金型レス時代の到来か、3Dプリンターは試作だけではなく最終製品生産でも活躍リコーによる3Dプリンターソリューション

過去にメイカーズムーブメントを経ながら高機能化と低価格化が進んだ3Dプリンター。かつて大きな課題といわれた材料や生産性の課題は日進月歩で改善されてきており、製造業では従来の試作用途(ラピッドプロトタイピング)の他、最終製品への活用ニーズが高まりつつある。自らも3Dプリンターユーザーであるリコーが、メーカーならではの設計・製造現場での経験や視点を生かした独自の3Dプリンターソリューションを展開している。

» 2019年03月06日 10時00分 公開
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 2010年代前半に巻き起こったメイカーズムーブメントと共に低価格の3Dプリンターが普及したことにより、個人による試作・製品開発は大きな転換期を迎えた。Makerと呼ばれる個人のクリエーターや小規模なスタートアップ企業と、アイデアを素早く形にできる3Dプリンターの相性は非常によく、小規模な工房だけでなく個人の作業場にも広く導入されたのは周知の事実だろう。

 それは同時にプロフェッショナルな製造業の現場にも大きな変化を生むきっかけとなった。それまで限られた技術者が高額な3Dプリンターを試作に使用していた状況から、デザイナーや設計者がデスクトップ型の3Dプリンターを使うようになり、試作のサイクルを短縮する試みが始まった。当初は精度の問題や素材が限られていたことから、用途は限定的だったが、さまざまな素材開発と高精度な3Dプリンター開発が進んだことで活用できるシーンも広がった。

>>参考:3Dプリンター活用の最前線

今や手法や材料が多彩になった3Dプリンター。活用シーンもぐっと広まる。

 特にハイエンドな価格帯の3Dプリンターは新規参入するメーカーと既存の大手メーカーがしのぎを削り、精度と強度だけでなく後処理のしやすさやオートメーション化といった付加価値を訴求するなど、ユーザーにとって使いやすく、選択肢が豊富な状況にある。

 さらに自動車業界や航空機業界などでは、特注部品と3Dプリンターを活用したアディティブ・マニュファクチャリング(AM:付加製造)との親和性が非常に高く、最終部品の製造に3Dプリントを導入する動きも加速している。

 アディティブ・マニュファクチャリングでは金型を必要としないため、初期コストが大幅に削減できることに加え、切削加工では制約のあった形状でも自由に造形できるといったアドバンテージがある。こうした事例は海外の大手自動車メーカーが中心だが今後は日本国内でも多くの業界で従来型の金型による大量生産と並行して、3Dプリンターを活用した少量生産の活用が見込まれる。

 さらに2019年1月9日に中小企業庁が下請中小企業振興法の振興基準改正を発表。金型管理に関する規定が強化され、企業の金型管理の負担が増えることから、今後は長期間の供給を求められるアフターパーツや生産数が限られている部品などを中心に金型レスによる最終製品生産の需要に拍車が掛かるとみられる。

最終製品の製造手法として普及する3Dプリント

 安価な3Dプリンターが登場した当初にも「金型が不要になるのでは」という言説がまことしやかにささやかれた時期もあったが、現時点では目的と予算に応じて生産方法を選ぶという形が正しい見方だ。

 つまり、大量生産に適した射出成形や鋳造・鍛造といった型を使った工法と、型のコストメリットが出にくい生産量であれば切削加工という主流は未だに変わらないが、この2つの製造方法では難しい形状の少量品は3Dプリントやアディティブ・マニュファクチャリングを選ぶという流れが今後多くの業界で加速していくだろう。

 その際に重要なのは適切な製造手法をアップデートしていく環境作りだ。何もプランがない中で高額な3Dプリンターを導入したからといって、すぐに劇的に環境が変わるわけではない。むしろ、うまく使いこなすことができずに宝の持ち腐れになる可能性もある。

 まずは3Dプリンターに熟知したスタッフに相談できるサービスビューローを利用し、必要に応じて3Dプリントを活用しながら知見を蓄積することが重要だ。コスト削減や生産性向上など新たな付加価値が生み出せるという結果が出れば、自社の開発・生産設備に3Dプリンターを導入するハードルも大きく下がるだろう。

 データを送れば最短で納品されるオンラインサービスも活発だが、中・長期的に3Dプリンターを活用したい場合は技術者に直接相談できる、あるいは販売代理店機能を持つサービスビューローを活用するのも有効だ。

 既存の製造工法から置き換えた場合のコストパフォーマンスやリードタイムの削減度合いのシミュレーションなど、自社に適したプリンターの選定からトライアルまで幅広くサポートできるサービスビューローであれば、複数の3Dプリンターの導入プランが検討可能だ。

メーカーならではの強みを生かすリコーの3Dプリンター出力サービス

 複合機・コピー機やデジタルカメラなどのメーカーであり、3Dプリンターの販売や出力サービスまで手掛けるリコーは自社の試作開発の現場や生産製造の現場で3Dプリンターを活用してきたユーザーであると同時に、顧客が抱える課題に3Dプリントというソリューションで応えている企業でもある。

>>リコー3Dプリンターソリューションサービスの特徴

リコー 新横浜事業所内にある「RICOH Rapid Fab」

 オンラインと対面の両方で3Dプリンターの出力を受け付けるだけでなく、3Dプリンターの販売や生産性改善のコンサルティングまでカバーする、まさにプロフェッショナル向けのサービスだ。

