製造業を変えるネットワークの力、“手離れの良い”無線LANで工場はさらに進化する製造業IoT

製造業におけるデジタルトランスフォーメーションの実現において、データの懸け橋を担うネットワーク機器の存在は欠かせない。特にミッションクリティカルな製造現場での利用では、単に機器同士のつながりを実現するだけでなく、その通信方式やセキュリティ対策などにも目を向けなければならない。アライドテレシスのプライベートイベント「Exchangeカンファレンス2019」では、つながる時代の到来を迎えた今、必要とされる次世代ネットワーク技術の最新動向や知見の数々が披露された。

» 2019年06月24日 10時00分 公開
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 さまざまなモノや情報をデジタルデータ化し、新たな価値を創出するデジタルトランスフォーメーション(DX)。現代の製造業はDXの実現に向け、IoT(モノのインターネット)やスマート工場といった取り組みを加速している。これらの取り組みでは、モノ同士、コト同士の“つながり”や“セキュリティ確保”を充実させることが大前提だ。

 “つながる価値”を提供するネットワーク機器ベンダーの中で、先進技術をいち早く製品に投入するアライドテレシス。同社は2019年5月28日、東京都内でプライベートイベント「Exchangeカンファレンス2019」を開催し、次世代ネットワークの最新技術を披露した。本稿では同イベントの講演内容をダイジェストでお届けするとともに、アライドテレシスが製造業での利用に太鼓判を押す、“手離れの良い”無線LAN技術「AWC-SC」に迫る。

Exchangeカンファレンス2019の会場風景

“つながる”ことは必定、セキュリティ対策を真剣に検討せよ

 基調講演は東京大学 大学院 情報理工学系研究科で教授を務める江崎浩氏が「Society5.0時代の産業サイバーセキュリティ」をテーマに登壇した。江崎氏はSociety5.0について、モノがデータに先立つこれまでの“フィジカルファースト”な時代から、データがモノへプリントアウトされる“サイバーファースト”な時代に進化することであると説明する。

 ゆえにSociety5.0時代の企業は、「各種デバイスやデータを相互に“つなげる”ことを迅速かつ最優先に行うべきだ」と江崎氏は指摘。その上で、「どのようにして安全につなげるかを考える必要がある」(江崎氏)として、システムの設計や企画段階からセキュリティを検討するように提言した。

 続いて、一般社団法人 重要生活機器連携セキュリティ協議会(CCDS)代表理事の荻野司氏が「IoT機器・サービスへの脅威の動向と対策のポイント 〜ハッキングトレーニングから学ぶ攻撃者の視点〜」について特別講演を行った。荻野氏は生活機器へのハッキング事例として、2015年に行われた車載LANに対する遠隔侵入実験などを説明。同実験では攻撃者がモバイルネットワーク経由でクルマのブレーキや変速、ステアリングに干渉できることを証明した。この結果、自動車メーカーはハッキング対策として140万台のリコールに追い込まれ、巨額の費用負担が発生した。

 荻野氏は、「既知の脆弱性を残したまま製品を開発、販売した結果、ハッキング被害が発生した場合にはメーカー責任が問われる時代となった」と指摘。CCDSが提唱する「IoT分野共通セキュリティ要件ガイドライン」などを参照し、開発ライフサイクルを通じてセキュリティ・バイ・デザインなモノづくりを行うように呼び掛けた。

“つながる”時代の課題、アライドテレシスはどう解決するか

 では、これらの“どのようにしてセキュリティを確保するか”“どのようにしてつなげるか”といった課題について、アライドテレシスはどのような打ち手を持つのか。同イベントでは、セキュリティと無線LANソリューションの両面から提案を行った。

 1つ目の要であるセキュリティに対する取り組みを説明したのは、同社でサイバーセキュリティDevops本部 本部長を務める中島豊氏だ。中島氏はセキュリティ対策を組織、個人といった人的領域とIT・OT(制御技術)システム領域の両方で実施すべきと語る。

