データが人を幸せにする――M2M時代のデバイス開発に必要なDB要件とは未来のサービスを見据えたモノづくり企業を目指せ!

ハードウェアメーカーも、新しい社会インフラを見据えたサービス開発に乗り出すとき。では、高度なITインフラのノウハウが必要なサービス開発に適したソフトウェア実装とはどんなものだろうか?

» 2012年04月12日 10時00分 公開
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 「技術者の皆さんにBerkeley DBが新しい社会インフラサービスにどれくらい貢献するか、そのアイデアを紹介したいのです」

 取材冒頭でそう語ったのは、日本オラクル Java Embedded Global Business Unit 担当シニアマネージャー 信太(しだ)純氏だ。

 信太氏はデバイスメーカーの製品企画担当者に向けて、「ビジネスチャンスにつながるサービス立ち上げを共に考えていきたい」と力説する。

写真 日本オラクル Java Embedded Global Business Unit 担当シニアマネージャー 信太(しだ)純氏 日本オラクル Java Embedded Global Business Unit 担当シニアマネージャー 信太(しだ)純氏

 最近、日本の電機メーカーに多い機能重視主義の弊害として“ユーザー体験の軽視”が課題として挙げられている。モノだけを作るのではなく、サービスや付加価値を提供しているという、商売の基本ともいえる部分が欠落しているという指摘も少なくない。

 新しい技術があればこそ実現するサービスがある。例えば、欧米で導入が進んでいるスマートグリッドを考えてみよう。従来、人力で検針が必要であった家庭の電力メーターが、ネットワークにつながることで自動検針システムを可能にした。これによって電力の集中管理ができるだけなく、細かな制御で需給調整を実施したり、利用者個人が自身の消費電力量を把握・制御できる時代が近づいている。

 スマートグリッドについていえば、ハードウェアメーカーだけでなくGoogleに代表されるITベンダー各社もこの領域に注力し始めている。Internet of Things(モノのインターネット)に新しいビジネスが見えているからだ。技術革新とともに競争に参加するプレーヤーが増える中、来るべきInternet of Thingsの世界に向けて、いまハードウェアメーカーが生き残るために考えておくべきことは何だろうか?

 「ただのデバイス開発ではなく、サービス開発を考えた製品作りの準備を整える必要があります。いち早く市場に製品を投入し、なおかつ将来的には大きなサービスインフラに接続することを見越した製品を開発できる企業が生き残っていくことになるでしょう」(信太氏)

データ管理の実装方法でビジネスが変わる!?

 Internet of Thingsの世界を実現する製品――そのデバイス開発でコアとなるのは、さまざまなセンサーから取り込まれる膨大なデータをどう扱うか、という点になるだろう。

 M2Mの時代では、膨大なデータから、新しい価値を創出できる。デバイスメーカーは、機器から取得したデータを有効活用して、ビジネスを作り出すことが可能であり、それを実現するためには、点在化、断片化したデータを効率的かつセキュアに収集しなければならない。

 機器から取得したデータを有効活用して、ビジネスを作り出すことが可能であり、それを実現するためには、点在化、断片化したデータを効率的かつセキュアに収集しなければならない。

 組み込みデータベースを利用すれば、デバイスや周辺機器に大掛かり仕組みを構築しなくても、取得データを全て格納・保管できる。特に、オラクルのBerkeley DBは、高速かつセキュアなデータ格納方式を提供し、拡張オプションとして、企業内のOracle Enterprise DBと接続して、データ同期が可能となる。

「デバイス開発の際に、組み込みアプリケーションのデータベースとしてBerkeley DBを選択しておくべき理由がいくつかあります。それはBerkeley DBの『生い立ち』『実装/提供方法の多彩さ』『シンプルでセキュアなデータ管理』などです」(信太氏)

Berkeley DBとは

 Berkeley DBはその名前から推測できる通り、BSD UNIXの源流ともいえるカリフォルニア大学バークレー校が開発したデータベースだ。Key-Valueによるシンプルなデータ構造を持ち、さまざまなオープンソースソフトウェアのアプリケーション組み込みデータベースとして実装されてきた。Webブラウザ創成期のNetscapeが自社アプリケーションの組み込みデータベースとして採用したことをきっかけに、Netscape側がさまざまな要件に対応させるべく、プログラムコードの改良にコミットした歴史もある。この時に、シンプルなデータベースであることと同時に、ACID準拠のようなデータベースとして要求される処理の安定性を手にしている。

 その後、1996年にはBerkeley DBのコア開発者――Margo Seltserや2.10 BSDのアーキテクトでもあるKeith Bostic氏ら――はSleepycatを設立、そのSleepycatを2006年3月にOracleが買収した経緯がある。買収は非常に円満なものだったようで、コア開発メンバーは皆Oracleの中でBerkeley DB開発プロジェクトのコアメンバーとして今も活躍している。

 「現在、コアメンバーにはOracleとしてBerkeley DBの開発にコミットしてもらっています。Oracleとしても、開発プロジェクトの参加メンバーを一定の人数に保ち、品質を維持しています」(信太氏)

