IoTでビジネス変革を起こす4つのコツIoTで成功するために

IoT(モノのインターネット)でビジネス変革を起こしたい――。製造業や流通業、農業、医療、教育など産業を問わず、IoTを活用したビジネス変革を目指す動きが加速しているが、変革に至るまでの道のりは険しい。IoTでビジネス変革を成し遂げるための“4つのコツ”を紹介する。

» 2017年06月22日 10時00分 公開
[PR/MONOist]
PR

IoT×AIでビジネス変革に貢献する菱洋エレクトロに聞く

 IoT(モノのインターネット)でイノベーションを起こしたい――。

 あらゆるモノやセンサーをネットワークにつなぎ、データを収集し、そのデータを基にビジネスを変革する。こうしたIoTの世界が現実のものになりつつある中、製造業や流通業、農業、医療、教育など産業を問わず、IoTを活用したビジネス変革を目指す動きが加速している。

 しかし、IoTでのビジネス変革は、決してたやすいことではない。どこからIoT構築に手を付ければよいのか、収集したデータをどう活用すればよいのか。そもそもIoTで解決しようとしているビジネス課題は、IoTで解決できるものなのか――。IoTの構築には、お金も時間も掛かる。多くの経営資源を投じてIoTを構築したものの、期待した効果は得られないばかりか、経営状況を悪化させてしまうというような状況に陥ることもあり得るだろう。

 IoTでビジネス変革を起こしたいと思う一方で、どこから手を付けてよいのか、IoTで本当に課題は解決できるのかといった悩みから、変革への一歩を踏み出せずにいる企業も多いのが現状だ。

 「IoTによるビジネス変革で、新たな収益モデルを手に入れるなど大きなゲインを得るチャンスは、今しかない。二の足を踏んでいる暇はない」と語るのは、菱洋エレクトロでIoT営業本部IoT推進部長を務める斉藤岳夫氏だ。では、どうすれば、IoTでビジネス変革が実現できるのか――。斉藤氏ならびに同社IoT営業本部営業企画部長を務める横山孝徳氏に聞いた。


フェーズ0:計画フェーズ 〜 本質を突いた課題認識に基づくKPI設定

 まず斉藤氏は、製造業をはじめ、鉄道、建設、医療、小売り流通などさまざまな業種に対し、IoTによるビジネス変革提案、IoTシステムの導入してきた経験から「経営課題を的確に認識し、実現したい目標、KPI(重要業績評価指標)を的確に設定することが最も重要だ」と言い切る。

計画フェーズの実施項目例

 「IoTが注目され始めた2年ほど前に比べ、より具体的にIoTで実現したいことを明確に持つ企業は増えてきている。売り上げを伸ばしたい、収益を改善させたい、ビジネスモデルを変えたい、コスト改善したい、歩留まりを上げたい、効率化を図りたいなど目的はさまざまだ。ただ、そうした目標が、経営課題に則したものでないことは多い。そもそも、経営層と現場の課題認識にギャップがあり、経営層の考えている経営課題が本質を突いていないことは少なくない」と指摘する。

 例えば、ある電気設備工事会社から「労働人口の減少を見据え、IoTで工事効率を高めたい」との相談が菱洋エレクトロに寄せられたという。しかし、斉藤氏らが調査に入ると、この会社は古くからICTの利活用に積極的で、工事現場はかなり効率化され、IoT導入で期待できる省人化余地はあまり残されていなかった。「この会社にとって、現場の省人化は課題ではあるものの、それよりももっと大きな課題は工事以外の収益源を見いだすことだった」と分析。斉藤氏らは、このことを会社に伝えるとともに、IoT/ICTを活用した工事以外部分でのビジネス創出プランを提案している最中だ。

菱洋エレクトロが電気設備工事会社に提示したビジネス創出プラン

 横山氏は「IoTは、全ての課題を解決できるわけではない。IoTありきで、KPIを決めるのは危険」と警鐘を鳴らす。「ケースによるが、われわれがIoT導入を提案するまでには、徹底的な現場観察を通じた課題の洗い出しと解決策の仮説、実証実験で業務の各プロセスを反復検証しながら“ありたい姿”へブラッシュアップしていく“デザイン・シンキング”に少なくとも3カ月、長ければ1年以上の時間を掛ける。このIoT導入の準備段階といえるステップ、工程が、その後の導入工程の成否を分けるためだ」(横山氏)と準備の重要性を強調する。

 本質をついた経営課題を解決するためのKPIが設定できれば、具体的なIoT導入ロードマップを描き、実践していくことになる。ロードマップは状況に応じてさまざまな内容となるが、通常は「見える化フェーズ」「価値化フェーズ」「ビジネス変革フェーズ」の3ステップに分け、各フェーズでの到達目標を決めていく。

