認知度が高まってきたものの、ユーザー企業が導入する上でさまざまな課題がある「Yocto Project」ベースの開発環境。組み込みLinuxに舵を切って17年の歴史を重ねてきたリネオソリューションズは、Yocto Projectに関する悩みに応えるサービス「Yoctoコンシェルジュ」を始める。
超高速起動ソリューション「Warp!!」をはじめ、組み込みLinuxを用いた機器のソフトウェア開発を支えてきたリネオソリューションズ(以下、リネオ)。そのリネオの新たな取り組みとなるのが「Yoctoコンシェルジュ」だ。
Linux Foundationが2010年から、組み込みLinuxのディストリビューション展開を促進するため策定を進めてきた「Yocto Project(以下、Yocto)」は最近になって認知度が高まってきた。SoC(System on Chip)ベンダーが、自社製品のBSP(ボード・サポート・パッケージ)について、組み込みLinuxの開発環境をYoctoベースに移行させていることがその背景にある。リネオ代表取締役社長の小林明氏は「これまで大手SoCベンダーは、独自のLinux開発環境を提供していましたが、近年になってYoctoベースに移行しています。また、車載情報機器向けのLinuxを策定しているAutomotive Grade Linux(AGL)も、Yoctoベースです」と説明する。
Yoctoベースに移行しつつある組み込みLinuxの開発環境だが、SoCのBSPなどを使って製品開発を始めようとするユーザー企業にとっては、まだノウハウや知見が蓄積されているとは言い難い。Yoctoそのものはオープンソースプロジェクトなので、関連情報にアクセスする方法は開かれている。SoCベンダーも、コミュニティー用のWebサイトなどを設置して、ユーザー企業間の情報流通を促進するための取り組みを進めている。「大規模な発注を前提としている場合には、SoCベンダー自身による手厚いサポートが期待できます。一方、そこまでの規模の発注を前提としない、とりあえずBSPによる試作評価を行いたいという場合には、Yoctoやコミュニティー用Webサイトの情報を活用して進めるしかありません。しかし多くのユーザー企業は、Yoctoベースの開発環境を利用する上でさまざまな悩みを抱えているのが実情です」(小林氏)。
実はリネオは、2015年からYoctoに関する無償講座を定期的に実施してきた。この無償講座への反響の大きさを感じた同社が新たに開始するサービスが、冒頭に紹介したYoctoコンシェルジュなのである。
Yoctoコンシェルジュでは2つのサービスを予定している。1つは有償の専門講座だ。2017年1〜3月期から開始する予定で、Yoctoの基礎知識から利用法、活用展開などのトレーニングを行う。もう1つは、無償のサービスとなる、Yoctoに関するQ&Aを掲載したWebサイトだ。小林氏は「さらにその後の展開として、Yoctoの悩みに関する定型的なメニューに応えられるカスタマイズサービスなども検討しています」と語る。
2016年11月16〜18日にかけてパシフィコ横浜で開催される「組込み総合技術展 Embedded Technology 2016(ET2016)」のリネオブースでは、Yoctoコンシェルジュのサービス開始に先駆けて“リアル”Yoctoコンシェルジュを実施する予定だ。同社のエンジニアがコンシェルジュデスクについて、来場者のYoctoに関する悩みごとに対してアドバイスを行う。また、Q&Aサイトのプロトタイプ版も公開する。Yoctoに関する悩みがある方は、ET2016のリネオブースに行ってみてはどうだろうか。
超高速起動ソリューションであるWarp!!も、SoCのトレンドに合わせて進化を続けている。「組み込み機器向けSoCの技術進化は、動作周波数の向上からマルチコアへと移行し、現在はさらに64ビット化へ進展しています。特に、車載情報機器や複合機などは性能に対する要求が厳しいこともあり、64ビットSoCの採用が進むでしょう」(小林氏)という。
Warp!!はこういったSoCのトレンドを常にキャッチアップしており、2015年にはマルチコアへの対応を完了している。そして今回は64ビット対応も果たした。ET2016では、ARMの64ビットCPU「Cortex-A57/A53」を搭載する、ルネサス エレクトロニクスの車載情報機器向け最新SoC「R-Car H3」を用いて、64ビット対応Warp!!のデモを披露する。
また、SoCを用いた組み込み機器開発の課題となっているマルチOSに対応するソリューションも用意している。小林氏は「アプリケーション処理用プロセッサとリアルタイム対応プロセッサを搭載する非対称のSoCが増えています。この場合、組み込みLinuxとリアルタイムOSというマルチOS環境になることが多いですね」と述べる。
リネオは、このマルチOS環境の構築を支援すべく、米国のパートナー企業Timesysの開発環境「LinuxLink」を提供している。LinuxLinkでは、組み込みLinuxと連携するリアルタイムOSは「FreeRTOS」を想定しており、それぞれのOSに対応するビルド環境も用意している。ET2016では、NXP SemiconductorsのSoC「i.MX 7」を使って、アプリケーション処理用プロセッサの「Cortex-A7」でユーザーインタフェースを、リアルタイム対応プロセッサの「Cortex-M4」で音源を加工するデモを行う予定である。
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提供:リネオソリューションズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年11月30日
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