見守りGPSトラッカー起点に事業を急拡大、IoTベンチャー成功の要因は製造業IoT

製造業のIoT活用において、モノづくり現場への導入と比べてまだ成功事例が少ないのが、IoTを活用した新たな製品やサービスの開発である。その中でも、2015年創業のアイフォーカスは、仮想移動通信事業者(MVNO)であるIIJとの協業により開発した見守りGPSトラッカー「トラっくん」を起点に、物流から建設、インフラ管理などさまざまな分野に向けてラインアップを拡大している。

» 2022年07月11日 10時00分 公開
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 製造業でのIoT(モノのインターネット)活用が叫ばれて久しい。製造装置の稼働状況や工場内の環境変化などを各種センサーで計測し、ネットワークを通じて収集、可視化や分析を可能とするクラウドサービスやアプリケーションが開発され、モノづくりの現場で活用されつつある。

 こういったモノづくり現場への導入と比べて、IoTを活用し新たな製品やサービスで成功を収めている事例はまだあまり多くはない。これは、製造業がこれまで手掛けてきた“モノ売り”から、“コト売り”にビジネスモデルを変革しなければならないためであり、従来の生産性向上や効率化の延長線上であるモノづくり現場でのIoT活用と比べてハードルが高いためだ。

IoTデバイスの接続数は3万台以上に、今後も毎年“倍々ゲーム”で伸びる

 このIoTを活用した製品やサービスで成功を収めつつあるのが、2015年創業のベンチャー企業、アイフォーカスである。同社は「新しい技術で世界を変えてゆく」という理念を掲げ、IoT・AIを活用した製品の設計、開発から販売までをトータルソリューションとして提供しているベンダーだ。

アイフォーカス 代表取締役&CEOの青山望氏 アイフォーカス 代表取締役&CEOの青山望氏

 アイフォーカス 代表取締役&CEOの青山望氏は「創業当初は金融システムの開発や農業IoTサービスの提供を中心に事業を行ってきましたが、2018年にはAIとIoTに特化したプラットフォーム『AAASCloud(アースクラウド)』を開発しました。加えて、中国の深セン、広州の工場に製造を委託し、これらのリソースを活用することで、IoTを活用した製品とサービスについて、ハードウェアからソフトウェア、通信に至るまでエンドツーエンドで提供できるビジネス基盤を整えました」と語る。

 青山氏が挙げたAAASCloudとは、端的に言えばデバイス、プラットフォーム、サービスの3つのレイヤーの中心に存在するシステムで、ネットワークに接続されたデバイスを制御し、収集されたデータを管理・分析することでさまざまなサービスにつなげる機能を提供する。多くのパートナーの協力を得ながら構築してきたこのAAASCloudこそが、まさに現在のアイフォーカスが推進するビジネスの中核となっているのである。

 AAASCloudにつながっているデバイスの総数はこの4年間で既に3万台以上に達している。「今後も毎年“倍々ゲーム”の勢いで接続デバイス数が伸びていきそうです」(青山氏)。

アイフォーカスの事業の中核となる「AAASCloud」 アイフォーカスの事業の中核となる「AAASCloud」[クリックで拡大] 出所:アイフォーカス

見守りGPSトラッカーが多様な製品開発の呼び水に

 もちろん青山氏は何の根拠もなく、AAASCloudの接続デバイス数が倍々ゲームで伸びていくと言っているわけではない。2020年4月に販売を開始した「トラっくん」という製品が呼び水となり、さまざまな業界のニーズを受けて、新たに開発、市場投入される製品によってビジネスが拡大していく見通しを持っている。

見守りGPSトラッカー「トラっくん」 見守りGPSトラッカー「トラっくん」[クリックで拡大]

 トラっくんとは、子どもや高齢者の居場所を高精度で確認できる、見守り用のGPSトラッカーである。「私の子どもが小学校に入学する際に、見守りのために当時市販されていたGPSトラッカーを購入しようと思っていたのです。しかし、どの製品もバッテリーが2〜3日しか持たないなど使い勝手が悪く、ならば自分たちで作ってしまおうと考えました」と、青山氏は開発にいたった経緯を振り返る。

 当初は「バッテリーを充電して1週間連続動作できるようにすれば、再充電は(子どもが登校しない)週末に行うだけで済む」という目標を掲げて開発に着手したのだが、結果的にはこの目標を大幅に上回る、一度の充電で4週間も動作するGPSトラッカーが完成した。

