記者も体験! 専門知識不要のAI生成ツールが製造現場を革新する製造現場のAI活用

多くの製造業がAI活用に興味・関心を持っているが、社内にデータサイエンティストがいないという理由で足踏みしているケースも少なくない。そうした中で、「専門知識がなくても、誰でもAIが作れるソフトウェア」として注目されているのが、クロスコンパスが提供するMANUFACIA(マニュファシア)である。MONOist編集部員が、AI生成の1日トライアルサービス「AI Factory」に参加し、実際にMANUFACIAの操作を体験してみた。

» 2019年11月25日 10時00分 公開
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製造現場でAIを生成できる「MANUFACIA」

 IoT(モノのインターネット)導入が加速するに伴い、AI(人工知能)も身近な存在となった。例えば、複数のベンダーから提供されているIoTスターターキットのような製品で、振動や温度などの時系列データ、カメラで撮影した画像データなども容易に収集できる。これらデータの分析はAIが得意とするところだ。現在は、多くのITベンダーが機械学習や深層学習(ディープラーニング)のライブラリやソフトウェアを提供している他、主要なクラウドサービスでも画像認識や音声認識などのコグニティブサービスを利用できる。

 だが、製造業がこうしたAIサービスの恩恵を十分に受けているかというと、必ずしもそうとも言い切れない。製造現場のカイゼン活動にAIを用いる場合、AIで得られた製造現場の知見を現場から離れた机上で眺めているだけでは、現場が求めているアクションにつながりにくいからだ。AIの分析結果を現場へスピーディーにフィードバックする、そのためにはエッジサイドでAIを実行する必要がある。

 製造業では、そもそも膨大なデータが発生するのも、そのデータから得られた知見を利用するのも現場である。その意味でも製造業にとって、「データ収集→学習(検証)→推論」の一連のプロセスは製造現場で運用することが望ましい。これによって、ネットワーク環境やセキュリティ対策などの影響を受けにくく、リアルタイムのフィードバックも可能となる。

 こうした製造業の課題に寄り添ったAIソリューションとして注目されているのが、クロスコンパスの「MANUFACIA(マニュファシア)」というAI生成ツールだ。同社は2016年からAI生成ツールの開発を手掛けており、同社製品は群雄割拠のAIソリューションの中でもパイオニア的存在である。同社 事業戦略本部 AIソリューション事業部の部長を務める右谷仁孝氏は、その特徴を次のように語る。

 「クロスコンパスは、深層学習や機械学習を用いたAI技術を提供する会社として2011年に設立しました。AIに関する受託開発実績は200件を超え、主に製造分野のお客様の課題を解決してきました。その知見とノウハウを結集したのがMANUFACIAなのです。データサイエンティストのようなAIの専門知識を持たずとも、製造現場のユーザー自身で必要なAIを好きなだけ生成することができます」

MANUFACIAでAI生成を体験できる「AI Factory」に記者が挑戦

 クロスコンパスでは、分析したいデータを持ち込んでMANUFACIAによるAI生成、評価(学習生成したAIモデルに検証用データを入力し正答率を検証)を実際に体験できるトライアルサービス「AI Factory」を同社内で開催している。そこで、今回はMANUFACIA がどれほど簡単にAIを作れるのかを体感するため、MONOistの記者がAI Factoryに参加し、実際にMANUFACIAの操作に挑戦してみた。今回は右谷氏が立ち会い、適宜アドバイスを行ってくれた。

クロスコンパスの右谷仁孝氏(左)にMONOist記者がMANUFACIAの操作を学ぶ

 それでは、MANUFACIAの操作を実際に見ていこう。

1. データの取り込み

 MANUFACIAは製造現場で取得しやすい「画像データ」「時系列データ」「振動・音データ」の3種類に対応する。画像についてはJPEGまたはビットマップ、時系列データと振動・音データに関してはCSV形式で教師あり/なしに対応している試行無償サービスのAI Factoryに持ち込むことができる。

 今回は、クロスコンパスが用意した時系列データを用いて、教師あり学習によってモーターの異常検知を行うAIツールを作成する。用意したデータはモーターの電流変化を模擬したもので、OK(正常)データが20個、NG(異常)データが20個。それぞれnormalフォルダとanomalyフォルダにあらかじめ分類してある。

 ちなみに画像データを持ち込む場合は、JPEGまたはビットマップ形式でVGA(640×480)サイズが推奨される。同程度の画像サイズであれば、100枚の画像を用いた学習でも2時間以内にモデルを得られるという。

