製造業がIoTを導入したいと思っても、その多大な手間とコストから立ち止まってしまうことも少なくない。そうした声を受け、産業機械へのIoT導入を最小限の負荷で実現するIoTクラウドサービスとしてユニアデックスが開発したのが「AirProduct Machine」だ。
製造業におけるIoT(モノのインターネット)への取り組みは拡大の一途をたどっているといわれるが、実際には企業ごとに大きな温度差があるのが現実だ。IoTを導入したいと検討しながらも、「具体的な活用方法が分からない」「得られるベネフィットが明確でない」「そもそも何ができるのかが分からない」など、最初の入口から壁にぶつかり立ち止まっている企業も少なくない。
こうした企業に寄り添い、よりスムーズにIoTに踏み出すことができるソリューションを提供しているのがユニアデックスだ。同社 DXビジネス創生本部 IoTビジネス開発統括部 サービス企画部のマネージャーを務める池田秀紀氏は、「お客さまと同じ目線に立ち、同じ気持ちになって現場を理解することから始め、一緒に粘り強く考えていくことが私たちのスタンスです」と語る。
そこで重視しているのが“シナリオ”である。目の前に見えている課題に対する単なるポイントソリューションとしてIoTを導入したのでは、それ以上の発展はない。そうではなくIoTによってどんな新たな価値が生み出されるのか、自社ビジネスのいかなる進化が実現するのかと、イメージを膨らませていくのである。これによってはじめて企業は、自社が目指すべきIoTの活用法を見いだすことができる。
こうしたシナリオ策定の場となっているのが、全50社(2018年8月30日時点)の共創パートナーが参画する「IoTエコシステムラボ」である。共創パートナーとその顧客がこのラボに集い、IoTのデモシナリオを実際に体験し、それをもとにIoTの活用イメージを膨らませ、仮説立案、実証実験へと進み、新たな価値創造を実現していくのだ。
そしてこれらの営みの中から、これからIoTを始めようとする多くの製造業にとって、シナリオは異なれども共通的に必要となる機能も導き出されてきた。それを汎用的なプラットフォームとして具現化し、2018年1月よりサービス提供を開始したのが、「AirProduct Machine(エアープロダクトマシン)」である。
AirProduct Machineの特徴を簡単に言うと「工作機械や医療機器など、さまざまな産業用機械のデータ収集・蓄積、監視・通知、状態の可視化などを行うIoTクラウドサービス」となる。
AirProduct Machineを利用することにより、将来的に製造業をサービス主体のビジネスモデルに転換していくことも視野に入れつつ、遠隔地に設置された産業用機械の稼働状況のリアルタイムな把握を実現し、これらの課題解決を図っていくことができる。
機械メーカーにとって、取得したデータをどうやってクラウドに上げるのか、どのように蓄積・管理するのか、いかにしてアプリケーションから参照して見える化するのかといったシステム構築がネックになることが多い。ユニアデックス DXビジネス創生本部 IoTビジネス開発統括部 サービス企画部 チーフスペシャリストの藤井茂樹氏は「面倒なIT部分は全てAirProduct Machine側でサポートされるため、お客さまはユーザーに提供するサービスの企画・検討や仕組みづくりに専念することができます」と強調する。
AirProduct Machineは、産業用機械のIoTシステムに求められるIT部分のサービスを汎用化した上で8つの機能に分けて提供している。これらの機能により、データ収集・蓄積だけでなく、デバイスやユーザーの管理、遠隔操作が可能になり、またWebAPIを活用すれば顧客の業務、サービスに応じた個別アプリケーションとの連携も行える。
例えば、AirProduct Machineのユースケースの1つに遠隔監視がある。産業用機械に発生した異常はユーザー企業の業務停止に直結するため、機械メーカーにはダウンタイムを最小限に短縮するための的確なメンテナンスや迅速な故障対応などが厳しく求められている。ただ、その作業は往々にして“都度対応”となり、必要な対価や経費の回収も困難になりがちで、収益を圧迫する要因ともなっている。
こういった課題に対して、AirProduct Machineを活用すれば、収集したデータから障害の内容や訪問対応の必要性をより正確に把握できるようになる。不要なエンジニアの派遣や無駄な保守部品の手配を防止するなど、サービスの運用面でもコスト削減を実現し、ビジネスの収益改善が期待できる。
これらの汎用化された機能を実装したAirProduct Machineを利用することで得られる最大のメリットは、コスト削減だ。池田氏は「IoTシステムに必要な機能を個別のSI(システムインテグレーション)を依頼して構築した場合、最低でも数百万円の費用がかかってしまいます。これに対してAirProduct Machineであれば、10万円の初期費用と、月額10万5000円の利用料から利用することが可能です。特に最初の半年間は、トライアル期間として月額5万円で利用でき、少ないコスト負担で気軽に導入することができます」と説明する。
また、IoTシステムの導入ではトライ&エラーのアプローチが必要になる場合が多い。AirProduct Machineであれば、必要となる基本機能は開発することなく利用でき、検討しているビジネス、サービス実現に必要な開発のみに注力できる。これによって、短期に素早く改善サイクルを回していくことが可能になる。
これらのメリットからAirProduct Machineは多くの企業の目にとまり、正式リリースからまだ1年に満たないにもかかわらず、工作機械、農業機械、化学機械、医療機器などの産業用機械メーカーを中心に高い評価を得ている。
