VR空間で産業用ロボットを遠隔制御、匠の技も再現できる!?DMS2017 展示レポート

モーションキャプチャーシステム「OptiTrack」を展開するオプティトラック・ジャパンが開発を進めている「VR空間でのロボット制御」は、人間が行ったVR空間での加工作業を、産業用ロボットでリアルタイムかつ高精度に再現することができる。鍵になったのは、広く知られているあの3DCGソフトだった。

» 2017年07月24日 10時00分 公開
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 急激な進化を遂げつつあるVR(仮想現実)。製造業の設計プロセスにおいて遠隔地の拠点間をつないでコラボレーションしたり、自動車や不動産物件の販売店が活用したりと、プロフェッショナル向けのVRの用途も拡大しつつある。

 そんなプロフェッショナルVRで新たな活用法を提案しているのが、モーションキャプチャーシステム「OptiTrack」を展開するオプティトラック・ジャパンである。モーションキャプチャーシステムというと、コンピュータゲームの3Dキャラクターの動作を作り込んだり、アスリートの動きを分析したりと、人間の動きが対象になっているイメージが強い。しかし、OptiTrackは、リアルタイムに非接触でモーションキャプチャーできるという特性を生かし、工業計測や非接触センシング、システム制御といった幅広い分野にも利用されているのだ。

 そんな同社が開発を進めている技術が「VR空間でのロボット制御」だ。システムは、OptiTrackとモーションキャプチャー用のマーカーを取り付けた工具、モーションキャプチャーシステムとの位置同期が可能なLEDを組み込んだVRシステム、産業用ロボットなどから構成されている。ユーザーがVRのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着すると、産業用ロボットの前にある(3Dスキャナーでデジタル化された)加工対象がVRとして表示されている。そして、そのユーザーがVR空間内で工具を使ってVRの加工対象を加工すると、産業用ロボットがそれと同じ精度で動いて実在空間の加工対象をリアルタイムに加工してくれる。動きを再現する精度も0.1mmと極めて高い。

 「第28回 設計・製造ソリューション展(DMS2017)」(2017年6月21〜23日、東京ビッグサイト)では、VRシステムに「Oculus Rift」、産業用ロボットにデンソーウェーブの「VP6242」を用い、人間が手で操作する工具の動きが滑らかにVP6242に反映されるデモンストレーションを披露し、来場者の注目を集めていた。

オプティトラック・ジャパンが「DMS2017」で披露した「VR空間でのロボット制御」のデモ オプティトラック・ジャパンが「DMS2017」で披露した「VR空間でのロボット制御」のデモ。写真内のHMD装着者は、VR空間内で工具を使って加工を行っており、左上のディスプレイのような映像が見えている。そして、HMD装着者の右側にあるデンソーウェーブの産業用ロボット「VP6242」は、その工具の動きをリアルタイムかつ高精度に再現している
VR空間内でのHMD装着者の位置や工具の動きは、モーションキャプチャーシステム「OptiTrack」で捉えている VR空間内でのHMD装着者の位置や工具の動きは、モーションキャプチャーシステム「OptiTrack」で捉えている。「DMS2017」の展示ではカメラを7台使用したが「展示会場は外乱があるため多めに設置した。一般的な環境であれば3〜4台で十分だ」(オプティトラック・ジャパン)という

「Maya」の「インバースキネマティクス」機能で動きを再現

 オプティトラック・ジャパンは、前回のDMS2016でも同じコンセプトの展示を行っていた。では、この1年間で何が進化したのだろうか。同社のテクニカルディレクターを務める佐藤眞平氏は「人間の手による精緻かつ微妙な工具の動きをモーションキャプチャーして、産業用ロボットの先端部の6自由度に座標変換して高精度に制御することはかなり難しかった。ロボット制御特有の課題解決に多くの工数を費やしたが、最終形にたどり着くことは困難だった」と当時の課題を説明する。

 この課題を解決してくれたのが、オートデスクの3DCGソフトウェア「Maya」だ。Mayaは3DのCGやアニメーション、モデリングなど多岐にわたる機能を有しているが、今回重要な役割を果たしたのは「インバースキネマティクス(IK)」機能だ。この機能は、人間やロボットなどのリンク構造について、各軸の動きを自動で計算して無理のない動きを再現してくれる。人間などの骨格を滑らかに動かすことに注力してきた、Mayaの20年以上の積み重ねが背景にあるという。

 その成果となるDMS2017の展示は、VR空間に没入した人間が工具を使って加工を行うと、工具の動きをOptiTrackでモーションキャプチャーし、Mayaのインバースキネマティクス機能を介して、リアルタイムかつ高精度に産業用ロボットであるVP6242の動作に反映することができていた。

デモを正面から見ると、中央のディスプレイに産業用ロボットのCGモデルがある デモを正面から見ると、中央のディスプレイに産業用ロボットのCGモデルがある。このCGモデルは「Maya」で作成しており、「インバースキネマティクス」機能によって右側にある産業用ロボットを制御している

 オプティトラック・ジャパンは、今回展示した技術をベースとする「VR空間でのロボット制御」について正式受注を始めている。主な用途は、人間が直接行けない場所でのロボットの遠隔操縦の他、熟練した技術者による匠の技をデジタル化してそれをロボットで再現する用途なども想定。「開発した技術は、研磨や刷毛といった面の動きについても対応できる。現時点では遠隔操縦関連の要望が多いが、匠の技をデジタル化するリバースエンジニアリングの取り組みも進んでおり、今後はそれをロボットで再現する用途が出てくるのではないか」(佐藤氏)という。

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2017年8月23日