10年後も使えるCAEを――新たなCOMSOLはロバスト性を追求スウェーデンCOMSOL AB Fontes氏&Andersson氏

スウェーデンCOMSOL ABのマルチフィジックスCAEツール「COMSOL Multiphysics」が、最新のバージョンアップであえて力を入れたのが、基本に立ち返った機能強化だ。COMSOLグループCTOのEd Fontes氏と、COMSOL ABのシニアサポートスペシャリストのLinus Andersson氏に、最新バージョンの狙いなどについて聞いた。

» 2016年01月12日 00時00分 公開
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COMSOLグループCTO Ed Fontes氏 COMSOLグループCTO Ed Fontes氏

――2015年11月16日にCOMSOL Multiphysicsの最新バージョンである5.2をリリースしました。どのような点が進化したのでしょう。

Ed Fontes氏 最新バージョンで力を入れたのは、ロバスト(堅牢)性、計算の安定性や高速性、使い勝手といった基本機能の強化だ。今までで一番ロバストなバージョンだといえる。こういった基本機能を、1年をかけ集中して開発するのは初めてのことだ。もちろん、各種新機能や新インタフェースの追加も行っている。

――この1年で大きな発表が相次ぎました。2014年末にCOMSOL Multiphysicsの新機能である「Application Builder」が、2015年4月には、Application Builderの専用Webアプリケーションサーバ「COMSOL Server」が登場しています。これらの特徴は何でしょう。

Fontes氏 Application Builderは、普段COMSOL Multiphysicsを使用している解析者が特定の目的に応じたシミュレーションのアプリケーションを作成できる機能だ。普段はCOMSOLを使用しない設計や営業、生産技術などのシーンでも簡単に高度なシミュレーションができるようになるだろう。

 COMSOL ServerはApplication Builderで作成したアプリケーションをアップロードできる、クラウド環境にも設置できるWebアプリケーションサーバだ。アップロードしたものはWebアプリケーションとして、許可された人は誰でも利用することができる。複雑な計算は全てサーバ側で行うため、利用端末には計算の負荷が掛からない。タブレット端末でも計算から結果の3Dビュー確認やレポート出力までが可能だ。

「COMSOL Serverの管理画面」 「COMSOL Server」の管理画面。「Application Builder」で作成されたアプリケーションをWebブラウザなどで利用することができる

――Application BuilderとCOMSOL Serverは最新バージョンではどのように進化しましたか。

Fontes氏 Application Builderはよりユーザーフレンドリーになった。またCOMSOL Serverとの接続やアップロードがより早くなった。接続が一時的に切断されても、以前の作業を保ったまま再接続できるようになったのも大きな改善だろう。以前のバージョンでは、クライアント側PCの無線LANの接続が何らかの原因で切断されたりすると解析結果を取得できず、再計算する必要があった。

COMSOL AB シニアサポートスペシャリスト Linus Andersson氏 COMSOL AB シニアサポートスペシャリスト Linus Andersson氏

――COMSOL Multiphysics最新バージョンの他の強化内容を教えてください。

Linus Andersson氏 安定性やロバスト性の向上、起動スピードの強化など、基本性能に力を入れたのは先ほどの通りだ。

 形状およびメッシュに関する機能向上も行っている。「Mesh Parts」の導入によって、形状の構築に用いる曲面メッシュや体積メッシュのインポート操作がより簡単になった。ロバスト性が増した四面体メッシュ生成機能などを追加するとともに、六面体メッシュ生成の多機能化も実現している。

 電気や力学、流れ、化学の各分野では、「Application Builder」のサンプルアプリケーション数を15個から60個に増やした。この豊富なライブラリをベースにすることで、より簡単に独自のアプリケーションを開発することができるだろう。

 CFDモジュールでは、これまでは二相流までしか解析できなかったが、三相流にも対応した。例えば上層が油、下層が水で、下から空気の泡が浮き上がってくるというようなシミュレーションが可能だ。

 構造力学モジュールおよびAC/DCモジュールで、外部関数が利用できるようになったのもポイントだ。特殊な材料は関数を使った式で定義する方が専門家にとっては便利だろう。結果処理では、3Dおよび2Dプロットにユーザーが注釈を書き込めるようになった。例えば最小および最大応力などを表示させることができる。時間に伴って、この最大値や最小値の位置が変わるような場合にも自動更新で対応可能だ。

――Application BuilderとCOMSOL Serverのメリットとはなんでしょう。

Fontes氏 研究者や科学者、解析専任者たちは、アプリケーションを作ることでより多くの人と仕事をシェアできる。一方、普段COMSOL Multiphysicsを使わない設計エンジニアにとっては、より高度な解析を自分の判断で行うことが可能になる。両者にとって役立つと考えている。サーバ管理が必要になるが、企業や研究所の既設のサーバと比べて内容はそれほど変わらない。

――Application BuilderとCOMSOL Serverの発表から約1年が経過しました。ユーザーの反応はいかがでしょう。

Fontes氏 COMSOL Serverの販売ライセンス数からすると、現在までに700〜2000程度のアプリケーションが作成/使用されているとみている。

 日本ではある自動車メーカーでの使用例がある。開発や設計の部隊がアプリケーションをつくり、生産技術に渡す。生産現場ではパラメータを変更しながら検討することで、引けが起こる条件や適切な肉厚などを検討してフィードバックする。品質向上や開発サイクル短縮を目的とした利用が多い。

 このようにApplication Builderでアプリケーションを作り、永く広く使うためにはCOMSOL Multiphysicsの基本性能を向上させることが必要だった。この1年間それに取り組んだことで、信頼できる製品を用意できたと思っている。


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提供:計測エンジニアリングシステム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年2月11日

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