IoTやAI、ロボットなどを活用したスマートファクトリー化への取り組みが広がりを見せている。ただ、工場内でのIoT活用については、多くの製造現場担当者が難しさを感じているのが現状である。こうした難しさに対し解決策を示すため、ネットワンシステムズは「ひろしまAI・IoT進化型ロボット展示会2018」に出展し、セミナー「スマートファクトリー実現に向けた工場向けIoTソリューションの紹介」を実施した。同セミナーの内容を紹介する。
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などを活用し、工場全体の生産性や柔軟性を高めるスマートファクトリー化への取り組みが加速している。人手不足への対応や、消費者ニーズの多様化に伴う変種変量生産への対応などを進めるには、従来の人の力を中心とした取り組みでは限界が見えつつあるからである。
ただ、これらの先進技術を活用するとしても「難しい」と感じる製造現場担当者が多いのではないだろうか。そもそも工場はデータ連携を想定したシステム構築がなされておらず、IoTやAIなどのIT関連技術を担当する部門や技術者などが製造現場にはいない場合が多いからである。
こうした課題を解決すべく、ネットワンシステムズは2018年12月12〜13日に広島市内で開催された「ひろしまAI・IoT進化型ロボット展示会2018」に出展。同社の持つ工場IoTソリューションを紹介した他、セミナー「スマートファクトリー実現に向けた工場向けIoTソリューションの紹介」を実施し、スマートファクトリー実現に向けたポイントについて紹介した。本稿ではネットワンシステムズ 市場開発本部 ICT戦略支援部 市場戦略支援第2チーム IoT事業推進担当の坂口功氏が講演した同セミナーの内容を紹介する。
製造業を取り巻く環境は大きな変化の最中にあり、従来にない柔軟性や効率性を求められている。これらを実現するためには、IoTやAIなどを活用したスマートファクトリー化は必須となる。しかし、製造現場においては、スマートファクトリー化の前提となる各システムのデータ連携についてでさえも、難しいという状況がある。
そもそも工場に関係する製造業のシステムを大きく分けると、オフィスなどで活用されるOAシステムと、製造現場で活用するFAシステムに分けられる。さらに、FAシステムは、制御系ネットワークである制御システムと、生産管理システムに分類されている。このOAシステムと生産管理システムについては主に情報システム部門(IT部門)が担当し、一方の制御システムについては生産技術部(OT部門)が担当しており、これらを「つなぎたくてもつなげられない」という状況が生まれている。
さらに制御システムについては、工場ごとや企業ごと、使用している機器やシステムごとなどの個別対応となっている場合がほとんどで、さまざまなシステムが乱立している。制御システム全体のガイドラインなどが存在せず、ネットワーク接続なども想定されていないため、サポート切れOSを使用した機器なども数多く存在する。決して全体管理が最適に行えているとは言い難い状況である。
こうした状況であるため、IT部門とOT部門の間には大きな認識の違いが存在し、これらのシステムをつなぐといってもそれぞれの目指すポイントが異なってしまっている場合が多い。
例えば、生産技術部門でいえば、現場の見える化やトレーサビリティー、兆候管理などを行いたいというニーズがある。ただこれらに対し生産技術部門は「既存の仕組みや機器への影響をできる限り小さくし、その上で可能な限り早く成果を生み出したいと考えています。その意味でIT部門が提示するセキュリティガイドラインなどは、到底受け入れられないと捉える人が多いというのが現状です」と坂口氏は生産技術部門の考えを分析する。
一方でIT部門は「全体最適を実現できる基盤と標準ガイドライン、サイバー攻撃対策などが必須だと考えており、生産現場の実態が分からない中、すぐ既存のOAシステムとつなぐのは無理だという考え方です」(坂口氏)とIT部門の考え方を説明する。
ただ、ITとOTのシステムが分断している状態ではスマートファクトリー化は実現できない。そこで、これらの間を取り持つユニークな立ち位置で存在感を高めているのが、ネットワンシステムズである。ネットワンシステムズはネットワークの専門企業として、30年以上OAのネットワークシステム構築に取り組んできた。一方で、工場向けネットワークにも2015年から取り組みを本格化し、さまざまな導入実績を築いている。
例えば、工場内ネットワークのグランドデザイン策定や、新工場への工場LAN、産業用ロボットの状態管理と予知保全システムなど、さまざまな構築実績を積み上げてきている。「これらの実績から、IT部門とOT部門におけるそれぞれの要望の間を取り持ち、中立的な立場でこれらを結ぶことができます」と坂口氏はネットワンシステムズの強みについて語る。
