あらゆるものが「つながる世界」へと進む中、生活を支えるエネルギーの在り方も変わっていく。分散型電力によりエネルギーコストが究極まで下がる中で、世界の在り様はどのように変わっていくのだろうか。こうした新たな世界に対し、コンセプトや製品を発信しているのが、フエニックス・コンタクトである。同社が開催したオンライン展示会「PHOENIX CONTACT Dialog Days」の様子を紹介する。
デジタル技術の進歩により全てのものが「つながる世界」が広がっている。これらと関連しながら、広がっているのが「電動化」だ。分散型発電やスマートグリッドなど発電や送配電網の変化に加え、電気自動車(EV)など従来は電気以外で駆動していた機器の電動化が広がりを見せている。将来的に電力コストが大幅に低減すると予測される中、世界の在り方の変化として「The All Electric Society」という新たな社会のビジョンを掲げるのが、ドイツのPHOENIX CONTACT(以下、フエニックス・コンタクト)である。
フエニックス・コンタクトでは2020年11月16〜20日にオンライン展示会「PHOENIX CONTACT Dialog Days」を開催し、全世界100か国以上から8200人がバーチャル展示、技術エキスパートらによるライブカンファレンス、説明員とのライブチャットや展示ガイドツアーに参加した。本稿では同社が訴えた「The All Electric Society」や、スマート工場のコンセプト、さらに同社の新たな製品群について紹介し、新たな「つながる世界」に向けてどのような取り組みを進めていくのかについて紹介する。
フエニックス・コンタクトのCEOであるFrank Stuhrenberg(フランク・シュトルンベルグ)氏は「将来の大きな課題に対してフエニックス・コンタクトでは電動化、デジタル化、自動化が大きな役割を担うと考えている」と語っている。その中で、「The All Electric Society」というコンセプトを打ち出している。
国際連合(国連)で定められた「Sustainable Development Goals(SDGs、持続可能な開発目標)」の7つ目の項目として「手ごろでクリーンなエネルギー」がある。世界的にも風力や太陽光などクリーンエネルギーの活用が広がる一方で、スマートグリッド化や蓄電システムの改善など、エネルギー活用の在り方が変化しようとしている。これらが進み、クリーン電力が真に手ごろな価格で使用できるようになり、エネルギーコストが大幅に下がる環境を作ることで、さまざまな社会問題の解決が進む他、社会の在り方も変わっていくことになる。こうした変化を積極的に推進していくとともに、新たな社会構造を構築するパートナーとして貢献するのがフエニックス・コンタクトの考えだ。
これらに直接的に貢献するような具体的な製品群は、現状ではEV向けの充電設備などがあるが、人手不足や工数削減に定評のある接続技術Push-inテクノロジー搭載の端子台や制御機器・ネットワーク機器など、電力活用の“つなぎ目”を幅広く担ってきた立場として、10年先を見据え電力活用の効率化や利便性向上ソリューションに積極的に取り組んでいく方針である。
電力を有効活用するという意味で、効率的な生産活動を行うスマートファクトリーは重要な要素の1つとなる。「PHOENIX CONTACT Dialog Days」では、メインとなる企画展示の1つとして、同社のバッドピルモント(Bad Pyrmont)工場を再現したDigital Factoryを出展した。「DATA SECURITY(データセキュリティ)」「DATA TRANSPORTATION(データの移動)」「DATA USAGE(データ活用)」「DATA COLLECTION(データの蓄積)」の4つのテーマごとに、同工場におけるこれらに対する具体的な取り組みを紹介している。
「データセキュリティ」では、制御セキュリティ規格であるIEC 62443に対応しセキュリティ対策を推進。フエニックス・コンタクトのセキュリティ製品群である「mGuard」を用い、外部とのセキュアな通信や製造設備への適切なアクセス制御、古いOS搭載PCの保護、ファイアウォールルールの自動生成を実現する。工場として、IEC 62443に基づく対策を進めている他、規格内容が定まってきたコンポーネント向けのIEC 62443-4などについても対応を進め、セキュリティ確保に積極的に取り組んでいる。
「データの移動」については、データを正しく集めるための仕組みを訴える。データをリアルタイムに適切に伝えるために自社マネージドスイッチを導入し、この診断機能を生かすことでデータスループットやポート状態、エラー発生箇所を検知する。データを正しく取得するとともに、停止時の復旧も早めることができる利点がある。また、データ取得が進む中で、自社無線アクセスポイント(AP)の機能によりセキュリティを保ちつつユーザーガイドメンテナンスなど可用性を高める無線サービスの活用も強化している。
「データの蓄積」については、OTとITのさまざまなシステム間で交換されるデータを標準化し、データ解析効率は50%向上させた。その取り組みの1つとして、旧設備の機械の標準入力と出力から機械の3〜5%のデータを選別して収集し、OPC UAによりネットワークで収集する仕組みを取り入れ、効率的な収集を実現したという。また膨大な収集データから実時間に異常を検出し生産性改善を実現できる技術を実現した。
