Tableauでデータドリブン経営を成功に導く、コニカミノルタとTHKの実践例データドリブン経営

製造業を取り巻く環境の不確実性、流動性が急速に高まっている。この中でより求められているのが、経営判断を最新かつ正確な情報に基づいて行うための「データドリブン経営」だ。セールスフォース・ジャパンはTableauを活用したデータドリブン経営の実践例などを紹介するイベントを開催した。コニカミノルタやTHKが自社のデータドリブン経営の取り組みを取り上げて解説を行った。

» 2022年03月14日 10時00分 公開
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 激変の時代の中にあって、製造業を取り巻く状況は常に揺れ動いている。グローバル競争の激化やコロナ禍による市場環境自体の不確実性増加は言うに及ばず、地政学的要因や異常気象によるサプライチェーン寸断のリスク、脱炭素をはじめとするサステナビリティ対応への要求の高まりなど、製造業は最新の情勢に合わせた迅速な対応を常に迫られている。

 この状況下で最良の経営判断を下すには、過去の経験や勘に頼るだけでは不十分だ。企業内外に散在している情報を収集して迅速に分析し、正確な経営判断材料とする体制づくりが急務となっている。すなわち「データドリブン経営」が求められているのであり、この重要性を伝えるべく、セールスフォース・ジャパンが2022年1月26日にオンラインで開催したのが「製造業界向けTableauサミット」である。

現在の製造業が直面している4つの課題

 今回のイベントでは、Tableauを活用してデータドリブン経営の実践に早くから取り組んできたユーザー企業らを招き、プラットフォーム活用のベストプラクティスや、社内にデータカルチャーを醸成するポイントなどを紹介した。Tableauはセールスフォース・ジャパンの展開するBI(ビジネスインテリジェンス)プラットフォームだ。社内外から収集したさまざまな情報を分析して、分かりやすく可視化する。直感的な操作が可能で、データ分析の専門家以外でも簡単に扱うことができる。製造業でもTableauの活用は広がっており、今回の国内初となる製造業に特化したイベント開催の背景になっている。

セールスフォース・ジャパン 常務執行役員 Tableau事業 エンタープライズ製造営業本部 兼 関西地域担当の布施俊介氏

 セールスフォース・ジャパン 常務執行役員 Tableau事業 エンタープライズ製造営業本部 兼 関西地域担当の布施俊介氏は、「現在、製造業にもデジタル化の波が押し寄せており、誰もが大量のデータを活用し、迅速な意思決定を行える環境作りが求められています。そうした中でTableauは、ITやアナリティクスの専門家ではない全ての従業員にも自由なデータ分析を可能にして、現場の行動変容を促し、データドリブン経営の実現を導きます」と語った。

 具体的には、多くの製造業が直面している、「サプライチェーン」「サステナビリティ」「カスタマーエクスペリエンス」「デジタル人材の育成」という4つのテーマに関連した課題の解決にTableauが貢献するとした。

コニカミノルタとTHKのデータ活用事例

 イベントのパネルディスカッションでは、布施氏がファシリテートする形で、コニカミノルタ 常務執行役 DX改革 DXブランドコミュニケーション 渉外 担当の市村雄二氏と、THK 取締役専務執行役員 産業機器統括本部長の寺町崇史氏のエグゼクティブ対談を行った。布施氏が示した製造業が直面している4つの課題について、両社がそれぞれどのように解決に取り組んでいるのかを解説した。

 コニカミノルタは現在、深層学習などAI(人工知能)技術を含めたデジタルテクノロジーなどを活用することにより、業績改善に貢献する組織、ビジネスプロセスの改革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を推進中だ。この戦略の一環として、同社は「サプライチェーン」と「サステナビリティ」の領域における取り組み事例を紹介した。

コニカミノルタ 常務執行役 DX改革 DXブランドコミュニケーション 渉外 担当の市村雄二氏

 まず、市村氏はサプライチェーン領域でのDXを推進する意義について、「企業価値の向上には、顧客満足度の向上に加えて、取引先にも自社の企業価値向上を推進してもらえることが大切だと考えています。顧客だけでなく取引先とも共に成長していくことが、持続可能な社会の構築に向けて欠かせない取り組みです」と説明した。