 人的領域ではセキュリティ防災訓練ツール「DECIDE Platform」を活用し、インシデントが発生した不測の事態に備え、正しい判断や復旧対応を演習するよう提案した。また、セキュリティリスクが顕在化しつつあるOTシステムでは、ルーターやイーサネットスイッチ、SCADAへのホワイトリスト制御を導入することや、不正被害や脆弱性を抱える端末について迅速な特定と遮断を支援するソリューションを適用することが重要と訴えた。

アライドテレシスの佐藤誠一郎氏

 もう一方の要である無線LANソリューションについては、同社でマーケティング統括本部 統括本部長を務める佐藤誠一郎氏が説明を行った。講演の冒頭で、佐藤氏はネットワーク運用保守業務について、コストや工数の削減のみならず業務そのものを代行するサービスが求められていると説明し、アライドテレシスがインテントベース・マネージメント(ユーザーの意図を読み取り、最適なネットワークを構築する)技術「AMF」を磨いてきたと強調した。

 2013年に登場したAMFは当初、Allied Telesis Management Frameworkの頭文字を取り、ネットワークの一元管理や自動構築、復旧を行うツールだった。そして、2019年にさらなる機能拡張を果たしたAMFは、Artificial Intelligence Management FrameworkとAI(人工知能)を冠した頭字語に改められた。同機能では、有線/無線、WAN/LANに関わらずネットワークの見える化を提供し、ネットワークで発生した問題の特定と対策を講じやすくした他、ユーザーの意図をGUI上に入力するとその意図に沿った運用を自動代行する機能も持つ。佐藤氏は「AMFはネットワーク保守運用業務そのものを代行し、コストを0にする存在だ」と胸を張る。

アライドテレシスの独自技術「AWC-SC」、無線LANで位置測位も簡単に

 また、同講演では独自の無線LAN技術として「AWC-SC(Autonomous Wave Control Smart Connect)」が紹介された。同技術の基盤となるAWCは、同社と京都大学が2017年に共同開発した無線LAN環境の構築、維持技術である。従来の無線アクセスポイントの追加および保守業務は、専門知識とサイトサーベイや電波調整などの煩雑な作業を必要としていたが、AWCではアクセスポイントが協調して自律的にこれら調整を行う。無線LAN環境を専任者や煩雑な作業なしに構築、保守できることがメリットだ。

 また、2018年には単一チャンネルによるローミングレス化と高速無線通信を両立させた「AWC-CB(Channel Blanket)」を発表するなど、工場のようなミッションクリティカルな環境においても活用できる信頼性の高い無線LAN技術を打ち出してきた。その一方で、佐藤氏は「有線と比べて無線LAN環境の構築にはまだ手間がかかる、手離れが悪いなど複数の課題があった」と振り返り、「電源を入れるだけで無線LAN環境が構築できる技術」としてAWC-SCを開発したとする。

AWC-SCの特徴(クリックで拡大) 出典:アライドテレシス

 AWC-SCの特徴は、無線バックホールによってアクセスポイント間の配線工事を不要としたこと、そして同技術によって端末位置を可視化することの2点にある。佐藤氏は、同技術の活用により無線LAN環境の新設作業工数が10分の1まで削減できるとし、「ダムハブと同じ使い勝手を実現した」と自信を見せる。また、端末位置の可視化については「京都大学と共同研究した新技術により、アクセスポイントの厳密な位置情報は不要で、かつ設置後に位置がズレても問題ない。通常の業務で使う無線LAN環境を整備しつつ、端末位置の見える化も実現する」とメリットを説明した。

 AWC-SCを工場や倉庫に導入した場合、無人搬送車(AGV)など移動機器の稼働管理や動線記録が低コストで実現できるという。また、同技術では一部のアクセスポイントに障害が発生した場合に自動でネットワークトポロジーを再構成するため、製造業の現場に求められる冗長性や堅ろう性を有した無線LAN環境も容易に構築可能だ。

AWC-SCの導入イメージ(クリックで拡大) 出典:アライドテレシス

 AWC-SCは製造業の現場ニーズに合致した無線LANを気軽に新設、運用することを叶える頼もしい技術だろう。同技術の利用ライセンスは2019年9月から提供開始される予定だ。

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提供:アライドテレシス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年7月23日