これらの実績を背景に生み出されたのが各種のIIoT(産業用IoT)ソリューションである。「多くの製造業に求められるスマートファクトリー化に向けた典型的ソリューションをまとめています。より実践的な価値が提供できます」と坂口氏は述べる。
同社の具体的なソリューションの1つが「IIoTネットワークソリューション」だ。同ソリューションは、OT固有の特性を踏まえた上でITとOTのシステム連携を実現するネットワークソリューションである。生産技術部門や保全部門が簡単に運用できるネットワークを提供する。
坂口氏は「まずは、IT部門とOT部門それぞれにヒアリングをし、グランドデザインを策定します。これを基にネットワークを構築する順番で取り組みます」と手順について語っている。
これらのネットワーク構築により取得できるようになったデータを活用するためには、活用可能な形に整理、整形することが必要になる。そのためのデータ統合基盤構築を支援するのが「IIoTデータ統合基盤ソリューション」である。設備メーカーごとにバラバラなログフォーマットを整形するのに必要なデータ抽出、整理、整形のノウハウなどを活用する他、データの欠損や再送などで発生する分析の外れ値などを最小化する仕組みなども取り入れている。
これらのデータハンドリングを行うシスコシステムズとの協力も推進。データの取得から処理、移動までを簡単に行えるデータハンドリングツール「Cisco Kinetic」の活用なども組み合わせて、それぞれの製造業に最適なデータ統合基盤を構築できるという。
ただ、ネットワーク化を進めれば、セキュリティリスクも高まることになる。データを取得し、価値を生み出せたとしてもそれが奪われたり、破壊されたりしては意味がないためである。そこでネットワンシステムズでは「IIoTセキュリティソリューション」を用意する。現状を可視化しながらゾーンごとに必要な機能を提供する全体最適ソリューションである。
この可視化を実現するツールとして、シスコシステムズの「Cisco Industrial Network Director(IND)」を展開する。これは指定のネットワーク接続機器を簡単に管理、制御できる見える化ツールであり、IT部門外の運用担当者でも簡単に活用できるユーザーインタフェースである点が特徴である。
坂口氏は「工場内のネットワーク機器全体を把握できていない場合も多いが、そもそも工場にはセキュリティ担当者が不在の場合も多い。簡単に産業用設備を含め、ネットワーク全体を把握し管理できるツールが求められている」と資産管理の重要性について述べている。
ただ、これらの簡略化したツールでも、製造現場にとっては負荷が大きいと考える場合も多いだろう。そうしたニーズに対応するためにネットワンシステムズが提案しているのが、外部からのアクセスを物理的にコントロールする「NOS-BOX見張り盤」である。
「NOS-BOX見張り盤」は、「物理的な鍵」による手動操作で、外部からの通信の許可や遮断を実現できるというものだ。制御盤型のパッケージで、工場内に簡単に設置可能。見やすいランプで通信状態なども可視化する。「設備業者などメンテナンスのために外部から工場への通信を利用するときだけ、鍵により通信を開き、そうでない場合には閉じるというような運用が可能である。物理的に明確に見やすい形としていることが特徴だ」と坂口氏は述べている。
スマートファクトリーの実現に向けては数多くの技術や知見が必要となり、1社で実現することは難しい。そのために“共創”などの考え方が重視されている。ただ、製造業にとって見誤ってはならないのは、スマートファクトリー化は目的ではなく手段であるということだ。製造業としての本質的な価値とは、製品にどういう変化を与え、どういう価値を顧客に提供できるかということである。
そういう視点に立った場合、その実現のために必要なネットワーク構築やデータ基盤整備、セキュリティ対策については、製造業の本質的な価値からは離れており、直接的な協調領域だと割り切ることも可能である。本質的な価値への最短ルートを歩むと考えれば、協調領域については外部パートナーに頼るというのも“現実的な解”だといえる。その際には、30年近くの歴史の中でネットワーク機器の構築やメンテナンスまで含めて数多くの実績を持つネットワンシステムズは、有望なパートナーの候補となり得るのではないだろうか。
現場に散在する設備をつなぎ、IoTデータを一箇所に集めてAPPに分配する生産IoT基盤のご紹介
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提供:ネットワンシステムズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年2月20日