350年以上の歴史を持つ老舗商社の岡谷鋼機は「ものつくりに貢献するグローバル最適調達パートナー」という企業理念を掲げ、国内外製造業の進化を支える姿勢を鮮明に打ち出している。グループ企業の岡谷システム、ネットワークソリューションにおけるグローバルリーダーであるシスコシステムズとの3社協業で提案する「次世代インフラ・データ基盤」は、IT/OT間のギャップを埋め、スマート工場の実現を可能にするソリューションとなっている。
1669年創業という老舗商社の岡谷鋼機は、現在では鉄鋼、特殊鋼、非鉄金属、電機・電子部品、化成品、機械・工具、配管住設機器、建設関連、食品など多岐にわたる商材を手掛けている。
そんな岡谷鋼機が掲げているのが「ものつくりに貢献するグローバル最適調達パートナー」という企業理念であり、国内外製造業の進化を支える姿勢を鮮明に打ち出している。中でも、ものつくりインフラの構築などを手掛ける産業資材部門は、グループ会社の岡谷システム、通信機器をグローバルで展開するシスコシステムズ(以下、シスコ)との3社協業により製造業のデジタル化を支援する体制を整えている。
岡谷鋼機は現在、鉄鋼、情報・電機、産業資材、生活産業という4つの事業セグメントで構成されている。この中で、国内外製造業のスマートファクトリー化を支える「次世代インフラ・データ基盤」の構築支援を行う中心組織となっているのが、産業資材セグメントのメカトロ部門である。
メカトロ部門はその名の通り、主に工作機械や産業機械、各種ロボット、自動化設備、機能部品、複合生産システムなどを扱っている事業部門だが、特に深い結び付きを持っているのが中京地区や東海地区に主要拠点を展開する自動車関連企業だ。
岡谷鋼機の取締役であり産業資材事業担当を務める佐藤宏昭氏は「間接取引を含めた全社売上高のうち、自動車業界向けが占める割合は高まっています」と語る。例えば、生産設備や工具だけでなく、ロボットなどの省人化設備や搭載品も手掛けており、それぞれ高い納入実績を誇っている。
そんなメカトロ部門が「ものつくりインフラの構築支援」へと事業方針の舵を切る上で大きな転機となったのは、今から25年前となる量産ハイブリッド車の登場だ。「これを契機に自動車の電動化が始まり、自動車製造で求められる機械や部品が多様化し、当社のビジネスも大きく変わりました」(佐藤氏)。
その後も変化のスピードはさらに加速している。佐藤氏は「今や自動車業界は100年に一度の大変革の時代を迎えたとも言われ、世界各国でCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化)の実現に向けてしのぎを削っています。一方、サステナビリティが叫ばれる中でカーボンニュートラルへの対応も喫緊の課題となっています。こうしたお客さまの環境変化に対応すべく、われわれ自身も変わっていかなければなりません」と強調する。
それでは具体的に岡谷鋼機はどんな変革を目指すのか。2025年に向けた中期経営計画「GIC 2025」で示されたのが“Global”“Innovation”“Challenge”という3つの軸である。
まず“Global”として、岡谷鋼機は既に北米、中南米、欧州、アジア、中東、オセアニアなど世界23カ国に拠点を展開しているが、これらをさらに拡充していく。「地産地消を目指すお客さまとともに各地域で貢献できる体制を整えていきます」(佐藤氏)。“Innovation”では、GIC 2025の始動以前から、カーボンニュートラルに関する先端技術を持つシリコンバレーやイスラエルのスタートアップとの連携や、名古屋大学とのベンチャーのインキュベーションなどに取り組んできたが、引き続きこの動きを強化していく。単なるモノ売りにとどまらない形で、機能面やサービス面の付加価値を提供していく岡谷鋼機グループ自身のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていく方針である。そして“Challenge”は、岡谷鋼機の歴史に息づく、既存のものに捉われない新しい取り組みへの挑戦を意味している。
岡谷鋼機はこれら“Global”“Innovation”“Challenge”の3軸に基づくものつくりの変革を、岡谷システム、シスコとの3社協業で体現していこうとしているのである。そして、スマートファクトリーを推進していく上で欠かせないセキュリティも、そうした中で重点的に捉えているテーマの1つだ。佐藤氏は「ランサムウェア攻撃など昨今のサイバー脅威のインシデントを受けて、お客さまの間で危機感が高まっているこの課題についても、3社協業の体制の下で解決を図っていきます」と今後を見据えている。
2021年に発足した、岡谷鋼機、岡谷システム、シスコとの3社協業の体制だが、どういった経緯で成り立ってきたのだろうか。
3社協業の体制のプロジェクトリーダーを務める、岡谷鋼機 豊田支店の笠原康平氏は「シスコの技術・グローバルナレッジをグループ会社である岡谷システムで具現化し、岡谷鋼機が手掛けるさまざまな生産設備と一体となったスマートファクトリーのソリューションを創出できるという意味で、他の商社にはない付加価値を提供できると自負しています」と語る。
体制の一翼を担う岡谷システムは、岡谷鋼機が100%出資するITシステム子会社であり、長年にわたりグループ内のITシステム構築を主に手掛けてきた。そんな両社の関係性に変化が現れてきたのが第4次産業革命としてインダストリー4.0への注目が集まり始めた2013〜2014年ごろのことである。