ロードマップイメージ

フェーズ1:見える化フェーズ 〜 柔軟に最適解を選べる環境作り

 見える化フェーズでは、課題が潜む現場にセンサーを取り付け、ネットワークを敷設し、サーバー/クラウドサービスに接続することになる。このフェーズでも「“○○ありき”“××ありき”といった発想を持ち込まないことが重要。柔軟な発想で最もよいセンサー、ネットワーク、クラウドサービスを選ぶことができるかどうかが鍵」と横山氏は語る。

 例えば、ネットワーク。大容量、高速であれば、どんなデータにも対応できるが、導入コスト、維持コストは膨大になる。逆に過度に低コストなネットワークを選べば、機能拡張時に必要なデータを収集できなかったり、セキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性を突かれ大きな損害を被ったり、ということに陥る。当たり前だが、収集するデータ、経営状況などに応じて、適切なネットワークを選ぶ必要があるのだが斉藤氏は「これが意外と難しい」と指摘する。「IoT導入を行うベンダーには、それぞれ売りたいネットワークが存在する。われわれ菱洋エレクトロも子会社にアイストリームという仮想移動体通信事業者(MVNO)を持ち、アイストリームのネットワークを売りたいというのが本音……。しかし、それでは顧客の最適解になり得ないケースもある。センサー、クラウドも全て最適解を選び、最適解を提供できるベンダーになるべき。ぜひ、そういった柔軟性のあるベンダーをパートナーに選んでほしい」と呼び掛ける。

 実際、菱洋エレクトロでは、踏切事故防止などに向けてIoT導入を進める東急テクノシステムに対し、子会社アイストリームとは異なる通信事業者のLTE回線を提案。さらに菱洋エレクトロはいくつかのクラウドサービスベンダーの代理店を務めるが、「東急テクノシステムさんの場合、画像に強いサーバー、クラウドを用意する必要があり、コア技術を持つ別のパートナーのクラウドを提供した」(斉藤氏)とし、既存のクラウドサービスの導入には至っていない。横山氏は「もちろん、アイストリームの通信、既存のクラウドサービスは素晴らしい製品で応用範囲も広く、導入事例も多い」とした上で、「われわれは、あくまで商社。顧客が必要なものがわれわれの取り扱い製品になければ探し出し、提供するという役割を果たす」という。

 見える化フェーズでは、必要なデータを集めるため、大量のセンサーの配置、ネットワークの敷設などでコスト負担が大きくなる。長期にわたるプロジェクトの場合、投資を回収するまでにどうしても時間が掛かってしまうので、IoT導入の障害となることも間々ある。「1つの解決策として、各フェーズで投資回収していくロードマップを描くという手がある」(横山氏)とする。

サイネージソリューションのイメージ。元々菱洋エレクトロが手掛けていたこのサイネージソリューションをベースに、ネットワーク敷設費用の早期回収プランを提示したという

 「全国展開する外食チェーン企業が、冷蔵庫の温度管理、設備点検など店舗スタッフの負荷を軽減するためにIoTを導入しているケースが、うまく投資回収を行っている事例だ」(横山氏)という。この外食チェーン企業の各店舗には、専用線が張り巡らされていたが、意図するIoT/M2Mには容量が足りず、新規に光/無線ネットワークの敷設が不可欠な状況だった。しかし、ネットワーク敷設には多額の投資が必要になるため「早期に投資回収が見込めないと敷設は難しい」と要望が出たという。そこで菱洋エレクトロではネットワークと並行し、デジタルサイネージの設置を提案。デジタルサイネージを使った広告ビジネスでネットワーク敷設費用の一部を回収するというアイデアだった。結果、このプランが決め手となり、ネットワーク整備を実現できたという。

フェーズ2:価値化フェーズ 〜 AI/ディープラーニング活用

IoT営業本部IoT推進部長 斉藤岳夫氏

 見える化フェーズでデータ収集を実現すれば、そのデータを価値に変える「価値化フェーズ」に移る。“とりあえずデータは集めてみたものの……”とデータを持て余し、価値化がうまくできないという失敗談はよく耳にするが、意外にも斉藤氏は「価値化へのハードルは高くない」という。「IoTの導入前にきちんと準備しているという前提はあるものの」と前置きしつつ、「数年前と違って今は、AI(人工知能)が使えるようになったので、価値化は随分と楽になった」とし、「価値化フェーズで重要なポイントは、AIを使える環境を整えること」と説明する。

 「これまでは、産業機器の故障予知を実現しようとすると、各機器に合わせてほぼフルカスタムの故障予知アルゴリズムを開発する必要があった。だが、強力な演算能力と汎用プラットフォームの台頭により、AI、ディープラーニング技術を活用したデータの価値化を比較的短時間、低コストで実現できる環境がととのいつつある」(斉藤氏)

