マイクロソフトの「Microsoft Azure Certified for IoT」は、OSやデバイスの種類を問わずクラウドへつながることを無料で認証するプログラムだが、単純な認証にとどまらず、さまざまな角度から「IoTビジネス」を推進するプログラムでもある。ESEC2016の会場で垣間見えたその魅力を紹介する。
IoT(Internet of Things)が、今後のICTビジネスにおいて魅力的な市場に成長したことは改めて述べるまでもない。IDCによれば2020年までにIoTソリューションの世界市場規模は7.2兆ドル。Gartnerも2020年までに255億ものデバイスがネットワークにつながると予測する。他の調査会社も似た数字を発表しているが、重要なのはIoTビジネスが「成長市場」であるという点だ。そのため各社は我先にとIoTデバイスやソリューションを次々と発表している。
だが、IoTビジネスにおいて問題になるのが、「いかにモノ同士をつなげるか」である。多角展開する大企業であれば自社製品やソリューションで完結できるが、IoTビジネスはそうした規模を持たなくとも参画できる魅力的な市場だ。自社の強みを生かした組み込みボードや産業用コントローラー、IoTゲートウェイのスターターキット、中にはPCを内包したドローンも登場している。これらIoTデバイスを技術面でもビジネス面でも「つなげる存在」が求められる。
ESEC2016のマイクロソフトブースに展示された各社のIoTデバイス | |
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会社名 | 製品名 |
アドバンテック株式会社 | IoTゲートウェイ 「ARK-1123」 |
パナソニック株式会社 | “Toughpad”「FZ-F1」 |
富士通株式会社 | ユビキタスウェアコアモジュール評価ボード |
株式会社PFU | 産業用コンピューター 「AR2100モデル120K」 |
株式会社ネクスコム・ジャパン | 産業用IoTゲートウェイ「NISE50C」 |
株式会社エフケイシステム | 「WavePOS-77(J1900)」 |
株式会社エヌ・エム・アール | 組込み向けタブレット 「ND13」 |
リコーインダストリアルソリューションズ株式会社 | マザーボード 「IT9」 |
東芝プラットフォームソリューション株式会社 | 産業用パソコン 「FAB-S320(TEM150)」 |
株式会社ダックス | 産業用コントローラ「HFBX-100」 |
株式会社コンテック | ボックスコンピュータ「BX-830」「BX-320」 |
株式会社日立産業制御ソリューションズ | 産業用コントローラ「HF-W/IoTシリーズ」 |
ドローンワークス株式会社 | 産業用ドローン「Verge」 |
日本マイクロソフトは2016年2月に、日本市場におけるIoT普及に向けたエコシステムを構築するため、IoTビジネスを推進する業界8社と「IoTビジネス共創ラボ」を発足させている。日本マイクロソフト 代表執行役 会長 樋口泰行氏は「IoTを可視化し、M2M(Machine to Machine)からIoT、最終的には人とつなげていく」と発足の目的を説明し、人材育成やパートナーマッチングなどさまざまな角度からIoTビジネスの支援を行うとも述べている。
東京エレクトロン デバイスが幹事社を務めるIoTビジネス共創ラボだが、日本マイクロソフトが参画する背景には、クラウド「Microsoft Azure」の存在が大きい。IoTビジネスは現場のモノと経営者をITでつなぎ、IoTデバイスから収集できるデータを分析して、そのデータを可視化することで経営判断などに用いるが、そこには信頼できるクラウドが必要となる。
あらためて述べるまでもなくマイクロソフトはコンシューマーからエンタープライズまで幅広く扱うICT企業だが、近年はクラウドビジネスに注力し、2016年第1四半期のIntelligent CloudセグメントはMicrosoft Azureの躍進も相まって3%増の61億ドル。サーバ製品およびサービスも5%増加と成長の兆しを見せている。Microsoft Azureのクラウドプラットフォーム&サービスを用いれば、デバイス管理やイベント処理、ビッグデータ収集から分析、利活用まで一気通貫的に行える。Microsoft AzureはIoTビジネスにおいても大きな強みを保持しているのだ。
だが、日本マイクロソフト コンシューマー&パートナーグループ OEM統括本部 IoTデバイス本部 シニアマーケティングマネージャー 小佐野求美氏によれば、中小規模企業からは「『明日からIoTビジネスを始めるのは、まだハードルが高い』という声が多く寄せられる」という。Microsoft Azureは初期費用も不要、契約解除手数料もない従量課金制のクラウドプラットフォームだが、それでも結果が見えないビジネスへの投資に二の足を踏む企業担当者は少なくない。
そこでマイクロソフトは、最小限のリソースを含んだ構成済みソリューションを用意した。「Azure IoT Suite」は遠隔監視や資産管理、予兆保全といったシナリオを事前に定めることで、IoTビジネスの第一歩を容易に踏み出すことができる。例えば遠隔監視は1月あたり1000ドルで購入できるため、費用対効果が明確になれば追加導入などでリソースを拡大すれば良い。 また、使い慣れた既存のIoTデバイスやサービスをそのまま利活用できるため、迅速なIoTビジネスにも対応できる。
さらに日本マイクロソフトのクラウド戦略拡大に寄与するのが、「Microsoft Azure Certified for IoT」プログラムだ。
既にIoTビジネスは、組み込みデバイスがどのようなIoTソリューションで使用されるかを企業やエンジニアが想定し、設計・販売を行わなければならないステージに進んでいるが、IoTデバイスやソリューションのプロトコルは多岐にわたり、開発工数の負担が発生しかねない。そこでマイクロソフトは多くのIoTソリューションに有用なHTTP、AMQP(Advanced Message Queuing Protocol)やMQTT(MQ Telemetry Transport)などの通信プロトコルをサポートした「Azure IoT Hub」を用意している。
