自動運転のカギを握るのはLIDAR ―― 「未来の自動車」に向けたセンシング技術展望アナログ・デバイセズ幹部が解説

自律輸送の時代が近づきつつあります。高いレベルの自律性を備える輸送システムが、今まさに実現されようとしている。その基盤になるのは、MEMSベースの次世代慣性センサーや、レーダー、LIDAR(Light Detection and Ranging)のソリューションである。それらの高性能センシング技術について、アナログ・デバイセズで自律輸送/車両安全担当ヴァイスプレジデントを務めるChris Jacobsが解説する。

» 2020年01月08日 10時00分 公開
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 自律輸送の時代が近づきつつあります。高いレベルの自律性を備える輸送システムが、今まさに実現されようとしているのです。その基盤になるのは、MEMSベースの次世代慣性センサーや、レーダー、LIDAR(Light Detection and Ranging)のソリューションです。

 本稿では、それらの高性能センシング技術について、アナログ・デバイセズで自律輸送/車両安全担当ヴァイスプレジデントを務めるChris Jacobsが解説します。


レーダーと共にLIDARを使用することが重要かつ必須に

――なぜ、LIDARシステムは自動車の重要な構成要素になったのか?

 現在、自動車の分野では、LIDARの重要性が高まりつつあります。実際、「Audi A8」などの高級乗用車は、LIDARシステムを搭載しています。短距離向けのLIDARシステムが、時速60kmまでの半自動運転機能に利用されているのです。また、自動運転に対応するタクシーの試験車両では、LIDARが主要な知覚センサーとして使用されています。

 自動/半自動の運転機能を搭載する車両は、安全な走行を実現するために複数種の知覚センサーを使用します。十分な冗長性を確保するためには、異なる種類のセンサーを利用する必要があるからです。現時点で最もよく使用されている知覚センサーはカメラです。また、レーダーは、より広く利用されつつあります。そして、近い将来の普及が見込まれているのがLIDARです。これらのうち、カメラは最も低コストであり、既に多くの自動車で使われています。ただ、カメラをベースとするシステムの場合、特に悪天候下では、対応可能な距離が限定されます。レーダーは、天候に左右されず200m以上先までの範囲をカバーでき、大量生産される車両の市場で採用が進む傾向にあります。ここでは、自動運転モードの実現には、少なくとも2種類のセンサー・モダリティが必要だと仮定しましょう。そうすると、長距離のセンシングに対応するためには、レーダーと共にLIDARを使用することが重要かつ必須の要件になります。ただし、LIDARシステムは基本的に高コストです。加えて、150mを超える範囲に対応するためには、技術的な面で解決すべき重大な課題が存在します。アナログ・デバイセズは、そうした技術的な問題の緩和を試みたLIDARソリューションを提案しています。

データ変換、電源管理、信号処理…… 包括的な対処を

――現在、自動運転車を実現するために、技術的な課題を解決すべくさまざまな取り組みが行われている。それにより、輸送業界には大きな変革がもたらされようとしている。アナログ・デバイセズは、この業界にどのようなスタンスでかかわっているのか?

 アナログ・デバイセズは、これらの技術的課題に特に対処し、コンポーネントレベルからシステムレベルまで革新的なテクノロジーと製品を開発して、この市場での地位を成長および、強化するためのビジネスユニットを作成しました。

自動車業界で豊富な実績を積んでいるアナログ・デバイセズのMEMS慣性センサー

 アナログ・デバイセズは、長きにわたり、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ベースの慣性センサーを自動車業界に供給してきました。その結果、多数のTier1サプライヤで構成されるサプライ・チェーンにおいて、大きな信頼を得ることができています。その背景にあるのは、卓越した安定性と堅牢性を実現する当社のMEMSセンサー技術です。現在、当社は自動運転車向けに、性能と信頼性に優れたナビゲーション機能と振動検出機能の実現を支援する、最先端のMEMSデバイスを開発しています。

 アナログ・デバイセズは、数年前から車載レーダーのサプライ・チェーンにも加わっています。この分野では、当社のDSP、データ・コンバータ(A/Dコンバータ、D/Aコンバータ)、RF対応のPLLが広く採用されています。当社は、RF/ミリ波に対応する製品の設計、開発能力を生かし、24GHzに対応する車載レーダー向けのチップセットを発表しました。また、高度なCMOS製造技術をベースとし、77〜79GHzに対応するレーダー向けチップセットのサンプルを供給しています。このチップセットでは、高性能の画像処理レーダー・アプリケーションのすべての動作要件を上回るほどの性能を実現しています。

 アナログ・デバイセズは、データ・コンバータ、パワー・マネージメント、シグナル・コンディショニングの分野で、世界を牽引するレベルの技術を確立しています。これらの分野の製品は、第1世代、第2世代のLIDARシステムに搭載されています。将来のLIDARシステムでは、対応距離、コスト、電気的な性能、光学的な性能について、より高いレベルが求められます。そうした要件に包括的に対応できる特定用途向けの製品を数多く提供していく予定です。

主要な自動車メーカーとの緊密な連携で課題を解決

――自動車の設計に影響を及ぼす将来的な課題としては、どのようなものがあるか? また、それらの課題に対応するために、アナログ・デバイセズの製品群をどのように進化させていくのか?

 特に乗用車では、デザイン性を損なうことなく(これは自動車メーカーにとって非常に大きな関心事です)、いかにすべての知覚センサーを配備するかということが大きな課題になっています。例えば、送信/受信チャンネルの数(またはサイズ)に比例して、イメージングの分解能をスケーリングするにはどうすればよいのかといったことが課題になります。アナログ・デバイセズは、この問題を直接的に解決可能なレーダー技術を開発中です。その実現に向けて、主要な自動車メーカーとの間で緊密な連携を図っています。

 また、自動車業界の目標が運転支援から自動運転へと移行するにつれて、車両のシステムの状態を連続的に監視することが極めて重要になります。アナログ・デバイセズは、最先端の振動検出技術とアルゴリズム技術を保有しています。それらを活用すれば、車両が抱える潜在的な問題が安全性を脅かす存在になる前に検出することが可能です。

Chris Jacobs

 Chris Jacobsは、アナログ・デバイセズのヴァイスプレジデントとして、自律輸送/車両安全事業部門を担当しています。1995年に入社後、民生、通信、産業、車載チームにおいて、設計エンジニアリング、設計管理、ビジネス関連の業務を担当してきました。車両安全部門のゼネラル・マネージャ、高精度コンバータ部門の製品/技術ディレクタ、高速コンバータおよび絶縁製品部門の製品ライン・ディレクタなど、指導的職位を歴任してきました。

 クラークソン大学でコンピュータ工学の学士号、ノースイースタン大学で電気工学の修士号、ボストン・カレッジで経営学の修士号を取得しています。


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提供:アナログ・デバイセズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2020年2月7日