NUCのコンパクトな筐体にIntel Xeonプロセッサを搭載し、ワークステーションクラスの高性能を実現した最新ハードウェア環境「Intel NUC 9 Pro」が登場した。妥協のない、より高いパフォーマンスが求められるミッドレンジ3D CADを用いた設計業務において、その実力を発揮するという。長年、設計者の道を歩み続けてきたR2の平田泰大氏に、日頃からミッドレンジ3D CADを活用する設計者の目線で、「Intel NUC 9 Pro」の実務での使用感を評価してもらった。
3D CADは設計者にとってなくてはならないツールだ。中でもミッドレンジ3D CADは、家電から産業機器、ロボットやモビリティなどに至るまで、さまざまなプロダクト開発に採用され、忙しい設計者の業務を支援する。そんなミッドレンジ3D CADを活用して設計業務の効率化を図るには、各機能をストレスなく、スムーズに操作できることが求められる。そのため、ツール以上にハードウェア環境の選定が重要となる。
そこで注目したいのが、コンパクトながらワークステーションクラスの性能を備える最新ハードウェア環境「Intel NUC 9 Pro」だ。今回、R2の平田泰大氏に日頃からミッドレンジ3D CADを活用する設計者の目線で、実務での使用感などを評価してもらった。
学生時代、カーレーサーになる夢を抱いていた平田氏は、その夢を諦める代わりに自動車業界のメカ設計者を目指した。大学卒業後、自動車やF1向けのブレーキシステムなどを手掛ける曙ブレーキ工業で設計者としてのキャリアを積み、2014年にWHILLに入社。パーソナルモビリティ「WHILL」の設計に従事し、製品開発の現場を指揮してきた。そして、2020年1月に独立し、レース用電動カートや超小型モビリティの実現を目指してR2を設立。現在、ドバイ警察が2021年ドバイ万博に展示予定の「SPS-AMV(自動運転型無人交番)」の車両設計や、自動配送ロボット「Hakobot」の開発プロジェクトにCTOとして参画するなど、さまざまなプロダクトでその手腕を発揮する。
長年、設計者の道を歩み続けてきた平田氏は、近年の設計者を取り巻く環境について次のように語る。「普段からノートPCで3D CADを動かしていますが、10年ほど前は満足に動きませんでした。今ではそれが当たり前となり、設計業務のスピード感が増し、関係者とのやりとりやアウトプットも早さが求められています。設計者はその期待に応え続けなければなりません。3D CADを活用した設計業務のスピード感をどれだけ上げられるかが1つの勝負所だと感じています」(平田氏)。
日々ミッドレンジ3D CADを使用する中、平田氏は特に、部品数が数百点以上のアセンブリを用いた動作干渉チェックやレンダリング、シミュレーションの実行などにおいて、パフォーマンスの必要性を強く感じることがあるという。「関係者の前で3D CADを立ち上げ、その場で設計変更をすることも珍しくありません。そのため、ツールの立ち上げ時間一つとってもパフォーマンスは気になります。また、レンダリングやシミュレーションで頻繁に待ち時間が発生したり、ハングアップしてしまったりするようでは設計者の思考も停止してしまいます。これは悩ましい問題です」と、平田氏は高いパフォーマンスが発揮できる設計環境の重要性を訴える。
現在、平田氏はデスクトップPCとノートPCの2台体制で、プロジェクトにあわせて「Fusion 360」と「SOLIDWORKS」の2つの3D CADを使い分けながら設計業務を遂行している。そんな平田氏は「Intel NUC 9 Pro」をどのように評価するのだろうか。
製品名 | Intel NUC 9 Pro(開発コード:Quartz Canyon) |
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CPU | Intel Xeon E-2286M(16Mキャッシュ、2.40GHz) |
メモリ | 32GB(16GB×2) |
ストレージ | Intel SSD 660p(512GB×2) |
グラフィックス | NVIDIA Quadro P2200 |
OS | Windows 10 Home |
本レビューで使用した「Intel NUC 9 Pro」の主な構成について |