2. MANUFACIAの起動

 MANUFACIAの操作はWebブラウザ上で行う。最初に、MANUFACIAで使用するデータセット(アセット)やプロジェクトを管理するラボから、新規プロジェクトを作成する。今回は、プロジェクト名を「テスト」とした。

MANUFACIAのトップ画面(クリックで拡大) 出典:クロスコンパス

3. MANUFACIAにデータセットを入力

 MANUFACIAへのデータセット入力は、Webブラウザにデータをドラッグ&ドロップすることで簡単に行える。ファイル単位で入力できる他、フォルダごとまとめてインポートすることも可能だ。その後、入力したデータに対して、MANUFACIA上のデータ管理に用いる「アセットタグ」の割り当てを行う。今回は、フォルダごとデータセットをインポートしたため、フォルダ名の「normal」と「anomaly」がそのままアセットタグとして各データに割り当てられた。直感的にAI生成用データの入力ができる印象である。

4. データセットにラベル付与、学習用と検証用にデータセット分割

 教師あり学習では、データセットに対してラベルを付与するアノテーション作業が必要だ。MANUFACIAではアノテーション作業もフローに組み込まれており、スピーディーかつシンプルな操作で完了する。異常検知モデルであれば、正常ラベルと異常ラベルに該当するアセットタグをそれぞれ指定するだけだ。

 また、作成したモデル検証のため、データセットを学習用と検証用に分割する必要がある。MANUFACIAでは、アセットタグを指定して明示的に学習用と検証用に分割する方法と、学習用および検証用データの割合を指定して自動分割する方法の2通りが用意されている。今回は割合を指定する分割法を指定し、Webブラウザ上のスライダーを操作して学習用を80%、検証用を20%に設定した。

MANUFACIA上でデータセットにラベル付与、データ分割ができる(クリックで拡大) 出典:クロスコンパス

5. データの前処理

 次に、データセットに対して、データ種類に応じて前処理を行う。今回用いた時系列データは個々のデータについてサンプリングの間隔が比較的長く、要素数が少ないといった特徴がある。この後の学習プロセスを高精度に実行するため、データに対して正規化など必要な補完を行う。

 「通常、こうした前処理を行う際には個別にプログラムを組む必要があります。これに対してMANUFACIAでは、あらかじめ用意されたクランプやインターポレート、ノーマライズ、スタンダーダイズといったプリセットを用いて、ノン・プログラムで前処理を行うことが可能です」(右谷氏)

6. 学習の実行

 このフローでは、同社がこれまでのAI開発経験で蓄積したニューラルネットワーク構造のうち、何パターンを用いてモデルを作成するかを選択する。MANUFACIAでは、最大200パターンのモデルを一度に作成することが可能だ。今回は時間の都合上、110モデルを作成することにした。

学習を開始する前にこれまでの設定を確認できる画面が用意されている(クリックで拡大) 出典:クロスコンパス

 ここまでに入力した各種設定を確認したら、いよいよ学習を開始する。処理の進捗状況はダッシュボードから確認できる。今回はおおよそ4〜5分で全モデルの学習が完了した。

 「ディープラーニングではしきい値によってデータを判別するのではなく、データが持つ波形そのものに着目した学習を行います。こうした学習についても個別にプログラムを作成するとなれば、相当なスキルを要するとともに、慣れないうちは1~3カ月くらいの期間時間が必要です。MANUFACIAを利用することで、このハードルを解消し、課題となるデータセットにも依存しますが、誰でも簡単かつ短時間で学習モデルを作ることができます」(右谷氏)

7. モデルの選択

 学習が完了すると、作成したモデルについて、検証用データに対する正解率、学習誤差、ネットワークサイズなどを確認することができる。複数のモデルについて表やグラフ表示で比較できるため、最も精度の高いモデルやエッジデバイスでも動作するネットワークサイズが小さなモデルなど、各自の用途に最も合ったモデルを選択しやすい。また、AIがどのような判断(特徴量の抽出)を行ったのかを可視化する「smooth grad」機能を搭載し、AI活用時の課題となりやすい“説明責任”にも配慮している。

作成したモデルの正解率、学習誤差をグラフ上で比較できる(クリックで拡大) 出典:クロスコンパス
左:各モデル評価結果の詳細表示 右:AIの判断根拠を示す「smooth grad」機能(クリックで拡大) 出典:クロスコンパス

 「なぜ複数の学習済みモデルを生成するかというと、一口にディープラーニングといっても全結合型のニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)など多様なアルゴリズムがあり、また隠れ層を何階層持たせるかによってもネットワーク構造のパターンが異なるためです。正解率100%の学習済みモデルが複数生成された場合は、学習誤差が少なく、ネットワークサイズが小さいものを選ぶのが基本となります。なお、ここで選択した学習済みモデルを『お気に入り』として登録しておき、追加データや別の用途のデータで再学習を行うことも可能です」(右谷氏)