ユニアデックスはこのAirProduct Machineをどうやって実現したのだろうか。基盤となるクラウドプラットフォームに採用したのが「Microsoft Azure」だ。
世の中に数あるクラウドサービスの中から、なぜMicrosoft Azureを選んだのか。最大の理由として挙げるのがセキュリティ要件への対応である。「機械メーカーにしても、その先のユーザーにしても、機械の稼働情報をクラウドに上げることに慎重なお客さまが多くいらっしゃいます。これまでわれわれが個別のSI案件で手掛けてきた多くのIoTシステム構築でも、お客さまから必ず懸案事項として寄せられるのが『情報漏えいのリスクはないのか』という声でした。もちろんセキュリティに絶対はありえませんが、そうした中でも信頼のおけるクラウドとしてお薦めできるのがMicrosoft Azureです」と藤井氏は語る。
実際、Microsoft Azure は、ISO 27001、HIPAA、FedRAMP、SOC 1、SOC 2などの国際的な業界固有のコンプライアンス基準は言うまでもなく、オーストラリアのIRAP、英国のG-Cloud、シンガポールのMTCSなど国ごとの基準にも対応済みだ。さらには、British Standards Instituteなどのサードパーティーによる厳正な監査により、厳密なセキュリティ管理要件を満たしていることが証明されている。企業の一般データ保護規則(GDPR)対応にも考慮した設計がなされている意味からもMicrosoft Azureは、他のクラウドプロバイダーをはるかに上回る信頼性・安全性を備えているといって過言ではない。今後、AirProduct Machineはグローバル対応の強化を検討しており、そのためにも国際的なコンプライアンス基準やセキュリティ要件への対応は必須といえるだろう。
また、OT(制御技術)や組み込みシステムなどの分野でも、Windowsをはじめとするマイクロソフトのアーキテクチャやテクノロジーは浸透しており、製造業にとってマイクロソフトがなじみ深いブランドであることも大きなアドバンテージだ。「『マイクロソフトが運営しているクラウドサービスです』と説明すれば、それだけでお客さまにご納得をいただけるケースも少なくありません」と池田氏は語る。
さらにユニアデックスは、「Microsoft Azureが持つポテンシャルを徹底的に活かす」という基本方針を掲げ、AirProduct Machineの開発に臨んだという。「Microsoft Azureは『IoT Hub』をはじめ、IoTシステムを構築する上で欠かせない主要機能を全てPaaSとして取りそろえています。そこでAirProduct Machineでは、Microsoft AzureのPaaS機能のみを組み合わせる形で実現しました」と藤井氏は説明する。
IaaSを利用する場合、OSに対するセキュリティパッチ適用やアップデートも自己責任で行わなくてはならず、AirProduct Machineの運用性は大幅に低下してしまう。多様な要件を持つ製造現場に向けた、24時間365日のサービス提供に耐えられるセキュアなIoTシステムを実現する上で、Microsoft Azureの活用はまさに絶対条件だったのである。
なお、AirProduct Machineに関するユニアデックスの一連の取り組みはマイクロソフトからも高く評価され、「Microsoft Japan Partner of the Year 2018」において、Manufacturing部門のアワードを受賞したことも特筆しておきたい。
ここまでAirProduct Machineの取り組みをフォーカスしてきたが、ユニアデックスは他にも「AirFacility Aqua(エアーファシリティー アクア)」や「AirInsight Maintenance(エアーインサイト メンテナンス)」といったIoTソリューションを「Airシリーズ」のラインアップとして提供している。
AirFacility Aquaは、トイレ施設を主な対象とした施設保全IoTサービスだ。保全業務の品質向上や施設の統合的管理が求められる中、トイレ施設(個室トイレや排水ポンプなど)の稼働状況を把握することで設備稼働率や施設環境健全性を高めていく。
一方のAirInsight Maintenanceは、設備メーカーや工事・保全事業者に向けてオンラインで提供する設備点検診断サービスだ。これまで一般企業には難易度が高かった機械学習/AIを活用し、保全・診断スキルを有する作業者の人材不足といった問題にも応えていく。
実はこれらのAirシリーズも全てMicrosoft Azure上に構築されており、「今後に向けてプロダクト、インサイト、ファシリティーの各カテゴリーでさらにラインアップの拡充を図りつつ、複数のAirシリーズを柔軟に組み合わせた連携ソリューションを展開していきたいと考えています」と池田氏は語る。
また、IoTエコシステムラボの他、IoTプロジェクトの共同検証を通じてノウハウを共有する社外コミュニティーである「IoTビジネス共創ラボ」などでの活動にも積極的に取り組んでいく方針だ。藤井氏は「各種センサーやゲートウェイなど、IoTサービスの実装に必要なコンポーネントを多くのパートナーとの協業を通じて開発・調達し、お客さまのご要望に合わせて提供していきます」と語り、日本全体がIoT活用に取り組んでいく機運をさらに盛り上げたい考えだ。
顧客体験の向上を実現する手段として製造業の間で注目されるIoTだが、人材不足やセキュリティなど課題も多い。そんな中、あるクラウドサービスを利用しIoTに取り組む機械メーカーがいる。
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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2018年11月29日