産業用機器、家電機器、車載機器など各種の分野で、MCUを用いてさまざまなモーターや電力装置のインバータ制御が行われている。これらの機器では常に数値演算を繰り返して装置を制御しており、リアルタイムの応答性や演算精度が厳しく要求される。一方、演算自体は定型処理が主であって、さまざまな演算を複雑に切り替えながら実行するというわけではない。このような制御を必要とする分野は急速に拡大しており、制御対象であるモーターや電力装置の数も急増しているので、MCUやインバータ回路には効率や経済性も強く求められている。
MCUとしては、定型的で間違いや遅れの許されない仕事を、機器の動作タイミングに合わせて高速に繰り返していると言える。このような演算処理は、以前はDSPやFPGAを用いて行い、システム全体を制御するMCUと組み合わせることも多かった。しかし、DSPやFPGAを用いれば、高速演算は満足できても、システムのコスト、サイズの大幅な上昇や開発工程の複雑化を招くという問題がある。
最近では、DSPの演算性能とMCUの汎用性を兼ね備えたリアルタイム・マイコンが多く使われている。たとえば、テキサス・インスツルメンツ(TI)のC2000™ファミリは、TIが長年培ってきた高性能DSPの技術と汎用MCUの使いやすさを融合したC28xコアを採用し、DSPの高性能を生かした定型処理からMCUの高機能を生かした非定型処理まで1チップで実現可能なリアルタイム・マイコンとして定評がある。
中でも、32ビット浮動小数点コア搭載のDelfino™シリーズは、高い演算性能に加えて、高速・高分解能ADCおよびePWMなどの高いアナログ性能、充実したツール群による優れた開発効率を兼ね備えた上位シリーズである。特に、昨年末に発表した新製品 C2000 Delfino F2837xDでは、デュアルコア+デュアルアクセラレータの強力な構成と動作周波数の向上によって、従来製品に対して大幅な性能向上を実現している。
Delfino F2837xDは、従来のシングルコアのDelfinoシリーズとソフトウェア互換性やピン互換性をもち、さらにC28xコアで低コストを追求したPiccolo™シリーズ、C28xコアとARM® Cortex M3コアによるデュアルコアのConcerto™シリーズとも互換性が高い。幅広い用途で開発ツールや設計資産を最大限に共有できる点も嬉しいところだ。
マイコン製品の使いやすさは、評価用ボードをはじめとするハードウェア・ツール、コンパイラをはじめとするソフトウェア・ツールの充実によって決まる。DelfinoをはじめとするC2000ファミリは、充実したツールによる開発効率の高さにも定評がある。
最新製品であるDelfino F2837xDでは、モジュール形式の評価用ボードF28377D controlCARD(TMDXCNCD28377D)や、評価用ボードとブレッドボードを接続して絶縁型USB JTAG接続でデバッグできるドッキングステーションを組み合わせたF28377D Delfino 検証用キット(TMDXDOCK28377D)が提供されている。評価用モジュールは従来のC2000ファミリと互換のC2000 controlCARDフォーマットを採用しており、他品種との比較検証や設計資産の共通化に役立つ。
また、サンプルソフトウェア、ヘッダーファイル、デバイス固有のドライバ、アプリケーション・ライブラリなどの豊富なサポートソフトウェアや、多数の関連資料をワンストップで閲覧、ダウンロードできるcontrolSUITE™が提供されており、開発効率の向上に大きく貢献する。
さらに、ソフトウェア・ツールの中核を占める統合開発環境(IDE)としてTIが提供しているCode Composer Studio™がバージョン6(CCS v6)にリビジョンアップされ、さらに使いやすさが向上した。CCSはJavaからMCUまで広い分野で用いられている業界標準のEclipseフレームワークをベースとしたIDEで、TIの幅広いMCU/MPU/DSP製品を統一的に開発することができる。
今回のリビジョンアップでは、常にCCSの最新機能と追加のTIソフトウェアパッケージを提供するApp Center、初めてCCSを利用する設計者のためにユーザー・インタフェースを基本機能だけにカスタマイズした新しいSimpleモードの追加、性能向上/コードサイズ削減/消費電力削減などを容易に実現できるOptimizer Assistant、Ultra-Low Power Advisorなどの学習ツール群の強化をはじめ、さまざまな機能の強化が行われている。
最近では、産業用サーボモータ、スマートグリッド、PLC、太陽光発電、UPSなど、さまざまな用途で、制御精度や応答性、小型・高密度化、低消費電力、開発効率などの要求が一段と高度になっている。リアルタイム・マイコンにも、より高い頻度できめ細かい制御演算を高効率に実現することが求められている。Delfino F2837xDは、それらの要求に対応可能な最新のリアルタイム・マイコンだ。
Delfino F2837xDではデュアルコアを採用するとともに、それぞれのコアにCLA(制御補償アクセラレータ)を組み合わせた。CLAは、ループ制御などの高速演算をMCUコアと独立に実行するC言語完全対応のプログラマブル演算コアだ。Delfino F2837xDは、フラッシュ内蔵マイコンでは最速に近い200MHzで4個のコアを動作させることによって、800MIPSのリアルタイム処理性能を実現している。
さらに、精密フィードバックを可能にする4個の16ビット高速ADC、トルク計算を大幅に高速化する三角関数演算ユニット(TMU)、モーター振動解析などの複雑な演算を効率的に処理するビタビ・複素数演算ユニット(VCU II)、絶縁型ADCを容易に構築できるΣΔインターフェイス、ソフトウェアの介在なしで安全にパワーステージをシャットダウンできるウィンドウコンパレータなどの搭載により、高度なリアルタイム制御の要求に応えることができる。
高性能、経済性、開発効率を兼ね備えるDelfino F2837xDは、産業用のさまざまな分野における最新のプラットフォームとして注目されている。
関連リンク:
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誕生して以来40年ほどの間に、急速に進化と発展を続けたマイコン。知っているようで知らないマイコンのしくみから使いこなしまで、「基礎の基礎」からわかりやすく解説。
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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2014年7月26日