8. 学習済みモデルをエッジデバイスへ実装

 使用する学習済みモデルが決定したら、いよいよエッジデバイスに転送して推論を行う。クロスコンパスは、MANUFACIAで生成したAIをすぐに現場のエッジデバイスに組み込むことができる「Greenia Embedded SDK」を提供している。

 今回は、このSDKによって生成される推論エンジンを組み込んだRaspberry Piに対して、MANUFACIA側でモジュール化(前・後処理+AIモデル)された学習済みモデルをMQTT(Message Queue Telemetry Transport)のプロトコルを用いて転送した。実際のモーターの稼働に伴い生成される時系列データのOK or NG判定をリアルタイムに行うという想定だ。この操作も非常に簡単で、MANUFACIAの「デプロイ」ボタンをクリックするだけで、Raspberry Piのメモリ上にモデルを展開することができた。

 「MANUFACIAがサポートするのはディープラーニングの学習や検証だけではありません。エッジ側でしっかり推論まで実行することができます。これが他ベンダーの提供しているAIソリューションとの最大の違いです。また、MANUFACIAで生成した学習済みモデルは、Raspberry Piなどが採用するARM CPUの他、Intel CPUなどのx86系アーキテクチャにも対応しています。Windows 10、Linux、μITRON OSなどをベースとする産業PCやIoTゲートウェイ、PLCなど製造業の現場で稼働している多様な組み込み機器への運用が可能です」(右谷氏)

 右谷氏のアドバイスを受けながらではあるが、一連のプロセスを終えるまでに掛かった時間はわずか40分ほど。モデル作成に関係する全ての作業がGUI上で完結しており、AIの業務利用経験がない記者でも途中で戸惑うことはなかった。この手軽さであれば、製造現場のユーザーが自らMANUFACIAを用いて、プロセス異常検知や外観検査、振動/異音検査、予兆保全などのさまざまシーンでAIを活用していくことは十分に可能だろう。

AI同士がコミュニケーションする自律的な工場を目指す

 クロスコンパスはMANUFACIAを2019年度からの中長期ビジョンの中核として位置付けており、製造現場に革新を起こす“切り札”として提案していく考えだ。

クロスコンパス社長の鈴木克信氏

 同社社長の鈴木克信氏は、「多くの製造業で人手不足が深刻な問題となっており、熟練技術者のノウハウを若手に継承することも困難となっています。また、仮に若手が入ってきたとしても、半年も経たないうちに新製品を出さなければライバル企業との競争に勝てないという現在の市場環境では、学びのスピードが開発サイクルに追いつきません。この課題をMANUFACIAで解決します」と語る。

 製造現場のさまざまな装置にAIを実装し、それらのAI同士がコミュニケーションし、自律的な製造を行う。そして人間は、より上位での生産計画や企画など価値創造に軸足を置いた仕事に専念するというのが、そこで目指すゴールだ。「そうしたモノづくりのスマート化を、大手製造業だけなく町工場や海外工場でも実践できます」と鈴木氏は強調する。

 これを実現するため、さまざまなパートナーが参加するエコシステムを構築し、アプリケーションやソリューションの拡充に踏み出した。製品化直前の人工知能のみならず実用化に至っていない知能科学も対象とし、学術と産業の橋渡しを行い双方のギャップを埋めるべく、研究機関「Cross Research Institute(CRI)」を2019年4月に設立した。「メンバーの7割が外国籍で構成されたリサーチャーが、製造業、ロボティクス、医療、IoT、マーケティング、ファイナンスなどの分野で、最先端の技術を生み出し現場に適応していきます」と鈴木氏は語る。

 このように今後の展開もますます楽しみなMANUFACIA。まずは同社のAI Factoryで実際に体験してみることをおすすめしたい。自社が取得しているデータが、果たしてディープラーニングに適しているのか、どのような有用性を持っているのかを確認するだけでも大きな価値がある。

クロスコンパスは「新価値創造展2019」(2019年11月27日〜29日、東京ビッグサイト)に出展する。同社ブースでは、模型列車の走行データをAIで推論処理しリアルタイムでポイントを制御するデモや、画像検知による製品のクラス分けデモなどを紹介する予定だ。MANUFACIAによって生成されたAIが、実際の製造現場でどのように活用できるかを体験する良い機会となるだろう。

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提供:株式会社クロスコンパス
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年12月24日