 菱洋エレクトロでは、ディープラーニング向けプロセッサやGPU、マイコンを展開するIntelやNVDIA、ルネサス エレクトロニクスの代理店を務めており、早くから人工知能の応用技術提案を進めてきた。最近では、AIベンチャーのクロスコンパス・インテリジェンスが展開するAIプラットフォーム構想に、エンジニアリングパートナーとして参画し、顧客の利用シーンに応じて、最適なH/W、S/W、サービスをインテグレーションして提供できる体制を整えている。

フェーズ3:ビジネス変革の実践 〜 好機を逸さない

 見える化、価値化を経れば、次は、最終目標であるビジネス変革を遂げるフェーズとなる。ここまで来れば、おのずと実現されるものと思いきや、横山氏は「設定したKPIを達成しても、ビジネス変革を遂げると言い切れるまでには、やはり一筋縄ではいかず、それなりの苦労は発生する。そこには、攻略するコツは存在しないかもしれない」とこぼす。しかし、「1つだけ断言できることがある」と続ける。

 「IoTでビジネス変革を起こすには、早くIoTの導入に取り組むこと」

IoT営業本部営業企画部長 横山孝徳氏

 横山氏は「IoTの世界では今、“場所取り合戦”が激しくなってきている。場所取り合戦とは、センサー、カメラ、サイネージを取り付ける場所の奪い合い。例えば、1つの部屋に1つカメラが付いてしまえば、2つ目のカメラをあらためて付ける余地はなくなってしまう。出遅れてしまえば、いくら良いビジネスアイデアがあっても、次の置き換え需要までカメラ1つ取り付けられないという状況になってしまう。また、新たなビジネスモデルを目指したとしても、競合に先を越されてしまっては元も子もない。多くの企業がIoTでビジネス変革を目指している中で、競争優位を保ち、勝ち抜くには、いち早く取り組むことに尽きるだろう」と語った。


菱洋エレクトロのIoTソリューション

 菱洋エレクトロは、半導体デバイス、ICT製品/ソリューションを手掛けるエレクトロニクス商社。設立は1961年で、現在の売上高は984億円(2017年1月期実績)。

 半導体デバイス事業は、Intel、NVIDIA、三菱電機、ルネサス エレクトロニクスなど国内外の半導体製品を幅広く取り扱う。ICT/ソリューション事業では、HP、Oracle、セイコーエプソン、Microsoftなどの製品を扱う他、コンサルティング、インテグレーション、開発から保守までを手掛ける。近年、ICT/ソリューション事業は、企業の基幹システムなどITインフラ領域だけでなく、各企業の事業領域でのICT利活用に対しても、製品/ソリューションの展開を拡大中。

菱洋エレクトロのソリューション提供イメージ

 その一貫として、半導体デバイスレベルからネットワーク、クラウド/サーバーレベルまでトータルにサポートできるIoTプラットフォームを構築。製造業、医療、教育、流通、交通インフラなど幅広い産業分野の企業に対し、導入コンサルティングなどを交えながらIoT導入によるビジネス変革に貢献している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:菱洋エレクトロ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2017年7月21日

Presented by

関連記事

再編が進み大きく業界地図が塗り変わりつつある半導体業界。半導体を取り扱う半導体商社の経営環境も激変期にある。そこで、EE Times Japanでは各半導体商社の経営トップにインタビューし、今後の成長、生き残り戦略を聞く企画を進めている。今回は、バリュー追求型の商社として成長を目指す菱洋エレクトロの大内孝好社長に聞いた。

踏切の監視カメラ映像を解析して異常を検知し、踏切事故を防ぎたい――。踏切事故防止を目指した実証実験が東急電鉄世田谷線で2017年6月からスタートする。踏切監視カメラの映像を低遅延かつ安定的に伝送するシステムの構築は困難を極めたが、LTE、AI(人工知能)クラウドを活用することで実用化のメドが立ちつつあるという。「このシステムが実現できれば、踏切事故だけでなく、世界中の鉄道の安全性向上に貢献できる」(東急テクノシステム)と期待を寄せるAIクラウドを活用した画像伝送システムに迫る。

モバイル、クラウド、IoTといったトレンドが広がりを見せる中、新たな「無線LAN環境」の需要が高まっている。だが、インフラ未整備のエリアや屋外、工場、商業/公共施設、建築現場などでは、時間やコストだけでなく、“物理的な制約”もあって簡単には構築できないケースもある。そうした、これまではネットワーク化を諦めていた場所でも、高速で柔軟な無線LAN環境を素早く構築できる新たな無線LANソリューションに注目が集まっている。