のロウ付けを量産的に行う溶接工場を立ち上げた。

 進和 取締役常務執行役員 営業本部長 兼 中部本店長の石川修示氏は、「当社が商社機能とメーカー機能という2つの顔を持つエンジニアリング商社へと向かっていく原点となりました」と語る。ちなみにここで立ち上がったロウ付け溶接の事業が、現在のジョイテックセンターに継承されている。

 さらに、それから数年が過ぎた1964年に進和が立ち上げたのが、石油化学プラントなどの生産設備のメンテナンスを主な対象として特殊肉盛溶接や溶射加工を手掛ける工場だ。この工場は現在のメンテックセンターへと発展している。その後も進和のモノづくりへの取り組みは拡大していく。1984年にFAシステム機器の生産分野へ進出すべく電子機器事業部を設置しており、これが2002年にはFAシステムセンターとなっている。そして2006年には半導体業界向けの精密塗布装置製造事業に着手し、同事業がメカトロシステムセンターとなった。

 これらジョイテックセンター、メンテックセンター、FAシステムセンター、メカトロシステムセンターが、現在の進和におけるモノづくりの4本柱となっている。石川氏は「これら4つのセンターを中核とする製造部門の売上比率は既に30%程度まで高まっており、年々増加している傾向にあります。われわれとしても事業の高付加価値化を目指してこの比率をさらに高めていき、将来的には商社部門と同程度の規模に育てたいと考えています」と意気込む。

スマート工場に向けた本格的なソリューション展開を開始

 モノづくりを起点とする事業の高付加価値化戦略は、進和が2020年9月〜2023年8月にかけて進めている第3次中期経営計画にも盛り込まれている。同中計では創業以来の社是である“三拓の精神”への立ち返りを掲げた。「新商品の開拓」「新規需要家の開拓」「新規需要の開拓」の3つの開拓を意味する“三拓の精神”は「現代風に意訳すれば、常にイノベーションを追い求めるフロンティアスピリッツに通じる」(石川氏)という。

 そうした中での先端技術への新たなチャレンジとしては、例えば本社および隣接するラボスペース「LAB BEYOND」における、ブルーレーザー・グリーンレーザーを含む合計8台もの実験設備の導入などが挙げられる。前述の第3次中期経営計画における基本方針の一つが「次世代車のCASE領域における最適ソリューションの提供」となっている。そこで欠かせないのが車載電池やモーターといった銅やアルミを材料とする部品であり、大気中での非鉄金属の溶接を可能とするブルーレーザーおよびグリーンレーザーを用いた溶接技術がアドバンテージを発揮するわけだ。石川氏は「お客さまから要望される試作から品質検証、設備販売までフルターンで対応できる体制を整えています」と述べる。

本社に隣接するラボスペース「LAB BEYOND」の構成 本社に隣接するラボスペース「LAB BEYOND」の構成[クリックで拡大]

 また、工場内におけるアンドンやフィールドネットワークなど、生産設備や生産ラインを見える化するとともにこれらをつなぐ技術の確立や生産指示システムの構築などを手掛けてきたFAシステムセンターは、従来技術にとどまらない高度化が進みつつあるスマート工場に対応すべく2022年9月にスマートファクトリーイノベーションセンター(SFiC)に改称した。LAB BEYONDで提案してきたさまざまな技術や製品をより大きな規模で展開できるように、同年12月には愛知県小牧市に新たなラボスペースを設置する予定だ。

 このSFiCの活動において重要な鍵を握るのがシスコとの協業である。「ネットワークやセキュリティに関するシスコの業界をリードする技術と知見を生かした実証実験の設備を新たなラボスペースに用意するとともに、人材育成も強化していきます。そしてローカル5GやAGV(無人搬送車)、ロボット、シミュレーションなどの技術を融合し、今後の変種変量生産のニーズに対応しつつ、工場DX(デジタルトランスフォーメーション)に役立つソリューションを創出していきます」(石川氏)。

設備だけでなく人もつながる時代に向けてシスコと協業

進和の川原直樹氏 進和 上席執行役員 SFiC センター長の川原直樹氏

 これまでPLCを中心としたフィールドネットワークの世界において、生産ラインの見える化および制御/管理を手掛けてきた進和のFAシステムセンターだが、新たに発足したSFiCでは今後に向けてより広範な“つながる”世界を目指すという。進和 上席執行役員 SFiC センター長の川原直樹氏は、「IoT(モノのインターネット)によってネットワークにつながる機器の数や種類はどんどん拡大していますが、これからは設備と設備がつながるだけでなく、そこに人もつながる時代になると考えています」と説明する。

 どの製造業も顧客のニーズに迅速に応えるモノづくりを目指しているわけだが、そのためにはより広範な情報を連携させて分析し、人の意思決定や迅速なアクションを促す仕組みを作り上げる必要がある。まさにこのテーマに共同で取り組むのが、進和とシスコの協業なのだ。