 もちろん大容量のバッテリーを搭載すれば稼働時間を伸ばせるわけだが、それでは重量が増してしまうので使い勝手が悪くなる。トラっくんは子どもや高齢者が負担なく持ち歩ける重量を維持しつつ、稼働時間を伸ばしたのである。

 どうやって実現したのか。最大の要因は、ちょうどその頃新たなパートナーとして出会ったIIJと試行錯誤しながら共同開発した、通信の省電力化である。「通常のLTE通信では消費電力が大きすぎるため、より省電力で通信ができるLPWA(低消費電力広域)ネットワークを採用しようと考えました。また、移動中の子どもや高齢者の位置情報を途切れることなく把握する必要があることから、同じLPWAでも別途ゲートウェイが必要となるアンライセンス系LPWAや、ハンドオーバーができないNB-IoTではなく、IIJが提供するLTE-M(Cat.M1)を利用することにしました」と青山氏。

 さらにトラっくんの省電力化に大きく貢献したのが、加速度センサーによって持ち主の動きを判断し、自宅や学校にいるなど移動していない時はデバイスをスリープ状態にしておくという工夫だ。これにより通信費を抑えることも可能となる。ただし、当然のことながらデバイスのスリープ時にも位置情報を確認したいケースは起こりうる。両親が子どもの居場所を確認したいときに、スリープ状態になっているので居場所が分からないようなことがあっては本末転倒だ。

 そうした場面でトラっくんは、AAASCloudからコマンドを送ってスリープ状態になっているデバイスを起こして位置情報を確認できる仕組みとなっている。具体的には、IIJ IoTサービスが提供しているデバイスコントロール機能を活用しており、待ち受け状態のデバイスとパブリッククラウドをインターネットでつないでから、Web API経由でAAASCloudに接続。さらに、IMEI(国際移動体装置識別番号)を検索し、AAASCloudからデバイスへリクエストを送信してGPSトラッキングを機能させるという方法をとっている。「当時IIJ社内でもまだ企画中であったこのアイデアを私たちのために先行して開発、提供してくれたおかげで、トラっくんを早期に製品化することができました」と青山氏は語る。

物流から建設、インフラ管理へとニーズが拡大

 このトラっくんの成功が起点となって、アイフォーカスはさまざまな新製品の開発と市場投入を加速させている。

 GPSトラッカーは見守り以外に、荷物やトラックなどの居場所をリアルタイムに把握したい物流業界でも強いニーズがある。トラっくんの発表後、物流業界から強い引き合いがある中で、「このデバイスを人に持たせるのではなく、車両にも付けられないか」という要望が寄せられた。このニーズに応え2021年6月に製品化されたのが物流業向けGPSトラッカー「GPS Freight Tracker」である。

物流業界向けGPSトラッカー「GPS Freight Tracker」 物流業界向けGPSトラッカー「GPS Freight Tracker」[クリックで拡大]

 青山氏は「基本的な仕組みはトラっくんとまったく同じですが、強力なマグネットで車両の外側に設置できるようにしました。また5000/1万mAhの大容量バッテリーを搭載し、一度の充電で最大約4カ月以上の連続稼働を実現しています」と説明する。

 使い方としては、トレーラーのシャシー(被けん引車)に装着することなどが想定されている。シャシーは複数の物流会社が共同保有しているケースが多いものの、いざ使おうとしたときに、前回そのシャシーを使った物流会社がどこに駐車したのかが分からず、所在不明となってしまうことが課題になっていた。そのシャシーを直前に使用したドライバーから大まかな場所を聞き出して現場に赴き、広大な物流拠点の敷地を歩き回って目的のシャシーを探し出さなければならない。「シャシーにGPS Freight Trackerに装着しておけば、駐車場所を正確に把握でき、次にそのシャシーを使う物流会社は余計な時間や労力をかけず、簡単かつ迅速に回収できるようになります」(青山氏)。

 さらに、建設企業から、熱中症などが懸念される過酷な現場で作業者の健康と安全を守りたいというニーズに応えて開発されたのが「AAASWatch」という腕時計型のウェアラブルデバイスである。装着者の体温や血圧、血中酸素濃度、心拍数などのバイタルデータをデバイス単体で計測するとともにモバイル回線を使って自動的に伝送し、離れた場所からリアルタイムで監視できるのが特徴だ。