 例えば、仕掛品の在庫情報や製品の開発情報だけでなく、取引状況のステータスなどをサプライチェーン上でオープンにして共有しているという。同社はこれ以外にも、在庫の削減などの目的で、データを活用したサプライチェーンのDX事例を蓄積してきている。

コニカミノルタにおけるサプライチェーン領域の取り組みの概念図 [クリックで拡大] 提供:セールスフォース・ジャパン

 さらに市村氏は最近のDX事例として、コニカミノルタの香港拠点において、サプライヤーを巻き込んでCCC(キャッシュコンバージョンサイクル)の大幅改善を目指すデータ活用プロジェクトが立ち上がったことを挙げた。同様の取り組みが全世界的に広まれば、サプライヤーを含めたキャッシュフロー改善に貢献する可能性があるとして、「サプライヤーとも情報共有を行いながら進めていきたいと考えています」と語った。

 また「サステナビリティ」に関する取り組みとしては、パナソニックを幹事企業、コニカミノルタを運営企業とする「環境デジタルプラットフォーム」を紹介した。「さまざまな業界をまたいだ企業間で環境技術やノウハウに関連した情報やソリューションを共有し合い、企業同士のマッチングを行うなど、サステナビリティを実現するための価値共創を推進しています」(市村氏)という。

「環境デジタルプラットフォーム」の概念図[クリックで拡大] 提供:セールスフォース・ジャパン

 一方、THKは2019年に始動したDXプロジェクトにおいて、主軸の1つを「顧客体験価値の再構築」と位置付けている。寺町氏は「当社の事業ドメインは成長市場にポジショニングできていますが、その上でさらに、どのように顧客課題解決にコミットできるかを考えています」と語る。このため、THKは「カスタマーエクスペリエンス」に関する取り組みを現在積極的に展開している。

THK 取締役専務執行役員 産業機器統括本部長の寺町崇史氏

 そうした取り組みから生まれたのが、「Omni THK」と「OMNI edge」の2つのサービスである。Omni THKはWebベースのコミュニケーションプラットフォームだ。これまで対面業務が中心だった技術提案や見積もりなどのやりとりの一部を、専用のWebサービス上で行えるようにした。これによってリードタイムを短縮することで、顧客満足度の向上を図る。

 一方のOMNI Edgeは顧客先で稼働している機器部品など、THK製品の状態を数値で可視化するIoT(モノのインターネット)システムだ。従来、機器や部品製品を多く手掛けてきたTHKにとっては「チャレンジングな試みでした」(寺町氏)という。2020年1月に製品の異常予兆検知向けアプリケーションをリリースしており、今後も顧客のOEE(総合設備効率)向上への貢献を目指すとしている。

THKが展開する「Omni THK」と「OMNI edge」[クリックで拡大] 提供:セールスフォース・ジャパン

 寺町氏は一連の取り組みの狙いについて「これまで人が関所となっていたアナログの仕組みをデジタルに置き換えることで、複数の企業や部署がリアルタイムにつながるプラットフォームが実現可能となりました。さらにその基盤上で新たな価値を生み出すデータ活用を推進していきます」と語った。

なぜ、データドリブン経営が成功したのか

 パネルディスカッションではコニカミノルタとTHKの両社における「データドリブン経営の成功要因」についても紹介がなされた。

 コニカミノルタでデータドリブン経営の実現を大きく後押ししたのは、工場や物流など各現場のデジタル化を検討する「コニカミノルタスマート化プロジェクト」だったという。また市村氏は「プロジェクトの中でも最も効果が大きかったのは、データの一元化とBI、AIの活用、これに尽きます」と振り返った。

 コニカミノルタの本社には全世界の約150カ国の拠点から財務会計および管理会計の経営情報が集まってくる。だが、その集計作業は「数字のバケツリレー」とも形容されるほど、膨大な工数と時間を費やすものだった。経営層の見るデータは現場の実情をリアルタイムで反映したものとは言い難くなる。こうなれば、正確で迅速な経営判断が行いにくくなりかねない。

