Special
» 2022年01月31日 10時00分 公開

トポロジー最適化が抱える2つの問題を機械学習で解消する革新的手法とはAltairユーザー事例[中央エンジニアリング]

金属3Dプリンタの技術革新が後押しし、トポロジー最適化を適用した設計ニーズが高まりを見せている。だが、その一方で「思うような成果が出せない」「予想以上に時間がかかる」といった課題に直面してしまうケースも多い。その根本原因にメスを入れるべく中央エンジニアリングが提案するのが、機械学習をトポロジー最適化に応用するというアプローチだ。

[PR/MONOist]
PR

 自動車や産業機械、航空宇宙分野などのさまざまな製品設計において、「高剛性化」と「軽量化」のように、通常であればトレードオフの関係にある要求に応えたり、これまでの経験や常識にとらわれない斬新な設計案を求められたりするケースがある。

 このような設計ニーズに対して、最近よく用いられているのが「トポロジー(位相)最適化」だ。その背景には、近年幅広い産業分野で導入が進んでいる金属3Dプリンタ/金属AM(Additive Manufacturing:積層造形)技術の存在があることは言うまでもない。

 こうした新たな製造/加工技術の登場によって、今まさにトポロジー最適化に取り組みやすい土壌が整いつつあり、従来とは全く異なる新しい構造様式をもつ部品形状を追求できる可能性が高まっている。

 トポロジー最適化とは、シミュレーション技術を用いて、与えられた設計空間や制約条件に基づき、不要な材料を削り、必要な部分だけを残して最適な設計案(形状)を導出する技術である。少しだけかみ砕いて言えば、既存の設計案からぜい肉をそぎ落とすアプローチだ。この手法を製品設計に取り入れることで、冒頭に挙げた高剛性化と軽量化といったような本来両立が困難な設計ニーズを満たすことが可能となる。

トポロジー最適化解析とは? 図1 トポロジー最適化解析とは?[クリックで拡大]

 また、少々余談になるが、トポロジー最適化は多細胞生物の細胞に組み込まれている「アポトーシス」のメカニズムを連想させる。固体をより良い状態に保つために余分な部分の細胞を自ら死滅させるというもので、不要な部分をそぎ落とし、従来の設計では考え付かないような有機的な形状を導き出すトポロジー最適化と共通点があるように感じる。実際、その有機的な形状を生かし、製品の意匠デザインにトポロジー最適化を活用するケースも見られるほどだ。

トポロジー最適化が抱える2つの課題

 トポロジー最適化は、高度な設計ニーズに応えていく上で、非常に有用な手法であることに間違いはない。既に世の中にはトポロジー最適化が可能な専用ソフトウェアやトポロジー最適化の機能を実装した3D CADも存在している。ある意味で、誰でも手軽にトポロジー最適化を実践できる状況にあるわけだが、「大きな問題点がある」という。

中央エンジニアリング 航空宇宙事業部 部長代理 兼 解析2グループ グループ長の志谷徹氏 中央エンジニアリング 航空宇宙事業部 部長代理 兼 解析2グループ グループ長の志谷徹氏

 そう指摘するのは、愛知県に本拠を置き、航空宇宙、自動車、産業機械などの幅広い分野で設計/解析/製作/試作といったモノづくりにまつわる全工程をトータルエンジニアリングで支援する、中央エンジニアリング 航空宇宙事業部 部長代理 兼 解析2グループ グループ長の志谷徹氏だ。志谷氏が指摘する問題点は2つある。

 1つは「トポロジー最適化を実行する際に入力するユーザー指定の制約条件の決め方が曖昧である」点だ。例えば、質量最小化を目的とする際、体積率や最小/最大部材寸法、最小部材間隔といった制約条件をユーザー自身が決めることになるが、「そこから得られる結果は本当の意味での厳密的な最適形状ではなく、あくまでもユーザーが決めた制約条件に基づく最適形状となる」(志谷氏)。当然、結果自身も制約条件の設定値によって大きく異なる。実際、現場では所望する性能になるまで“制約条件を変えては解析を繰り返す”といった運用が見られ、そこで用いられる制約条件の付け方もユーザー任せとなっていることが多い。また、制約条件と解析結果の相関が読みにくいため、解析に多大な時間を要してしまうことも珍しくない。

