製造業にも求められるDXを推進する上で重要な要素になっているのがサブスクリプションビジネスの導入である。モノ売りからコト売りへの移行の実現に役立つだけでなく、顧客のサービス利用状況などを分析し、顧客満足を高めることにも貢献できるからだ。このサブスクリプションビジネスの導入の有力なソリューションとなるのが、タレス(Thales)のソフトウェア収益化ソリューション「Sentinel」である。
社会や企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速し続けている中、もはや製造業にとってもモノ売りだけが収益化の手段ではなくなってきている。そこで今叫ばれているのが、従来ながらのモノ売りのビジネスモデルから脱却し、サービスを中心とするコト売りへの移行だ。
それを実現するためには、ソフトウェアの活用によるサブスクリプションビジネスを積極的に導入していかなければならないわけだが、その有力なソリューションとなるのがタレス(Thales)の「Sentinel」である。そこで本稿では、企業におけるDXやビジネス変革の動向を見渡すとともに、ソフトウェアによるサービスビジネスやサブスクリプションビジネスを実現させる方法について紹介していきたい。
サブスクリプションビジネスの導入に向けたトレンドは世界的に強まっている。米国IDC Digital Business Model&Monetization Research DirectorのMark Thomason氏は「ICT市場においてベンダー目線のままの事業展開では収入が減少していくことになりそうです。良好かつ長期的関係の構築が顧客にもベンダーにも求められていますが、そこでは予測可能性がカギになります。そのための最良のモデルになるのがサブスクリプションビジネスなのです」と説明する。
しかし、サブスクリプションビジネスを導入するに当たっては「8つの落とし穴」が存在していることもあらかじめ知っておかねばならない。
第1の落とし穴は、可変性や顧客への有効性を理解せずに消費ベースに走ることであり、第2の落とし穴は、オンプレミス型やバンドル型のライセンスを直接サブスクリプションに移行することだ。そして、営業やパートナーへのインセンティブ戦略の欠如(第3の落とし穴)、サブスクリプションのメリットを明確にせず惰性に流されること(第4の落とし穴)、会社全体をサブスクリプション化しようとすること(第5の落とし穴)、経営幹部の支援がないこと(第6の落とし穴)、社内外との対話不足(第7の落とし穴)、企業の変革を成功に導くためのチェンジマネジメントの不手際(第8の落とし穴)──といったように、サブスクリプションビジネス導入に際して避けるべきことが挙げられる。
これらのサブスクリプションビジネス導入の落とし穴を踏まえて、改めてThomason氏は、「サブスクリプションのビジネスモデルは頑強で優秀ですからやらない手はないのです。やるかやらないか、ではなくいつやるかの問題です」「技術よりも文化を変える方が大変だということを肝に銘じていただきたい。その上でチェンジマネジメントをぜひ確認してみてほしい」と呼びかける。
冒頭に挙げたように、製造業がDXを進める上でサブスクリプションビジネスの導入は大きな課題になっている。自動車業界を例に挙げると、従来ながらの自動車メーカーが主導権を握るビジネスモデルからサービスプラットフォーマーが主導権を握る多層構造へと変化しつつある。この事実からは、将来的に日本の多くの製造業が下請け化していくシナリオが想定される。しかしそれは同時に、これまで導入していなかったサブスクリプションビジネスによって新しい事業機会が創出され得ることも意味している。
デロイト トーマツ コンサルティング Systems & Cloud Engineeringユニット 執行役員パートナーの根岸弘光氏は「このサブスクリプションビジネスで最も重要なのが、デジタルチャネルで顧客と直接つながり、常に変化する契約者のニーズを把握して継続的に価値を提供し続けることです。そしてまた、本ビジネスモデルは、未来の収益が予想できるため投資がしやすいというのもポイントです」と強調する。
ここで、従量課金のサブスクリプションビジネスを導入した、あるハードウェア(産業機械)メーカーの事例を紹介しよう。同社では、従量課金モデルを導入したことにより、顧客の初期設備投資を抑制した。それに加え、設備所有による電気代の削減や、工場の省力化にも貢献することにより、提供価値を訴求している。併せて、これまで顧客の資産だった製品を保有することによる自社資産の肥大化リスクを回避するために、リース会社も活用している。
では、サブスクリプションビジネスの導入に成功するための必要条件とは何なのだろうか。根岸氏は「サブスクリプションビジネスは昔から存在するビジネスモデルですが、進化を続けています。今は『サブスク2.0』に相当する進化過程といえるでしょう。そこでは、顧客との継続的な関係構築とタッチポイントのデジタル化をきちんと行わなければ、継続的なサービスの成長にはつながりません」と述べる。
そしてサブスクリプションビジネスは、継続的な収益の積み重ねによって将来の収益が決まるため、立ち上げ時点での成功、失敗の見極めは難しい。このため経営者には、長期的な視点でその成否を見定めることが重要になってくる。「『解決したい顧客の課題は何か』といった指針を設定するとともに、取得すべきKPI(重要業績評価指標)を設計し、仮説を立てつつサービス改善に向けたアクションを実施し続ける──こうしたサイクルを確立することが必要です」(根岸氏)。
ここからはSentinelのソフトウェア収益化ソリューションを活用して、サブスクリプションビジネスの導入を進めている企業の事例を2つ紹介しよう。
1つ目は、音声認識ソフトウェアを展開するアドバンスト・メディアによるライセンス管理の実践事例である。音声認識技術の専業企業である同社では、B2Bに特化した音声認識エンジンやソリューションを提供しており、国内音声認識市場においてシェア約5割を占めている。そんな同社がこのほどサブスクリプションビジネスを導入したのが、オンライン会議・対面での会議の内容を音声認識技術を用いてテキスト化するスタンドアロン型のソフトウェア「ScribeAssist」だ。