 この課題を解決したのが「データの一元化とBI、AI活用」というわけだ。「経営層が自分の見たいデータを、TableauをベースとするBIダッシュボード上で好きな切り口で見られるようにする。これによって意思決定の迅速化を図りました」と市村氏は語る。さらに今後は、現場レベルの分析と幹部レベルの分析をマッチングすることで、「データドリブン経営のレベルをさらに上げていきます」(市村氏)としている。

データの一元化とBI、AIツールの活用を進めた[クリックで拡大] 提供:セールスフォース・ジャパン

 一方でTHKがTableauを導入することになったきっかけについて、寺町氏は「2015年にデータ活用専門組織を立ち上げて、Tableauを導入し、工場データ分析などの試行錯誤を始めたことが転機となりました」と語った。

 その後もTHKでは全社的にデータリテラシーを高めるべく、インフラ整備の他、データ活用研修やデータコンペを通じた人材育成、コミュニティー形成などに取り組んできた。そして現在は、さまざまなDXプロジェクトが各現場で進行するなど、今では組織学習による自走化も見られるようになっている。

 寺町氏は「『データ活用に基づいてビジネススタイルを変革させていく』というデータドリブンカルチャーが社内の至るところで醸成されてきたと感じています」と手応えを見せた。

現場最適化や経営可視化にもTableauが貢献

 イベントではカスタマーキーノートとして、パナソニック コネクティッドソリューションズ社と日立ソリューションズによるTableauの活用事例紹介も行われた。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務の山中雅恵氏

 パナソニック コネクティッドソリューションズ社は、同社が提供する現場最適化ソリューションについての講演を行った。同社 常務の山中雅恵氏は、多くのサプライチェーンの現場が抱えている課題として、「ボトルネックの特定が困難である」「待つ、迷う時間などのバッファーが発生する」「標準、基準値の欠如」という3点を挙げた。これらの課題解決のため、同社が世界32カ国325工場で培った生産性向上のためのインダストリアルエンジニアリングの知見を取り入れたソリューションを提案している。

 実際にソリューションを導入して顧客のサプライチェーン拠点を最適化した取り組みとして、山中氏はヤマト運輸における現場プロセスイノベーションの事例を紹介した。「作業進捗や生産性など現場状況を、Tableauによるダッシュボードで確認、分析します。これによって経営効率最大化と、サプライチェーン全体での人、モノの動きの最適化、現場状況の可視化を実現しています」と山中氏は語った。

現場最適化ソリューションがもたらすメリット[クリックで拡大] 提供:セールスフォース・ジャパン

 また日立ソリューションズは、営業支援システムのSFAとBIの全社展開を通じた、ビジネスプロセス改革と経営の可視化について講演を行った。

日立ソリューションズ 営業統括本部 インサイドセールス第1部 部長の秦和男氏

 日立ソリューションズではクラウドプラットフォームであるSalesforce Cloudを基盤とするSFAと、日立グループ共通の基幹システムの大きく2つのシステム群を運用している。ただし、これらのシステムに対して個別にデータアクセスを行っているわけではない。同社 営業統括本部 インサイドセールス第1部 部長の秦和男氏は「データレイクを構築した上で、必要な情報をTableauで見られる環境を作りました」と説明する。

 例えば、受注パイプラインの仕上がりを予測するシミュレーションなどをダッシュボード上で可視化している。秦氏は「複数のシステムにまたがるデータを同時に見るためにはBIツールが欠かせません。実際に、Tableauを活用することで変化する受注率を捉えた、真のパイプライン管理を実現できました」と語った。

日立ソリューションズが運用する業務システムの構成図[クリックで拡大] 提供:セールスフォース・ジャパン

 このように誰もがデータを直感的に理解できるように可視化し、全社的なデータ変革を推進していくプラットフォームとなるのがTableauなのだ。現場にデータカルチャーを醸成していく頼もしいツールである。既存の社内システムやデータ活用環境によるデータドリブン経営の実現に課題を感じているのであれば、ぜひセールスフォース・ジャパンに相談してみてはいかがだろうか。

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提供:株式会社セールスフォース・ジャパン
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2022年3月28日