トポロジー最適化解析の問題点(1) 図2 トポロジー最適化解析の問題点(1)[クリックで拡大]

 もう1つの問題が「解析結果に含まれる中間密度要素の扱いが曖昧である」点だ。密度法に基づくトポロジー最適化の場合、解析結果は材料密度分布として示される。その際、材料密度が1.0の絶対に必要な領域と、0.0の全く不必要な領域以外に、完全に分けられない中間的な密度を持つファジーな領域(中間密度要素)が含まれる。「この中間密度要素は論理的な解釈が難しく、あまりにも多いと最終形状にした際に重量過多となってしまうことがある」と志谷氏は説明する。このときも現場では、できるだけ中間密度要素が発生しない解析結果が出るまで、ユーザー自身が“制約条件を変えては解析を繰り返す”といったことが行われている。

トポロジー最適化解析の問題点(2) 図3 トポロジー最適化解析の問題点(2)[クリックで拡大]

 これらの問題点を抱えたままの運用を続けてしまうと、期待する最適設計案を導出するまでに手間と時間を費やすことになり、本来より良い製品開発のために活用するはずだったトポロジー最適化が、逆に製品開発の足かせとなってしまう可能性がある。

機械学習をトポロジー最適化に応用するアプローチ

 こうした問題点に対して、各種CAE解析サービスにも定評のある中央エンジニアリングは“機械学習をトポロジー最適化に応用する”という画期的かつ革新的なアプローチを考案し、既に活用を進めている。「トポロジー最適化が抱える問題点を、機械学習を活用して解消するという考えの下、その具体的な方法を考案しソリューションとしてまとめた」(志谷氏)。

 まず「制約条件の決め方」に関しては、機械学習(回帰分析)を用いて制約条件とトポロジー最適化の解析結果の因果関係をつかみ、最適結果を効率的に導出するアプローチを採用する。機械学習に必要となる初期サンプリングデータについては、複合領域設計性能スタディー・最適化ソフトウェア「Altair HyperStudy」を活用。制約範囲内で値をランダムに設定してトポロジー最適化解析を実行し、その計算結果を初期サンプリングデータとして使用する。このとき、ユーザーは制約条件の範囲を決めるだけでよい。

 回帰モデルの構築では、回帰式が数式で表現できないようなブラックボックス関数に対して、確立統計的な手法で逐次的に最適解を求めていく「ベイズ最適化」を採用する。実行済みの解析結果から確率的広がりを持った回帰モデルを推定し、最も有益そうな解析条件を探索して、その条件でさらに解析を実行するという流れを繰り返す。これにより、意味のない無駄な解析を省き、効率的に回帰モデルの精度を上げていく。なお、中央エンジニアリングはこれら一連のプロセスを自動化するために、「Altair OptiStruct」によるトポロジー最適化解析と連動して回帰分析を実行する「AI自動実行ツール」をPythonで独自開発している。

中央エンジニアリングが提案する解決策(1) 図4 中央エンジニアリングが提案する解決策(1)[クリックで拡大]

 そして、「中間密度要素の扱い」では、ベイズ最適化によって得られた最適化解析条件の他にも、同等の解析結果で中間密度要素の少ない解がないかを機械学習(クラスタリング)を用いて特定するアプローチをとる。その際、機械学習・予測分析ソリューション「Altair Knowledge Studio」を活用。これまで計算したトポロジー最適化の結果を基にクラスタリングを実施し、先ほどの最適化解析条件と同じクラスタ内に属する候補において、それぞれ材料密度の割合を比べ、最も中間密度要素が少ないものを最適解として選定する。「こうすることで、厳密的な最適解に遜色ないトポロジー最適化解析結果を、従来手法よりも効率的かつ迅速に導出できる」(志谷氏)。

中央エンジニアリングが提案する解決策(2) 図5 中央エンジニアリングが提案する解決策(2)[クリックで拡大]