腕時計型ウェアラブルデバイス「AAASWatch」 腕時計型ウェアラブルデバイス「AAASWatch」[クリックで拡大]

 このような機能を持つ腕時計型ウェアラブルデバイスは、多くがスマートフォンとの連携を必要とするが、AAASWatchはスマートフォンなしで、つまりスタンドアロンで運用できる点が大きく異なる。青山氏は「IIJの協力を得て、非常時のSOS機能として4G通信による通話やSMSでのメッセージ送信にも対応しています。機能としては、腕時計型携帯電話機といっても過言ではありません」と強調する。

 そして、インフラ管理企業からの要望に応えて開発したのが、2022年6月にローンチしたばかりのモバイルカメラ「AAASBodyCamera」である。さまざまな施設や設備の監視、点検に当たっている保守要員の位置情報を取得するとともに、機器に組み込まれたカメラで撮影した映像をストリーミング伝送することができる。これまでも同様の製品がなかったわけではないが、大きな課題になっていたのが通信コストだった。月間のデータ伝送量が50GBを超えることもあり、ランニングコストに当たる月額の通信料金が2万円近くに達するのが当たり前という状況だったのだ。

モバイルカメラ「AAASBodyCamera」 モバイルカメラ「AAASBodyCamera」[クリックで拡大]

 AAASBodyCameraでは、本体内で最新の映像コーデックであるH.265の圧縮処理を行うことでデータ伝送量を大幅に削減した。「加えて、IIJには、AAASBodyCameraの通信量のほとんどを占めるアップロード側を優先する回線契約を用意してもらいました。これらによって、月額の通信料金を従来の半分以下となる5000〜7000円程度に抑えた運用が可能となりました」(青山氏)。

 またAAASBodyCameraのバッテリーパックは1回の充電で5〜6時間の連続稼働が可能だが、その他にも内蔵バッテリーを備え、バッテリーパックをホットスワップで交換することにより6時間以上の連続動作にも対応できるようになっている。これにより映像伝送をストップすることなく、予備のバッテリーパックがある限り、時間無制限の連続稼働にも対応できることを併せて述べておきたい。

ソフトウェアSIMやマルチキャリアSIMに期待

 このように、AAASCloudおよび、AAASCloudのもとで運用されるトラっくん、GPS Freight Tracker、AAASWatch、AAASBodyCameraといった一連の製品とサービスは、アイフォーカスとIIJの緊密なパートナーシップによって実現されているのだ。

 青山氏は「事業面において特にありがたいのが、SIMライフサイクル管理機能です。新たな製品やサービスの展開に合わせてモバイル回線とSIMを調達した場合、通常はその時点から基本料金などの支払いが発生します。つまり、お客さまに製品を引き渡すまでの期間、それらの費用は私たちの負担となってしまうのです。IIJのSIMライフサイクル管理機能を使えば、AAASCloud側で回線の開通から解約、中断に至るまで、全ての実行と管理が可能になり、われわれはキャッシュフローを最大限に有効活用できます」と述べる。

 こうしたことからアイフォーカスは今後もIIJに対し、さらなるフレキシブルな対応と協力に期待を寄せている。

 「製造業や物流業などの過酷な作業現場で使われるデバイスに装着された物理的なSIMカードは、誤作動や接触不良などトラブルの原因となるおそれがあります。基板にはんだ付け可能なチップSIMはそれらの課題に一定程度対応できますが、IIJにはそのチップSIMも不要になるソフトウェアSIMに、できるだけ早期に対応してもらえるとうれしいです。また、お客さまのさまざまな現場への対応力を高められるよう、マルチキャリアSIMへの対応にも期待するところです」(青山氏)。アイフォーカスは、さまざまな技術の開発やサービスの拡充を続けるIIJとの協業を通じて、より利便性が高くコスト競争力があり、なおかつ安全性にも優れたIoT活用製品・サービスの提供を推進していきたい考えだ。

青山望氏(中央)とともにIoT活用製品/サービスの事業を推進するアイフォーカスのメンバー 青山望氏(中央)とともにIoT活用製品/サービスの事業を推進するアイフォーカスのメンバー[クリックで拡大]

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