スウェーデンのCAEベンダー COMSOL ABは、柔軟で強力なマルチフィジックス解析(無制限連成解析)ソフトウェア「COMSOL Multiphysics」を提供している。COMSOL ABの創業者でCOMSOLグループCEOのSvante Littmarck氏と、米国COMSOL Inc.プロダクトマネジメント副社長のBjorn Sjodin氏が、COMSOL Multiphysicsの強みや今後について語った。
――COMSOLについて教えてください。
Svante Littmarck氏 COMSOL は、1986年に、私、Svante LittmarckとFarhad Saeidiが、スウェーデンのストックホルムで創業したエンジニアリングソフトウェアベンダーだ。1998年に初めて「COMSOL Multiphysics」をリリースした。以来、製品ラインを拡大していき、現在は多岐にわたる分野・業種で使われている。
――「COMSOL Multiphysics」は、どんなソフトウェアですか?
Littmarck氏 :COMSOL Multiphysicsは、有限要素法(FEM)ベースの汎用物理シミュレーションソフトウェアで、流体、構造、電磁場、伝熱、音響、光学、化学など、あらゆる物理現象の組み合わせに柔軟に対応できるマルチフィジックス解析(必要に応じて強連成解析も可能)を得意としている。プログラムは、マクスウェル方程式やアインシュタインの相対性理論、ニュートンの法則など、科学法則の根本に迫って開発している。最適化モジュールや材料ライブラリを備えるのも特徴だ。
Bjorn Sjodin氏 COMSOL Multiphysicsは、さまざまなプログラムやソフトウェア、データを行き来することなく、1つのソフトウェアで、実現象に近い感覚のマルチフィジックス解析が実行可能だ。解析においては数学的アプローチも可能だ(コアソルバーが一般的な偏微分方程式系に対応)。それ故に、未実装あるいは未知の現象においても、C言語などでプログラムを組むことなく解析能力を拡張できる。また、解析機能のカスタマイズもしやすくなっている。解析モデルのジオメトリや物理現象、境界条件などの管理には、CADユーザーにとってなじみ深いモデルツリーを採用していることも特徴だ。
またCOMSOL Multiphysicsは3次元CADとのシームレスな連携機能も備える。
――最新版「COMSOL Multiphysics バージョン4.4」の新機能について教えてください。
Sjodin氏 まず、ユーザーインタフェースを「Windows .NET」ベースに刷新し、Windowsライクなリボンインタフェースを採用して操作性向上を図った(ただしMac版およびLinux版は従来のJAVAベース)。また「マルチフィジックスノード」の搭載が最も大きなニュースだ。モデルツリー上で、マルチフィジックスの組み合わせを簡単に作ることができる機能だ。解析したいマルチフィジックスな現象に合わせて、さまざまな解析項目の候補を自動で提示してくれる。例えば、ある構造体の中に電気が通ることによる発熱であれば、ジュール熱や熱応力などを選択肢として示してくれる。
従来のParasolidベースのCADインポートモジュールをより強化した。3次元CAD「SolidWorks」や「Autodesk Inventor」(Inventor)向けのアドオン機能「LiveLink」も改良した。SolidWorks用モジュールではCADモデルのユーザー定義の同期機能とワンウインドウでのGUI、Inventor用モジュールではCADモデルに定義された材料設定や材料名の同期機能を提供する。CAE分野でよく使用される「Nastran」形式データについては、従来のインポートだけではなくエクスポートも対応した。
これ以外にも、構造力学モジュールや疲労モジュールの改良、新規にミキサーモジュールの追加など、紹介し切れないほど多くの新機能を実装した。
――今日のコンピュータの計算性能の飛躍は目覚ましく、解析モデルの規模もどんどん大規模化しています。COMSOLとしては、そういったトレンドに対してどう取り組んでいますか。
Sjodin氏 現在、ワークステーションやスタンドアロンのマシンによる解析においても複数コアを使った計算が普通になってきている。国立研究所レベルであれば、高性能なスーパーコンピュータやクラスタマシンを使った解析が行われている。COMSOLは、最新のコンピュータの性能が存分に発揮できるようプログラムを開発しており、マルチコアに強いシステムとなっている。コア数が増大してもリニアな性能向上がかなえられる。しかもCOMSOLのライセンス費用については、コア数ごとの課金を一切していない。計算で何コア利用しようが、ライセンス費用が変わらない。これは、他社ではなかなか見られないライセンス体系だろう。
――COMSOLユーザーにはどんな業界の方がいらっしゃいますか。
Littmarck氏 物理法則が支配するあらゆる分野の研究で、COMSOL Multiphysicsは適用できる。防衛、軍関係、航空宇宙、食品加工、原子力、コンシューマー製品、エレクトロニクス……など、多岐にわたる業界で万遍なく使われている。実際、R&D部門がある大手企業の多くでCOMSOL Multiphysicsが導入されている。日本の企業で、有名どころではトヨタ自動車もCOMSOLユーザーだ。大手企業に限らず、個人や中小企業にも多くのユーザーがいる。また学校や研究機関においても広く導入されている。
――COMSOL Multiphysicsが特に強い業界・分野はどのあたりでしょうか。
Littmarck氏 :そういう質問はよくいただくのだが……、やはり「全部」と答えたい。競合が少なく、COMSOL Multiphysics独自の強みということであれば、プラズマモジュールやマイクロ波加熱などニッチな解析分野が挙げられる。また非線形材料のライブラリの豊富さ、強力さにも自信がある。非線形材料については、米国でのパートナーであるVeryst Engineeringと協業し、実験や解析、コンサルティングサービスも提供している。
――今後のCOMSOL Multiphysicsは、どう進化していきますか?
Sjodin氏 まだ詳しいことは公にできない段階だが……、少しだけヒントを。2014年9月に、次期バージョンをリリースする。そこで、「Application Builder」という新機能を提供予定だ。COMSOLのメインユーザーである研究開発者の成果は製造部門へ渡って製品となり、やがて消費者(エンドユーザー)の手元に届く。「開発が終わったら、そこでおしまい」とはいかない。そこで、Application Builderでは、研究開発者だけではなく、製品設計や製造の部門でも解析機能が利用できるような仕組みを考えている。
――2014年にかける意気込みは?
Littmarck氏 日本における売り上げについては前年比で2桁アップを達成し、素晴らしい1年となった。日本のエンジニアは世界的に素晴らしい技術力を有しており、そのような方々に採用いただけているのは光栄だ。またCOMSOLは、2013年の1年間だけで、6つの新製品をリリースした。既存製品のさまざまな機能改善も満足いく結果となった。新製品を素早く次々と、失速することなく世に送り出していけている。2014年も引き続きこのペースを保ち、日本における売り上げを前年以上にアップするよう目指したい。
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提供:計測エンジニアリングシステム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2014年2月13日