「データの活用」では、機械の稼働情報や品質情報をOTレベル、ITレベルの両方で標準のソフトウェアコネクターを通して統合し、これらのデータをSQLサーバに集めて、収集し分析しておくことで、新しいプラント設備や機械の導入を行う際にこれらのデータを活用し、30%の省時間化を実現できたとしている。フエニックス・コンタクトではこれらの知見により自社工場の生産性を高めるとともに、その中で活用した同社製品に関する知見や、スマートファクトリー化への総合的な知見を外部提供していく方針である。
フエニックス・コンタクトでは、「PHOENIX CONTACT Dialog Days」において、これらのコンセプト展示に加えて、新技術や新製品なども数々発表した。これらの中からいくつか注目の技術や製品を紹介する。
フエニックス・コンタクトが推進する「PLCnext Technology」についても新製品を用意した。PLCnext TechnologyはPLC(Programmable Logic Controller)のオープン化を図り、オープン制御プラットフォームを構築しようとする取り組みだ。従来のPLC用の言語と新たなコンピュータプログラム言語を並行して使用できるようにし、Visual Studio、Eclipse、MATLAB/Simulink、PC Worx Engineerなどのソフトウェアツールの活用に加え、IEC 61131-3およびC/C++とC#でのプログラミングコードの活用もできる。サードパーティーによる機能追加や、オープンソースコミュニティーによる開発など、オープンプラットフォームで制御領域の革新を進めている。
「PHOENIX CONTACT Dialog Days」では、PLCnext Technology対応のハイレベルコントローラー「RFC 4072 S」を出展。PLe/SIL3までの安全機能を備える他、標準のプログラムの高速実行を可能としており、PLCnext Technologyの使用環境を拡張する。PLCnext Technology関係ではその他、今後発売予定の超小型ボックスPCベース「PLCnext Control EPCシリーズ」や、PLCnext Technologyの無料エンジニアリングツールである「PLCnext Engineer」の紹介を行った。
また、新たな価値として展示会内で訴求したのが、シングルペアイーサネット(Single Pair Ethernet、SPE)である。SPEはもともと車載用技術として発展してきたが、工業用での転用を視野に規格化が進み、注目を集めている通信規格である。IEC 63171シリーズとして、規格化が進んでおり、その中でいくつかの規格が存在している状況だ。フエニックス・コンタクトでは、IEC 63171-2およびIEC 63171-5に準拠した製品を用意している。最長1000m、最大データ通信速度1Gbps、最大電力50Wを実現する。フエニックス・コンタクトでは、SPE技術のアライアンス「SPE System Alliance」の発足にも携わり、同技術の普及に力を注いでいる。
「PHOENIX CONTACT Dialog Days」では同技術の紹介と共に、IP20/IP67用のコネクターシリーズとケーブルを出展。市場での展開に力を注ぐ姿勢を示していた。
製造現場で簡単に情報収集を行えるためのツールなども新たに用意した。Bluetooth Low Energy(BLE)アダプター「FL BLE 1300」である。これはBLEで接続された8つまでのセンサーをTCP/IPで転送可能な仕組みである。保護等級IP68のコンパクトなボディーにアンテナを内蔵しており、有線でのセンサー情報取得が難しい場合に機器内センサーにBLEデバイスを取り付け、このアダプターを通して取得することで、簡単に情報収集を可能とするというものだ。同様に通信系では、無線LANモジュール「FL WLAN 1010/ FL WLAN 2010」なども用意。これは分離型の外部アンテナを用意し、AGVなどの移動体でも安定した通信が行えるようにした。
その他、約100mm角の超コンパクトファンレスボックスPC「BL2 BPC 1500シリーズ」なども出展。2シリアルポート対応可能でDINレールや壁取り付けを可能とし、コンパクトボディーを生かし現場でのエッジコンピューティング用途で訴求するという(日本ではBL2 BPC 1500以外の製品は近日発売予定)。
ここまで「PHOENIX CONTACT Dialog Days」におけるフエニックス・コンタクトの新たな方針やこれらをサポートする具体的な製品・ソリューションを見てきたが、いかがだろうか。フエニックス・コンタクトでは、中長期を視野に「全てが電動化する社会」を描き、従来の制御盤用接続機器に加え、スマートファクトリー化に向けたさまざまな具体的な製品を提供するとともに、将来性を見据えた新技術の活用にも取り組んでいる。「つながる世界」が広がる中、エネルギーをより有効に活用できる世界は必須となる。これらのコンセプトを共有できる場合は、フエニックス・コンタクトは、中長期にわたって伴走してくれる良いパートナーとなり得るだろう。
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提供:フエニックス・コンタクト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年2月11日