NUCは一般的に“ミニPC”のイメージが強いが、平田氏がレビューする「Intel NUC 9 Pro」(開発コード:Quartz Canyon)はNUCとして初のワークステーション向けモデルであり、コンパクトな筐体ながらベースボードにPCI ExpressやM.2スロットを備え、高い拡張性を実現する。特長的なのは、CPU内蔵のモジュール型ユニット「Compute Element」を交換することで簡単にシステム構成を変更できる点だ。「非常によく作り込まれているなという印象を持ちました。グラフィックスカードを任意で追加できるだけでなく、CPUをユニットごと換装できるのはありがたいですね」と平田氏はファーストインプレッションを述べる。
今回、平田氏に使用してもらった「Intel NUC 9 Pro」は、ミッドレンジ3D CADの利用を想定し、CPUが「Intel Xeon E-2286Mプロセッサ」、メモリが16GB×2、ストレージが「Intel SSD 660p」512GB×2、グラフィックスが「NVIDIA Quadro P2200」という構成で、OSに「Windows 10 Home」を搭載する。
平田氏には、(1)アセンブリモデルのファイル展開、(2)レンダリング処理、(3)シミュレーションの実行という3つのシチュエーションで、「Intel NUC 9 Pro」の使用感を検証してもらった。なお、以降の内容は、Fusion 360およびSOLIDWORKSでの動作パフォーマンス(処理完了までの秒数)を、平田氏が普段使用するノートPCと比較したものだ。
CPU | Intel Core i7-9850H(12Mキャッシュ、4.60GHz) |
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メモリ | 32GB |
ストレージ | Samsung SSD 1TB |
グラフィックス | NVIDIA Quadro T2000 |
OS | Windows 10 Pro |
参考 平田氏が普段使用するノートPCの主なスペックについて |
検証の題材として、ドバイ警察の「SPS-AMV」の車両モデル(部品数約300点のアセンブリモデル)を使用した。まずは、平田氏のノートPCで3Dデータの読み込みを行ったところ、車両モデルの表示が完了するまでの時間はFusion 360で5.03秒、SOLIDWORKSで10.4秒となった。これに対し、「Intel NUC 9 Pro」ではFusion 360で4.64秒、SOLIDWORKSで8.23秒となり、パフォーマンスの向上が見られた。
使用環境 | Fusion 360 | SOLIDWORKS 2020 |
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平田氏のノートPC | 5.03秒 | 10.4秒 |
Intel NUC 9 Pro | 4.64秒 | 8.23秒 |
検証1 アセンブリモデルのファイル展開の結果 |
数値だけを見ると少しの差に思えるが、平田氏は「実際には計測値よりもかなり速く感じられました。部品点数がより多いものであれば、その差をさらに実感できたかもしれません。併せて、編集系のコマンドも触ってみましたが、いずれもストレスなく操作できました。これであればもう少し大規模なアセンブリでも問題なく扱えると思います」と評価する。
3Dデータ表示や編集では、CPUやグラフィックス性能などが影響するため、Xeon E-2286MプロセッサとQuadro P2200を搭載する「Intel NUC 9 Pro」の方がより快適な環境といえるだろう。また、Fusion 360およびSOLIDWORKSでは、いずれも最適なパフォーマンスを確保するためにSSDの利用を推奨している。今回使用した「Intel NUC 9 Pro」には、高速な読み書き速度を実現するSSD 660pが搭載されており、その点もパフォーマンス向上に大きく寄与したと考えられる。
こちらの検証でもドバイ警察の車両モデルを用いた。ここではFusion 360のレンダリング機能、SOLIDWORKSのアドイン「PhotoView 360」(いずれもローカル環境でのCPUレンダリング)を使用し、フルHD解像度の最高画質(Fusion 360は[最終:高画質]設定)を指定して実行した。
まず、平田氏の環境でレンダリングを実行したところ、処理完了までの時間はFusion 360で395秒、SOLIDWORKSで132.5秒となった。これに対し、「Intel NUC 9 Pro」ではFusion 360で217秒、SOLIDWORKSで97.1秒という結果となり、Fusion 360で約45%、SOLIDWORKSで約27%ものパフォーマンス向上が確認できた。
