EV用モーターユニットの設計開発で直面する2つの課題とその解決策EVの開発サイクルを加速する【モーター編】

電気自動車(EV)において、重要なコンポーネントの1つであるモーターユニット。高出力、高効率といった性能要件など技術的にクリアすべき課題がたくさんあり、組織として連携した効率的な設計開発が求められる。ダッソー・システムズは、SIMULIAブランドが提供するマルチフィジックスにわたる3Dシミュレーションソフトウェア・ポートフォリオと、それらをシームレスに連携・統合するコラボレーション基盤「3DEXPERIENCEプラットフォーム」により、モーターの設計開発を支援する。

» 2021年12月02日 10時00分 公開
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 世界的に加速するEVの開発。モーターやインバーターなどを一体化する機電一体化技術の研究開発が各社で競うように進められ、エンジンに取って代わり、モーターが自動車の主動力を担う時代に突入しようとしている。

 モーターの設計開発では、高出力、高効率などの性能を満たしつつ、小型・軽量で低振動、低騒音といった要件を満足させる必要がある。また、限られた期間の中、効率的かつ高品質なモノづくりが求められる。そこで重要となるのが、シミュレーション技術の活用だ。モーターの設計開発には、構造/電磁界/機構/流体/音響といった各分野の解析問題を組み合わせて検討する、マルチフィジックス・シミュレーションが必須となる。

 こうした業界の要求に対して、コラボレーション基盤「3DEXPERIENCEプラットフォーム」による統合された設計開発環境を提案し、シミュレーションによるEV用モーターの設計開発の加速化を支援するのが、ダッソー・システムズだ。具体的にどのようなソリューション提供を行っているのか、同社 技術部 SIMULIA インダストリープロセスコンサルタント シニアスペシャリスト/博士(工学)の渡邊慎也氏が解説した。

ダッソー・システムズ 技術部 SIMULIA インダストリープロセスコンサルタント シニアスペシャリスト/博士(工学)の渡邊慎也氏 ダッソー・システムズ 技術部 SIMULIA インダストリープロセスコンサルタント シニアスペシャリスト/博士(工学)の渡邊慎也氏

モーターユニット全体を共通基盤上でシームレスに設計開発

 モーター、ギヤボックス、ハウジングで構成されるモーターユニットの設計開発では、高出力密度の実現や性能のトレードオフの検討といった“技術的課題”、部署のサイロ化によるコミュニケーション不足やツール間の連携不足といった“構造的課題”の2つをクリアしなければならない。

 モーターユニットの設計開発では、その性能要件を満たすために、マルチフィジックスにまたがる複合的な課題をシミュレーション技術で解決する必要がある。また同時に、業務効率を高め、高品質な設計開発を実現するとともに、部門間、関係者間でのタイムリーかつ円滑なコラボレーションが求められる。

モーターユニットの構成と設計開発における技術的な要件について 図1 モーターユニットの構成と設計開発における技術的な要件について[クリックで拡大]

 こうした技術的かつ構造的な課題を一気に解消し、モーターユニットの設計開発を加速させる存在が、共通基盤である3DEXPERIENCEプラットフォーム、そして、同プラットフォーム上でシームレスな連携により高度なシミュレーション統合環境を提供するSIMULIAのポートフォリオだ。

 ダッソー・システムズは、同社が持つ多くのソフトウェアを3DEXPERIENCEプラットフォーム上に集約しているため、モーターユニットの設計や性能評価に必要なソリューションはプラットフォーム上にそろっている。ツール間の連携、データのバージョン整合性などはプラットフォームが管理してくれるため、全てのメンバーは、モーターユニットの設計開発に必要なあらゆる作業をプラットフォーム上の統合された環境にて、他メンバーと協調しながら進められる。

 また、3DEXPERIENCEプラットフォーム上で動作するSIMULIAのポートフォリオによって、構造や電磁界をはじめとする複数の工学分野を横断的にシミュレーションすることが可能となる。「われわれのソリューションを活用すれば、モーターユニットの設計開発に必要なあらゆるツールを、3DEXPERIENCEプラットフォームという1つの共通基盤の上でシームレスに実行できる」(渡邊氏)。