 実際、既存の金属部品(重さ5.32kg)に対する軽量化ニーズにおいて、機械学習を用いたトポロジー最適化を適用したところ、導出された最適形状の質量が2.48kgと約54%もの大幅な軽量化を実現した他、トポロジー最適化解析の実行回数も従来手法と比較して約93%も削減。さらに、トポロジー最適化後に行う最適設計(フリー形状最適化)においても全く同じ質量(2.48kg)で結果を得ることができたという。

 機械学習をトポロジー最適化に応用するというアプローチを開発したきっかけについて、志谷氏は「過去、われわれ自身もトポロジー最適化が抱える問題点を認識していながらも、“条件を変えては解析を繰り返す”対応を余儀なくされていた。納期までに解析を繰り返せる回数は限られるため、その時点で最適なものを選択していたが、『その先にもっと良い最適解があるのではないか?』との思いを常に抱えていた。こうした疑問はトポロジー最適化に取り組む多くの現場も抱えているはずで、当社でこの問題を解決できれば、トポロジー最適化の利用価値がさらに高まると同時に、われわれ自身の技術力をより広く知ってもらうきっかけになるのではないかと考えた」と語る。

革新的な挑戦を下支えするアルテアの製品群

 さらに興味深いのは、中央エンジニアリングが考案した機械学習をトポロジー最適化に応用するという革新的なアプローチに用いられている各種分析手法や要素技術、ツールなどの多くは、既に世の中にある汎用的なものを活用している点だ。これらをうまく取りまとめ、機械学習を用いてトポロジー最適化が抱えてきた問題点に対しメスを入れた中央エンジニアリングの功績は非常に大きいといえるだろう。

 先に述べた通り、トポロジー最適化についてはアルテアエンジニアリング(以下、アルテア)の「OptiStruct」を採用しているが、この点について志谷氏は「数あるトポロジー最適化ツールの中から『OptiStruct』を選択したポイントは、他の製品と比べて解析条件などをかなり細かいレベルで設定できる点が挙げられる。これは解析を専門とする立場からすると非常に都合が良く、逆に言えばアルテアのツールがあったからこそ、機械学習をトポロジー最適化に応用するというアプローチを実現できたといえる」と説明する。また、忘れてはならないのが「OptiStruct」が密度法に基づくトポロジー最適化手法であり、中間密度要素に対する適切な扱いなしには、最終的な製品形状へとつながる最適解が得られないという点だ。

 この中間密度要素の扱いに関しては、本取り組みにおける重要なポイントとなるが、その肝となるクラスタリングの際に用いられる「Knowledge Studio」も同じくアルテアが提供するツールだ。そもそも「Knowledge Studio」は製造業や設計現場での利用に限定したものではなく、幅広い産業分野で活用される機械学習や予測分析のためのツールである。実際、金融やマーケティングといった領域での活用が先行しているとのことで、設計現場での利用、トポロジー最適化への応用といった点で、世界的に見ても非常にユニークかつ先進的な応用事例だといえる。

 これら中央エンジニアリングの革新的な取り組みは、必要に応じてあらゆるツールを活用できるアルテアのライセンスシステム「Altair Units」が下支えしている。多様なソフトウェアツールから最適なもの自由に選択可能な、この柔軟なライセンス体系がなければ、さまざまなアルテア製品を駆使した今回の取り組みは実現し得なかったかもしれない。

 そして、中央エンジニアリングの挑戦はこれからも続く――。

 「機械学習を適用したトポロジー最適化に関しては、軽量化だけといった単目的での解析に加え、軽量化と高剛性化といった多目的への対応に向けて現在進行形で開発を進めている。併せて、Pythonで独自開発した『AI自動実行ツール』のGUI化にも取り組み、より使い勝手の良いものにしていきたいと考えている。さらに、機械学習を解析に適用するアプローチを、トポロジー最適化以外の解析、例えば構造や熱流体、電磁波などにも広げていきたい」(志谷氏)

中央エンジニアリングの挑戦はこれからも続く 中央エンジニアリングの挑戦はこれからも続く

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:アルテアエンジニアリング株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2022年3月2日