使用環境 | Fusion 360 | SOLIDWORKS 2020 |
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平田氏のノートPC | 395秒 | 132.5秒 |
Intel NUC 9 Pro | 217秒 | 97.1秒 |
検証2 レンダリング処理の結果 |
いずれもCPUレンダリングということで、「Intel NUC 9 Pro」に搭載するXeon E-2286Mプロセッサが本領を発揮した結果となった。平田氏も「まさかここまで差が出るとは思いませんでした」と驚く。また処理中も、動作のもたつきなどは最後まで感じられず、非常に好感触だったという。普段、レンダリングを活用する頻度はそれほど多くないという平田氏だが「フルHDの最高画質でこれだけのパフォーマンスが出せるのなら、プレゼン資料などの作成時にもっと積極的にレンダリングを活用してみたくなりますね」と満足気に語る。
最後に、シミュレーション(静解析)についても検証した。題材の解析モデルは、自動配送ロボット「Hakobot」の足回りだ。ここではFusion 360のシミュレーション機能、SOLIDWORKSのアドインである「SOLIDWORKS Simulation」を使用して、タイヤに重さと衝撃が最もかかったときの荷重を接地面に入力し、ハブシャフトを固定した状態で、リムとハブシャフトの応力を見る解析を行った。
平田氏の環境で解析結果が表示されるまでの時間はFusion 360で33.5秒、SOLIDWORKSで4.06秒となった。これに対し、「Intel NUC 9 Pro」ではFusion 360で31.9秒、SOLIDWORKSで3.7秒という結果になった。
使用環境 | Fusion 360 | SOLIDWORKS 2020 |
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平田氏のノートPC | 33.5秒 | 4.06秒 |
Intel NUC 9 Pro | 31.9秒 | 3.7秒 |
検証3 シミュレーションの実行結果 |
シミュレーションの実行では、主にCPU性能が重要となる。今回は比較的シンプルなモデルで検証したため、数値上の差はわずかであったが、より複雑な形状で、メッシュサイズをより細かく設定した解析であれば、CPU性能の差が顕著に表れたに違いない。また、SOLIDWORKS Simulationは解析処理中にファイルを生成するため、高速な読み書き速度を実現するSSD 660pの利用が適している。「今回は解析を1ループだけ回すような使い方で検証しましたが、繰り返し解析をかけて精度を高めていく使い方や、複雑な形状で細かくメッシュを切った場合などであれば、その差をもっと感じられると思います。処理パフォーマンスが向上すれば、設計プロセスの中で積極的にシミュレーションを活用していこうというモチベーションアップにもつながります」(平田氏)。
以上、ミッドレンジ3D CADを使用する上でパフォーマンスが求められる3つのシチュエーションを題材に、「Intel NUC 9 Pro」の活用によって、それぞれ十分な効果が得られることを確認できた。平田氏は“これから設計者が選択すべきハードウェア環境”として、「Intel NUC 9 Pro」に対して次のように太鼓判を押す。
「『Intel NUC 9 Pro』にはワークステーションクラスの性能と拡張性が、コンパクトな筐体の中に詰め込まれており、スペースの限られた自宅や事務所でもパフォーマンスに妥協することなく設計業務に専念できます。また、静音性にも優れており、作業の妨げになることはありません。ミッドレンジ3D CADを使用する上でハードウェア環境は重要な要素です。リモートワークが浸透する今、デスクトップPCでもなく、ノートPCでもない、もう1つの選択肢として、『Intel NUC 9 Pro』が設計者のスタンダードになり得ると強く感じました」(平田氏)
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提供:インテル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年3月9日