マルチフィジックス、CAD/CAE連携で設計開発を加速

 構造/電磁界/機構/流体/音響など、複数の分野をまたぐ複雑な要件を抱えるモーター設計だが、初期段階では情報の抽象度を高め、開発のベースとなる概念設計を行う。そして、それ以降のプロセスで、部品選定や形状の決定など具体度を高めていきながら、詳細設計を詰めていく。これら設計フローは、企画や要件定義を担当するマネジャー、開発プロジェクトのマネジャー、システム設計担当、設計担当、解析専任担当といった部門をまたがる複数のメンバーで横断、連携しながら進められる。

 モーターユニットの性能評価の中で最も重要になるのは、モーター自身の性能を評価・最適化することであるが、それ自身が既にマルチフィジックスの連携問題である。性能評価という観点では、電磁界解析によりモーターから出力されるトルクを評価すればよいが、それだけでモーターの設計は終わらない。モーター内部は自身が発生する力の他、熱変形や遠心力など非常に厳しい環境にさらされるため、構造解析による強度や耐久性の評価が重要である。こうして問題は自然とマルチフィジックスにわたるものとなり、またモーター自身が発生する力は電磁界解析の結果を構造解析に受け渡すことになるため、自然と連携が生まれる。

モーター設計の最適化プロセスについて 図2 モーター設計の最適化プロセスについて[クリックで拡大]

 SIMULIAブランドの幅広いポートフォリオは、このような連携問題に対する包括的なソリューションを提供できることが強みとなる。モーター性能評価だけではなく、ハウジングの強度・剛性の評価、モーター駆動力やギヤトレインによる振動・騒音の評価、モーターの冷却性能評価など、モーターユニット全体での評価項目は多岐にわたる。また、モーター内部で発生する荷重はギヤトレインやハウジング性能評価に必要であり、さらにギヤトレイン内部にかかる力はハウジング性能評価に不可欠であることから、個々の評価項目は独立ではない。個々の分野のシミュレーション技術が成熟してきた現在、それらをいかにスマートに連携させていくかは、今後の発展という意味で非常に重要である。

 設計案に対する性能評価を正確に行うことは、設計における重要な第一歩であるが、その先には性能改善に向けて設計案を検討する作業がある。設計案となる形状はCADで作成するが、その性能評価はCAEの領域であり、ここではCADによるモデリングとCAEによるシミュレーションの連携が非常に重要となる。3DEXPERIENCEプラットフォームは、個別のツールであるCAEとCADを共通基盤の上に乗せることで密接な連携を可能としており、ダッソー・システムズではこれを“Modeling&Simulation”の略で「MODSIM」と呼んでいる。MODSIMにより設計形状の変更が直ちにシミュレーションモデルに反映され、そのまま性能評価を行うといったように、検討サイクルを非常にスムーズに進めることが可能となる。

CAD/CAE連携による強度・剛性設計ワークフローについて 図3 CAD/CAE連携による強度・剛性設計ワークフローについて[クリックで拡大]

 例えば、ハウジングの強度・剛性設計ではモーター内部のリブやフィンの寸法、個数が重要な設計パラメータとなるが、CAD上であらかじめパラメータにひも付けて3Dモデルを作成しておくことで、パラメータ変更による設計変更が可能となる。3DEXPERIENCEプラットフォームのMODSIMによるCAD/CAE連携機能により、3Dモデルの形状を修正しても、シミュレーションの境界条件やメッシュの再設定は必要なく、そのままシミュレーションを実行することができる。そのため、部品形状を細かく変えながら、熱や電磁場、振動など、複合的な現象が絡み合うモーターの性能を検証していくサイクルを何度も回すことで、さまざまな設計案の検討が非常に簡単に実施できることとなる。

 3DEXPERIENCEプラットフォーム、そして、同プラットフォーム上でシームレスかつ高度なシミュレーション環境を提供するSIMULIAのマルチフィジックス・ポートフォリオであれば、モーターユニットの設計開発に関する技術的、構造的課題を解決できる上に、市場ニーズに合った要件で、機電一体化した革新的なモーターの設計開発を実現できるはずだ。

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提供:ダッソー・システムズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2022年1月14日