これまでScribeAssistのライセンス管理には、タレス製のドングルを用いたUSBキー方式を採用しており、また社内規定などによりUSBキーが使えない企業には、自社製のライセンスファイル形式ノードロックを利用してもらっていた。アドバンスト・メディア VoXT事業部 部長の志村亮一氏は「USBキーは、紛失や破損が起こり得る上に、コロナ禍で多くの企業で導入が拡大したリモートワークの際に個人宅で利用するのは困難です。これに加えて、顧客の利用状況がよく分からないということも長年の問題になっていました」と振り返る。
アドバンスト・メディアは、これらの課題を解決すべく、ScribeAssist特有のライセンス管理システムの自社開発に向けた検討を開始した。しかしそこに立ちはだかったのが、エンジニアリソース問題であった。「エンジニアリソースが限られる中、ライセンス管理機能の開発とScribeAssistの独自機能の開発、どちらを優先すべきかを検討したところ、後者という結論に至りました」(志村氏)。
そこで同社が採用したのがSentinelのソリューションである。志村氏は、その選定理由について、もともとタレス製のUSBキーを利用していたことや、タレスからさまざまな課金体系、ライセンス制御方法に精通したコンサルティング、情報提供を行ってもらえたことなどを挙げる。そして、「当社が現時点で想定しているライセンス体系を実現できるだけでなく、さらに将来的に新たなニーズが出てきそうな課金体系についても実現できるであろうことも重視して決めました」(同氏)という。
こうして、Sentinelの本契約から2020年10月に研修を受けるなどした後開発を進め、2021年7月にはScribeAssistに実装してリリースするに至った。現在は、これまでの2つの管理形式に加えて、顧客側のサーバでライセンスを管理するFloating License Managerと、クラウドで管理するFloating License Cloudが新たな管理方法として加わっている。顧客は社内事情にあった最適なライセンス体系を選択できるようになり、アドバンスド・メディア社内の開発や営業、カスタマーサービスなどの各部門でもさまざまな導入効果が表れているという。
こうした成果を受けてアドバンスト・メディアでは、機能ごとの追加オプション価格の設定や、新しい課金体系のリリース、顧客の利用状況の見える化など、新たな展開も目指していく構えだ。
2つ目の事例は、NTTデータ数理システムが展開するさまざまなデータ分析・AIツール製品群を対象としたライセンス体系刷新への適用になる。
NTTデータ数理システムが展開するデータ分析・AIツール製品群は非常に幅広く、大まかに分けて、データ分析、数理最適化、シミュレーションという3つの分野に分かれる。そしてそれらの製品群は全て「Visual Analytics Platform(VAP)」という基盤の上でシームレスに連係して動かすことができる。同社 応用統合プラットフォーム部 部長の小木しのぶ氏は「データ分析・AIツールとしての幅の広さや連係は、他に類を見ないのではないかと自負しています」とコメントする。
しかしながら、この多くの製品群を連係して組み合わせられるという特徴は、同時にライセンス体系の複雑化にもつながっていた。小木氏は「約20年もの間、徐々に製品群を拡張しながらライセンス機能も自社開発してきた結果、ライセンス機能の開発コストがかかるとともに、メンテナンスできる人間も限られ、新しい機能を追加しにくく、製品のバージョン管理が緩いなど、ライセンス管理におけるさまざまな課題が生じていました」と語る。そこで、顧客のニーズに柔軟に対応するための新たな方法を模索する中で、全ての課題に応えてくれたのがSentinelだったのだという。
NTTデータ数理システムは、Sentinel搭載版の製品群を2021年3月にリリースした。製品のオンラインダウンロードやオンライン認証、クラウド対応など、コロナ禍で求められるリモートワークへの対応では社内外で大きなメリットを享受できている。
ただし、Sentinel導入までの道のりは決して平たんではなかった。NTTデータ数理システムのライセンスの考え方に合致するか、それを実現できるのか、というアセスメントから始まり、キーポイントとなったライセンス設計を経て、実装、既存顧客データのEMS(ライセンスと権限管理のシステム)への移行、テスト、そして製品とSentinel双方のバージョンアップと、この間に1年を要している。小木氏は「それなりに苦労しましたが、本当にSentinelを導入してよかった。そのメリットは大きいです」と強調する。具体的には、社内でメンテナンスする必要がないことや、登録しておけばオンラインでさまざまな認証が行えるため、すぐに製品が利用可能になる点などを挙げている。
また、NTTデータ数理システムは、ノーコードで各種分析が行えるブラウザベースの新分析ツールを2021年秋にリリース予定であり、そこにもSentinelが採用されるという。「Sentinelはよくできているソリューションです。自社製品のあるべき姿を検討しつつ、タレスとも相談しながら、最終的に良いライセンスを実現できるだろうと考えています」(小木氏)という。
ここまで、製造業にも求められているサブスクリプションビジネスの市場動向や、自社に最適なサブスクリプションビジネスを効率的に導入できるSentinelソリューションの採用事例などについて解説してきた。
まだまだサブスクリプションビジネスの導入に関して悩んでいる企業も多いことだろう。そうであれば、本記事を参考にした上で、ぜひSentinelの活用を検討してみてはいかがだろうか。
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提供:タレスDIS CPLジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年11月24日