進和の考えるスマート工場のコンセプト 進和の考えるスマート工場のコンセプト。「稼ぐ」「止まらない」「人に優しい」を掲げており、設備と設備だけでなく人がつながることで「人に優しい」の実現が可能になる[クリックで拡大] 提供:進和

 そもそも両社の協業はどんな経緯から始まったのだろうか。進和 SFiC 次長 兼 技術第2課 課長の浦野宗弘氏は、「2016年に、ある製造業のお客さまに対してシスコと共同で産業機器に求められる厳しい環境対応が可能なインテリジェントスイッチ『IE2000/IE4000シリーズ』を提案したのがきっかけで、そこから両社の関係性が徐々に深まっていきました」と語る。

 川原氏も「当然、われわれとしてもシスコが世界トップクラスのネットワーク機器ベンダーであることは知っていました。しかし、そこで提供している機器はOAやITシステム向けの製品というイメージが強く、正直なところ製造業のOT(制御技術)の世界には縁がないと思い込んでいました。そんな先入観を覆したのがIE2000/IE4000シリーズであり、われわれは大変な衝撃を受けるとともに、シスコという企業に対して一気に親近感がわきました」と振り返る。

セキュリティ対策はスマート工場を成功させるための必須条件

進和の浦野宗弘氏 進和 SFiC 次長 兼 技術第2課 課長の浦野宗弘氏

 この協業を通じて進和は、スマート工場を目指す製造業に向けて次のようなソリューション展開を進めている。浦野氏は「工場内にある生産指示システム、トレーサビリティーシステム、アンドンシステムなどの設備は、別々のネットワークでつなげて運用されてきました。シスコとの協業によって、これらをネットワークで統合しデータを連携させることが可能となります。また、ネットワークそのものも有線だけでなく工場内に無線アクセスポイントを配置するなど、選択肢の幅が大きく広がります」と強調する。

 ただし、そこにも課題がないわけではない。工場内のさまざまな機器や設備、システムがつながればつながるほど、サイバー攻撃から狙われる新たなアタックサーフェス(攻撃対象領域)が拡大し、被害の範囲も広がっていくからだ。実際、工場内のIoT機器やOTシステムを対象としたサイバー攻撃は年々増加している傾向にあり、セキュリティ対策はスマート工場を成功させるために欠かせない条件となっている。

 実はそこに進和とシスコの協業の核心がある。

 シスコが提供しているのは、スイッチや無線アクセスポイントなどのネットワーク機器だけではない。エージェント不要で工場ネットワークの内部通信を監視し、さまざまな機器からネットフローデータを収集することで高度な脅威分析を行うNDR(Network Detection and Response)製品の「Secure Network Analytics(旧Stealthwatch)」。さらにはネットワークに接続しようとするデバイスを本当に受け入れてよいのか認証を行い、ネットワークに入った後もどこまでアクセスを許すのか、あらかじめ設定されたポリシーのもとで柔軟にコントロールを行うことができる統合管理プラットフォームの「Cisco ISE」といったソフトウェアを提供しているのだ。「これらのソリューションを組み合わせて提供することで、お客さまの工場ネットワークにおける堅牢さを担保することができます」(浦野氏)。

進和が目指す工場のインフラ像 進和が目指す工場のインフラ像[クリックで拡大] 提供:進和

 そしてこの工場セキュリティソリューションは、既に多くの製造業において導入が始まりつつある。例えば、ある自動車関連メーカーは、工場内で分散する産業用PCやロボット、PLCなどのデータをネットワークで統合し、変種変量生産にも対応できるスマート化を長年求めていたが、そこでボトルネックとなっていたのが「生産設備に影響を及ぼさないネットワークの構築」という課題だった。

 川原氏は「このお客さまの要求に応えたのが、進和の製造現場に関する知見とシスコの産業ネットワークに関する知見を高度に融合したわれわれのソリューションです。工場内の設備を止めることなく、全社システムと連携可能なIoT化向け統合ネットワークを構築し、さらに入念な動作検証を行った後にシスコのSecure Network AnalyticsやCisco ISEを導入し、セキュリティを固めました」と語る。

 FAシステムセンターから改称したSFiCの活動はこれからさらに加速していくだろう。そして、シスコとの協業も今後どんどん深化させながら、スマート工場や工場DXに成功をもたらすさらなるイノベーションを追求していく構えだ。

左から、進和の浦野宗弘氏、石川修示氏、川原直樹氏 左から、進和の浦野宗弘氏、石川修示氏、川原直樹氏。スマート工場におけるさらなるイノベーションを追求していく[クリックで拡大]

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提供:シスコシステムズ合同会社、株式会社進和
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2022年12月6日