会津の蔵から生まれた、深層学習を学ぶのに最適なAIロボットカー教材ロボット開発

福島県会津若松市を拠点とするFaBoは、深層学習を学ぶのに最適なAIロボットカー教材として、「Donkey Car」や「JetBot」、「JetRacer」などを展開している。さらなる次の展開として、NVIDIAの総合ロボット開発プラットフォーム「NVIDIA Isaac SDK」を用いた本格的なAIロボット開発キットの投入も計画している。

» 2020年10月07日 10時00分 公開
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 製造業の技術者にとって、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったデジタル技術を取り入れていくことは極めて重要だ。企業にDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められる中で、これらのデジタル技術は大きな原動力になると期待されているからだ。

 これらのIoTやAIについて、技術者が学ぶのに最適な教材を手掛けているのが、福島県会津若松市を拠点とするFaBoだ。同社 代表の佐々木陽氏は、2000年ごろから市場が急拡大した携帯電話向けJavaアプリケーションを開発するGClueを創業し、その後携帯電話向けミドルウェア、Androidスマートフォン向けミドルウェアなどに事業を拡大していった。「東日本大震災の後くらいから、スマートフォンと連携するハードウェアの開発も始めたのですが、その一環として、会津若松市内にある古い蔵をファブ施設に仕立てた『Fab蔵』を立ち上げました。このFab蔵で行ってきたハードウェア関連のさまざまな活動を基に、2015年に法人化したのがFaBoです」(佐々木氏)という。

FaBo設立の元になった「Fab蔵」での活動の様子 FaBo設立の元になった「Fab蔵」での活動の様子(クリックで拡大)

「Jetson」でAI性能の限界を打破

 FaBoでは2017年ごろから、「Raspberry Pi」などのシングルボードコンピュータとさまざまなセンサーモジュールを連携させられるIoT開発キットなどの展開を始めた。そしてその流れから、深層学習フレームワークである「TensorFlow」で開発したアルゴリズムをRaspberry Piに実装してロボットカーを動作させる取り組みなどを、Fab蔵で活動していた会津大学の学生などと共に行っていた。

 佐々木氏は「ここで出会ったのが、シリコンバレーで注目を集めていたオープンソースのAIロボットカー『Donkey Car』です。このDonkey Carを教材として利用しやすいように商品化したのですが、Raspberry Piでは、深層学習の学習にはクラウド環境やGPU搭載のPCが必要となりハンズオンセミナーの開催時の大きなボトルネックになっていました。こういった問題点を解消しようと、当時は、Jetson TX2を搭載したロボットカーなども試作していたのですが、大きさと価格面がボトルネックになって、なかなかキット化できずにいました」と説明する。

FaBoの教材キット用いて組み上げた「Donkey Car」 FaBoの教材キット用いて組み上げた「Donkey Car」(クリックで拡大)

 その後NVIDIAが、価格99ドルの「Jetson Nano」の発売に合わせて、2019年3月にAIロボットカーキット「JetBot」、同年8月にAIレースカー「JetRacer」を発表する。既にFaBoでは、Donkey CarベースのAIロボットカー教材の需要が拡大していたこともあり、深層学習の初心者向けにJetBotとJetRacerの教材を開発することを決めた。「JetBotもJetRacerも、NVIDIAがオープンソースとして公開しているものですが、教育教材として使うにはマーケット事情に合わせて、入手性のいい部品構成でキット化する必要があります。NVIDIAが公開してくれるレファレンス実装の情報などを参考に、まず、深センの華強北にいって開発合宿をおこないました。その後、シリコンバレーにも何度か訪問し、NVIDIAの方と情報交換をしながらキット化を進めていきました」(佐々木氏)。

AIロボットカー単体で学習も推論も

 FaBoが手掛けるDonkey CarやJetBot、JetRacerなどのAIロボットカー教材は、従来のプログラミングによる細かな制御が必要なロボットとは異なり、深層学習について理解すれば自律走行ができるようになっている。佐々木氏は「まさに深層学習の初心者向けの教材として最適です。深層学習について学んだことをAIロボットカーですぐに試せるので、理論だけでなく実体験として身に付けられます。インターネット空間ではAIや深層学習は”万能”のイメージがありますが、現実空間では、なかなか思うようにいかなくなります。AIロボットカー教材を通じて、現実空間を認識させる難しさを身を持って体験し、その経験から深層学習の新たな創意工夫やひらめきにつなげることが可能になります」と述べる。

「JetBot」(左)と「JetRacer」(右) 「JetBot」(左)と「JetRacer」(右)(クリックで拡大)

 また、JetBotとJetRacerは、AIロボットカー単体で深層学習の学習も推論もやってしまおうというコンセプトがあり、そのことが教材として評価されている。Donkey Carの場合、深層学習の学習をクラウドで10分程度かけて行うのに対し、JetBotとJetRacerはAIロボットカー上で5〜10分でデバイス内で深層学習の学習が完了する。これは、JetsonのGPUパワーと限られた数のデータ数でも効率良く深層学習を行える転移学習を採用しているからだ。「NVIDIAの教育教材は、NVIDIAの最高峰のエンジニアが考えた最先端のAI×Roboticsの手法を、今すぐ教育現場に導入できることが評価されています」(佐々木氏)。

 FaBoのAIロボットカー教材は、NTTコムエンジニアリングの研修プログラムに採用された他、宇都宮大学、会津大学、自動車系の専門学校などでも活用されている。

Isaacベースの本格的なAIロボット開発キットも

 FaBoでは、これらの初心者向け教材だけでなく、より本格的なAIロボットの開発にも取り組めるようなキットも投入する予定だ。NVIDIAの総合ロボット開発プラットフォーム「NVIDIA Isaac SDK(以下、Isaac)」向けに開発された「Kaya」をベースに、ROBOTIS Japanとの共同開発を進めているところだ。さらに、より大型のAIロボットの開発が可能になる、車いすベースの車体を用いたキットの開発も検討している。

「Kaya」ベースの本格的なAIロボット開発キット 「Kaya」ベースの本格的なAIロボット開発キット(クリックで拡大)

 これまでのロボット開発では、ROSを用いることが多かった。しかし、ROSベースの場合、品質保証や試験などを含めた産業機器としての落とし込みが難しいことが課題になっている。佐々木氏は「Isaacはしっかりしたロボットのフレームワークがあり、その上にスタックを積み上げていくように開発できます。また、シミュレーション環境も充実しており、現実世界で実際にロボットを動かすことなくサイバー空間で評価や試験を行えるのもポイントです」と強調する。

 Jetsonを活用したAIロボットカー教材や開発キットに注力するFaBoだが、もう1つ、Jetsonを用いた興味深い開発にも取り組んでいる。それは、最新モデルとなる「Jetson Xavier NX」ベースのノートPC「JetBook」である。モバイルディスプレイや外付けキーボードなど購入可能な製品や部品とJetson Xavier NXをつなげ、3Dプリンタで出力した筐体に組み付けてノートPC化しようというものだ。一般的なノートPCとは異なり、CANやI2C、SPIなどのインタフェースを直接つなげられるので、車載システムなどの開発用途に最適だという。2020年10月5日から開催されるNVIDIAのユーザーイベント「GTC 2020」に合わせて、オープンソースハードウェアとして公開する方針だ。

「Jetson Xavier NX」ベースのノートPC「JetBook」 「Jetson Xavier NX」ベースのノートPC「JetBook」(クリックで拡大)

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2020年11月6日