「第8回 IoT/M2M展 春」に出展した、組み込みソフトウェア大手ベンダーのイーソル。6つのゾーンで展開した同社の展示の中から、「Platform & Security」ゾーンを中心に紹介する。
組み込みソフトウェアの大手ベンダーとして知られるイーソルが、2019年4月10〜12日にかけて東京ビッグサイトで開催された「第8回 IoT/M2M展 春」に出展。「IoTの安全・安心と高機能化を支える組込みプラットフォーム」をテーマに、「Platform & Security」「Automotive」「Industrial IoT」「Robotics」「Cloud」「Test Platform」という6つのゾーンで展示を行った。これらの中から、同社の事業戦略とも連動する「Platform & Security」を中心に注目を集めた展示内容を紹介しよう。
イーソルの製品で最も良く知られているのはリアルタイムOSの「eT-Kernel」と「eMCOS」だろう。2005年にリリースしたTRONベースのeT-Kernelは、民生用機器や産業機器、車載機器など多種多様な組み込みシステムに幅広く採用されている。2012年に発表したeMCOSは、メニーコアにも対応する分散コンピューティング向けリアルタイムOSであり、AI(人工知能)や自動運転、ロボット、医療などさまざまな分野でその先進的な機能活用が期待されている。
これらのリアルタイムOSを中心とする組み込みプラットフォームを展開してきたイーソルだが、組み込み機器がIoT(モノのインターネット)化することによって、さらに多くの機能が求められるようになっている。「Platform & Security」ゾーンでは、イーソルの組み込みプラットフォームによって組み込み機器の高機能化を実現しつつ、さまざまなパートナー企業のセキュリティソリューションをシームレスにつなぐことでIoT時代の安全・安心を確保できることが示された。
同ゾーンの中心に展示されていたのが、eMCOSを用いた自動運転/自律制御システム開発ソリューション「ROS on eMCOS」だ。自動運転システムや自律制御ロボットの開発などに広く活用されているROS/ROS 2は、UbuntuなどのLinux上で動かすのが一般的だが、ROS on eMCOSではリアルタイムOSであるeMCOS上で動作する。さらに今回の展示では、ザイリンクスのプログラマブルSoC「Zynq UltraScale+ MPSoC(以下、MPSoC)」を2個搭載するアヴネット製開発ボード「UltraZ AD」を用いて、一方のMPSoCでカメラによる画像認識を、もう一方のMPSoCで自律移動の制御を行い、2チップ間で高速バス通信を行うシステムを構築した。ROSを含めて、これら2つのMPSoC上で動作するさまざまなアプリケーションはeMCOS上で全て動作している。また、信頼性の異なるアプリケーションが混在することになるが、eMCOSはこれらを完全に分離できるので“安全”なシステムを構築できるというわけだ。
同じく組み込み機器向けのシステム分離ソリューションとして紹介したのが、Virtual Open Systemsの「VOSySmonitor」だ。Armのセキュリティ技術「TrustZone」を使って、ハイパーバイザーを使わずにリアルタイムOSとLinuxなどの汎用OSを分離できるシステムパーティショナーであり、2019年2月にeMCOSの対応を発表したばかり。これにより、Armベースのプロセッサを使う組み込み機器であれば、既存のLinuxなどを活用したシステムと、リアルタイム性が求められる制御システムを容易に分離できるようになる。
“安全”に加えて、“安心”を実現するためのセキュリティについては、パートナーであるIrdetoとKaramba Securityのソリューションとの連携を披露した。Irdetoの「Secure Environment」は、実行ファイルや実行イメージの改ざん検知だけでなく、改ざんの自己修復を行う「セルフリペア機能」も備えていることが最大の特徴。Karamba Securityの車載セキュリティソリューション「Carwall」は、あらかじめ決められたパスでしかECUの制御を実行できないようにするもので、コードインジェクション攻撃などに有効だ。
イーソルはIoT時代の組み込みプラットフォームベンダーとして、顧客が高機能化と安全・安心を実現するために必要なものを、自社だけでなくパートナーの製品もワンストップで提供していく構えである。
「Industrial IoT」ゾーンでは、スマート工場化で注目を集めるOPC UAのサーバ機能を産業用制御システム側に組み込むためのソリューションを披露した。OPC UAは、さまざまな規格が混在する産業用ネットワークと連携し、情報の見える化や遠隔制御などを可能にするネットワーク技術だ。
展示では、このOPC UAのサーバ機能を既存のコントローラーに追加し、遠隔で制御を変更するデモを行った。アイエイアイ(IAI)製のコントローラーと、eT-Kernel上にOPC UAのサーバ機能を組み込んだ開発ボードを連携させ、EtherCATで接続されたXYステージの動作パターンを遠隔から変更する内容になっている。ソフトウェア開発キットの開発も進んでおり、イーソルのリアルタイムOSを採用する産業用制御システムの顧客から強い引き合いがあるという。
「Automotive」ゾーンでは、イーソルが出資するオーバスのAUTOSAR準拠車載ソフトウェアプラットフォーム「AUBIST」を用いた、自動運転車による無人宅配システムのデモを披露した。自動運転車の制御はROSと「AUBIST Adaptive Platform」で、宅配する品物が入っているトランクの開閉制御は「AUBIST Classic Platform」で行う。自動運転車の到着を知らされたユーザーは、宅配業者から送られたデジタルキーを使って、トランクを開けて荷物を取り出すという内容になっている。
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提供:イーソル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年6月13日