岡谷システム 常務取締役 営業本部ゼネラルマネージャーの河原功和氏は「もともと岡谷鋼機のお客さま向けに、生産設備の制御やデータ収集を行うMES(製造実行システム)の導入などで協力していましたが、インダストリー4.0のトレンドの隆盛とともに、スマートファクトリー化を目指したプロジェクトに両社がタッグを組んで当たるケースが増えてきました。それまでは、売り上げの多くをグループ内向けが占めていましたが、現在は製造業を中心に外販比率がかなり高くなっています」と説明する。
そんな岡谷鋼機と岡谷システムといえども、容易に解決できない製造現場の課題は数多い。最たるものが、IT(情報システム)/OT(制御システム)間のギャップだろう。岡谷システム ITインフラ事業本部 SI&サービス部の田中綾人氏は「IT系のインフラではデバイスをネットワークにつなげば、あたかも蛇口をひねるように情報を得ることができるイメージがあるかと思います。しかし、OT系のインフラではそうはいきません。設備はメーカーごとに独自の通信プロトコルで運用されておりオープン化されていません。そもそも外部インタフェースを持たないレガシーな設備も混在しています」と指摘する。
また、日本の製造現場には「工場設備をあまりネットワークにつなぎたくない」という思いを持つ人も少なくない。岡谷システム ITインフラ事業本部 SI&サービス部の藤井弘作氏も「わざわざネットワークにつなげなくても現場に見に行けばよいというお考えが多いように思います」と述べる。
こうしたIT/OT間のギャップという課題を解決するために、3社目の協業パートナーとして加わったのがシスコである。田中氏と藤井氏は「シスコが、ハード/ソフト一体で提供する産業用ネットワークのソリューションは、独自プロトコルで運用している設備やレガシーな設備を整理し統合するとともに、強固なセキュリティを担保した上でITシステムとの連携も実現します。これにより、リモートからでもさまざまな設備の監視や制御を可能とする“デジタルツイン”の世界観を提示し、製造現場の文化を変えていけるのです」と声をそろえる。
ここからは3社が提供するソリューションの具体的な内容を掘り下げていこう。3社協業に基づく「次世代インフラ・データ基盤」の構築は、「OT/IT統合アセスメント」「特定設備で号口/効果測定」「設備全体への展開」という3つのステップで進められる。
まずステップ1では、標準化ネットワークの検討に際して基本技術の相互擦り合わせを行い、顧客ごとのガイドラインを策定する。「一口にIT/OT統合ネットワークやスマートファクトリー化といっても、そこに向けた課題やニーズは各社各様です。そんなお客さまごとの事情や立ち位置に合わせた提案のベースとなる標準仕様書をガイドラインと呼んでいます」(河原氏)。このガイドラインに基づき、工場内の既設ネットワークの接続検討を行うのだ。既設の設備やネットワーク対して棚卸しを実施し、アプリケーションを特定するとともに、IPアドレス/通信フローや設備のレイアウトを確認する。
次にステップ2として、既存設備の通信プロトコルなど接続方式を確認する。データ取得方式や帯域の設計、IPアドレス/VLAN(仮想LAN)/NAT(ネットワークアドレス変換)などの再設計へとつなげていくとともに、ITとOTを統合したネットワークのグランドデザインを策定する。
このグランドデザインは、シスコが米国の産業機器大手のロックウェル・オートメーションと共同開発した、製造業向けネットワークのレファレンスアーキテクチャである「Cisco CPwE(Converged Plantwide Ethernet)」をベースに策定され、ネットワークセキュリティの対策も設計された。「イーサネットスイッチからルーター、ワイヤレスアクセスポイントまで、シスコの産業用エッジネットワーク製品を一気通貫で提供することで、シンプルなIT/OT統合ネットワークを実現します」(田中氏)。
藤井氏は「加えて、ランサムウェア/標的型攻撃対策や脆弱性診断と評価を含めたサイバーセキュリティ対策のトータルなソリューションも、このCisco CPwEのアーキテクチャの下で一体提供していくことになります」と強調する。
3社協業による次世代インフラ・データ基盤の構築支援に向けた取り組みはこれで終わりではない。1つの製造拠点で成功を収めた設備更新のイベントをベストプラクティスとして他拠点にも移設を進めていくのだ。これがステップ3に位置付けられている。
河原氏は「例えば、国内のマザー工場で構築した次世代インフラ・データ基盤を標準パターンとして、国内外の他拠点に横展開するといった取り組みがステップ3に該当します。ここでもフルに生かされるのが、デファクトスタンダードなネットワーク技術をグローバルに展開しているリーディングカンパニーであるシスコのノウハウと知見です。既に、国内の大手自動車部品メーカーに対して、これら3つのステップに基づく導入実績もあります」と語る。
笠原氏は「シスコとの協業によってDXの基盤となるセキュアな高信頼性インフラが生産領域でも実現可能なことが証明でき、スマートファクトリーを実現したいお客さまのご期待に応えられています」と語っており、Win-Winの関係を構築した岡谷鋼機、岡谷システム、シスコの3社の協業体制は、国内外製造業のスマートファクトリー化の推進、さらには生産現場のDX実現に向けて、今後も着実に進化を続けていく。
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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2022年12月6日