このAzure IoT HubとIoTデバイスとの接続を保証する認証プログラムが「Microsoft Azure Certified for IoT」だ。日本マイクロソフト コンシューマー&パートナーグループ OEM統括本部 テクニカルセールス部 アカウントテクノロジーストラテジスト 深谷一幸氏によれば、申し込みから完了まで「2〜3日で終わる」というスピード感も魅力だ。
もちろんMicrosoftアカウントやMicrosoft Azureサブスクリプション、そしてVisual Studioによる開発環境は必要だが、Microsoft Azureは1カ月間のフリートライアルが用意されており、Visual Studioも無償使用版が公開されているため、取りあえずの着手ならばコストは非常に低く抑えられる。ここでMicrosoft Azure Certified for IoTによる認証取得手順の流れを紹介しよう。
認証取得の手順を見ると申請までに手間がかかるように見えるが、「上手く行かない場合は具体的な指示が事務局から送られてくる。慣れているパートナーなら(提出まで)数時間もかからない」(深谷氏)そうだ。
クラウド側の開発環境である「Azure IoT SDK」はGitHubで公開されており、言語についてもC#やNode.js、Java、.NET、Pythonに対応し、エンジニアは好きな開発言語を選択できる。Azure IoTライブラリもWindows OSに限らず、各Linuxディストリビューションやmbed、TI-RTOSといったリアルタイムOSもサポートしており、また、対象のOSに合わせた認証手順書(英語)も、公開されているため、エンジニアであれば容易に試せるはずだ。
Microsoft Azure Certified for IoTは単なる認証システムではなく、IoTビジネスのエコシステムを広げる存在である。
IoTビジネスは「クラウドとIoTデバイスが相互的かつ容易に接続されること」が大前提となるが、そのためには「接続検証に当たってのサポート体制が重要(日本マイクロソフト コンシューマー&パートナーグループ OEM統括本部 IoTデバイス本部 シニアチャネルエグゼクティブ Azure担当 村林智氏)」となるからだ。
加えて、日本マイクロソフトはMicrosoft Azure Certified for IoTを単なる無償サービスではなく、マッチングサービスやサポート体制を提供するプログラムと位置付けている。
前述したAzure IoT Hubとの接続認証済みIoTデバイスとして登録されると、ビジネスプロジェクトに必要なIoTデバイスならびソリューションの情報提供や、IoTビジネスに必要なパートナーを紹介するマッチングサービスが日本マイクロソフトによって行われる。また、展示会などの開催時には日本マイクロソフトのブースでIoTデバイスを紹介する機会も提供されるため、IoTビジネスの試験運用時にコストをかけられない中小規模企業にとっては魅力的なプログラムだ。また、エンジニア視点から見れば、Microsoft Azureとの接続テストの工数を省けるのも大きなメリットと言えよう。
他方で自社完結可能な大企業のIoTビジネスでも、Microsoft Azure Certified for IoTプログラムに参加するメリットが存在する。それは顧客の拡大だ。複数の企業が特定の市場に対してパートナーシップを組み、互いの利点を生かしながら業界の枠や国境を越えて共存共栄していくエコシステムは既に主流なビジネススタイルである。そこに参画することが、ビジネスの機会増加につながるのは至極当然だ。
Microsoft Azure Certified for IoTプログラムは2015年9月からスタートしているが、参加パートナーは毎週のように増加し、「開始半年で数倍以上」(村林氏)に増えたという。そこにはインテルやデル、HPといった大手IT企業はもちろん、パナソニックや安川情報システム、ぷらっとホームなど日本の企業名も多く並んでいる。
日本マイクロソフトが多くのリソースを割いて無償プログラムを提供する理由は、Microsoft Azureクラウドプラットフォームの拡充が主目的であることは明白であるが、利用する企業としてはこのIoTエコシステムへ参加することで、多種多彩なメリットを享受でき、貴重なビジネスチャンスにつなげることができるはずだ。なお、Microsoft Azure Certified for IoTプログラムの認証対象は現在、物理的なデバイスに限られているが、今後はOSやプラットフォームなどを対象とした認証サービスも予定されている。
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日本マイクロソフトはMicrosoft Azure Certified for IoTを深く理解するための「Microsoft Azure Certified for IoTハンズオントレーニング」を2016年6月13日に予定している。
午前と午後の二部構成となっており、午前は米Microsoftが毎年開催する開発者向けカンファレンス「Build 2016」で発表されたIoT/組み込みデバイス向けトピックの紹介やMicrosoft Azureのアップデート情報、Microsoft Azure Certified for IoTプログラムに関する説明を予定。主にマネージャーやIoTビジネス担当者を対象にしている。
午後の部ではMicrosoft Azure Certified for IoTを実際に試せるハンズオンラボが行われる。こちらは文字通りエンジニア向けだ。事前の申し込みはもちろんだが午後のハンズオンラボを受講するには、MicrosoftアカウントやMicrosoft Azureサブスクリプション、実際に使用するPCおよび仮想環境(VMware/Hyper-V/Virtual Box/Parallels)の準備が必要なので注意してほしい。
本稿をご覧になってMicrosoft Azure Certified for IoTに興味を持たれたIoTデバイスの開発者やIoTビジネスを展開中の担当者は、Microsoft Azure Certified for IoTハンズオントレーニングに足を運んでみてはいかがだろうか。IoTビジネスの拡充を図るチャンスがここにある。
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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月30日