>>リコー 3Dプリンター出力サービス詳細はこちら

 リコーが3Dプリンター出力サービスを開始したのは2015年だが、それ以前から製造業を中心とした顧客から、3Dプリンターに関する相談が多く寄せられていたという。

 自社の設計・製造現場で10年以上3Dプリンターを活用してきたことから、同社には試作や設計の現場での知見が多く蓄積されてきた。従来の開発や製造のコンサルティングや法人向け機器の販売を行っていたリコーでは、3Dプリンター出力サービス開始当初から製造業を熟知したスタッフを擁し、顧客と同じ目線での提案を行ってきた。

 サービス開始当初は試作での相談が中心だったが、その頃からモックだけでなく設計が反映された試作品での問い合わせもあり、早さだけでなく高い精度を求める需要が高く、光造形を中心としたハイエンドな機種で対応してきたという。

 ここ数年は最終製品の製造に関する相談も増加しているが、3Dプリンターだからこそできる造形はもちろん、従来工法でも製造可能だがQCDに問題があるといった理由で3Dプリントを選ぶケースが増えている。

 3Dプリンターを試作だけではなく、付加価値を高める新たな製造手法の1つとして利用する事例も着実に増えているのだ。

 こうして3Dプリンターの特性を理解するユーザーが増えたことに加えて、海外を中心にさまざまな開発事例が報道されることも増えたことで、これまで解決できなかった課題を3Dプリントに求めるケースも増えている。

 さらに最近ではHP Jet Fusion 3D 4200のような生産性が高く、最終製品にも活用できる3Dプリンターが登場したことで、顧客への提案の幅も大きく広がっているとリコーの担当者は力説する。リコーでも取り扱っているHP Jet Fusion 3D 4200は独自の造形技術により、従来の3D造形方式と比べ、最大10倍の速度で高精度な造形が可能といわれている。

リコーが所有する「HP Jet Fusion 3D 4200」

 また、HP Jet Fusion 3D 4200は従来の粉末造形機に比べて、材料コストを下げ、かつ一度使った材料を再利用できる“リサイクル率”も向上したため、大幅なランニングコストの削減に成功。さらに同じエリア内で造形できる“充填率”が向上したことで一度に造形できるパーツ数が増やすことが可能になり生産性の向上も実現している。これによって、これまでコストと生産性がボトルネックとなって3Dプリントをちゅうちょしていた顧客からの相談も増え、実際に採用につながっている。

>>HP Jet Fusion 3D 4200導入企業事例はこちら

 リコーでは3Dプリンター出力サービスに自社の複合機やカメラの設計現場で3Dプリンターを活用していたエンジニアが顧客をサポートしている。オンラインに特化したサービスと異なり、担当者が顧客と直接会話をし、造形物の利用用途や条件などの、詳細ヒアリングに基づいて最適な提案を行うことが特徴だ。

 リコーでは、適切な素材・造形方法の提案から後加工の提案を行うだけでなく、データ作成までサポート可能なので、3Dプリントに関するノウハウが無い場合でも気軽に相談できる。実際に製造業以外からの問い合わせも多く、マンションの修繕などの事例も生まれている。

 また、ある程度3Dプリンターを活用しているユーザーに対しては素材に応じたクリアランスの確保や3Dプリントの特性を意識した設計データのアドバイスを熟練の技術者がサポートするといった点も心強いだろう。

 このようなきめ細かな対応が評価され、3Dプリントをフル活用する顧客から、初めて導入する顧客まで利用者の満足度は非常に高いという。納品後に全ユーザーに対して行う満足度調査でも90%以上の利用者がリコーのサービスに満足していると回答している。

 更にリコーでは3Dプリンター出力サービスだけでなく、3Dプリンターの販売や導入支援のコンサルティングも行っている。出力サービスを活用して3Dプリントによる開発・生産体制を構築できてから、3Dプリンターを導入して最適な内製環境を構築するという流れを推奨している。

 従来工法と3Dプリントとの共存で生産性を改善するには、3Dプリンター単体で評価するのではなく、業務工程全体を分析した上で最適な手法を検討することがベストだといえる。その観点ではメーカーとしての知見があり、幅広い造形方式とメーカーをサポートしているリコーはベストなパートナーとなり得るだろう。

進化し続ける3Dプリンターによる開発事例とは

 高品質な素材と高精度なプリンターの充実により、最終製品に3Dプリンターを採用する企業は増加傾向だ。また、高品質でありながらコストパフォーマンスの面でも優れたプリンターを活用することで、これまで高額なコストでちゅうちょしていたユーザーも3Dプリントを導入する事例も増えた。リコーにも日々さまざまな相談が寄せられ、幅広い業界での事例も生まれているということだ。

 幅広いサービスラインアップと、きめ細かな対応で顧客を支援するリコーの3Dプリンター出力サービスは、業界・シーンを問わず開発現場の強力なパートナーと言えよう。

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 次回はリコーの3Dプリンター出力サービスの活用事例を紹介すると共に、今後3Dプリントがもたらす開発・製造現場の可能性について探っていく。

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提供:株式会社リコー
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2018年4月5日