 Read/Writeの同時実行や、トランザクション保証も実現する。現在は、レプリケート機能の実装にも対応しており(1対nレプリケーション)、フェイルオーバー付きレプリケート機能によって、堅牢性と安定性も高くなっている(HA構成)。

実装方法はアイデア次第、全ての可能性を網羅するBerkeley DB

 「Berkeley DBは多くの実績を持ちながら実装の選択肢を複数持っている点も優位です。開発の人的リソース、実装デバイスの制約をカバーするだけの選択肢があります」(信太氏)

 個々のデータをどこまで安全に保持するか次第ではHA構成を視野に入れた実装も可能だ。逆に、個々のデータ自体を重視するのではなく、時系列で大量の情報を処理し、トレンドを読むような場合では、大量のデータの中で幾つかの情報が欠落したとしても、全体の傾向を把握する場合には大きな影響はない。この場合はよりシンプルな実装を選択できる。いずれの場合も、Key-Valueで構成されるレコードを、大量かつ高速に、格納および読み出し可能なBerkeley DBの特性が、十分に活用できる。

多彩なバージョン、提供方法

 Berkeley DBのAPIは、Cライブラリ版だけでなく、XQuery(XMLデータベースの問い合わせ言語)版や、Java版も用意されている。フットプリントの小ささを重視したり、高速性を選択するならばCライブラリ版だが、Java版であればJava FXを利用したUI開発も可能になる。スマートメーターのように、ユーザー側にも魅力的なUIで情報を可視化したい場合には、Java FXのUIライブラリ群を使えば効率よくリッチなUI開発が可能になる。

 Berkeley DBはこのような性質から、適用範囲が非常に広いのが特徴の1つだ。ライブラリ提供型であることから、フットプリントはプログラム次第で非常に小さくできる。このため、携帯電話端末のメッセージ管理などのような、比較的リソースの小さなデバイスへの実装に適している一方で、組み込み機器だけでなく、PC向けアプリケーションやストリームデータ処理アプリケーションなどへの実装実績もある。

Key-Value型ならではの自由度

 Berkeley DBはデータベースといってもリレーショナルデータベース(RDB)とは異なり、非常にシンプルな、Key-Value型であるため、入力値の自由度も高い。構造がシンプルである故に処理速度はRDBと比較しても非常に高速だ。ストレージへのデータI/O部分に工夫すれば、例えばミリ秒単位の情報蓄積処理にも問題なく対応する。こうした特性は、例えば車載センサーの時々刻々と変化する状況を収集するのにも適しているだろう。また、入力データのデータ型や格納データサイズを事前に設定する必要がないため、機能の拡張を視野に入れている場合のソフトウェア面での制約が少なくなるといえる。

開発リソースも柔軟に活用できる

 「開発の柔軟性も大きなアドバンテージとなるでしょう。アプリケーション埋め込みで実装できるため、フットプリントも軽くでき、また、挙動についても柔軟に制御できる利点があります」(信太氏)

 組み込み系のソフトウェア開発では、どうしてもリソースの制約から、軽量化のために極限までコードをチューニングすることが少なくない。組み込み機器やアプリケーション埋め込みによく使われるKey-Value形式のシンプルなデータ構造に最適なアクセス方法を提供していることから、開発者は無駄のない作り込みができる。

ITインフラを支えるソフトウェアでの実績

 Berkeley DBは、歴史が古く、数多くの製品で採用実績がある。例えばMTAであるPostfixやSendmailのアプリケーション組み込みデータベースにはBerkeley DBが使われている。組み込みソフトウェアの領域ではモトローラのスマートフォンなど複数の製品でメッセージ管理プログラムに組み込まれている。クリティカルな製品やプロダクトに採用されている実績は、それだけノウハウの蓄積と安全性への信頼に結び付くものといえるだろう。

セキュアなデータ管理

 スマートグリッドのように、社会インフラを期待される製品ではデバイスの中に残されているデータそのものやアプリケーションそのもののデータのセキュアさが重要となる。電力の使用状況などはシンプルなデータではあるが、在宅時間が推測できるなど、非常にデリケートな個人情報としての側面もある。このため、これらの情報を集積する端末には一定のセキュアさが要求されることになる。

 「Berkeley DBの格納データやログファイルは暗号化可能なので、安全です」(信太氏)

Oracleとしてのコミットメント

 「さらに大きなポイントは、Berkeley DBのコア開発メンバーがOracleとしてプロジェクトにコミットしていることです」(信太氏)

 オープンソースで配布されるBerkeley DBの開発は、コミュニティーベースだ。しかし、Berkeley DBの場合、前述のように開発コアメンバーはOracleに所属した上でプロジェクトにコミットしている。一般的なOSS開発プロジェクトに見られるような、forkしたプロジェクトばかりでメインプロジェクトの継続性が不安視されることはない。

M2Mクラウドのアイデアは無限、デバイスメーカーは何を見るべきか

 デバイス単体の世界を考えるならばこれで十分だろう。

 しかし、前述のように、デバイスメーカーとして、新しいビジネスやサービスに目を向けた製品開発を考えるならば、来るべきM2Mクラウドの世界を視野に入れた製品開発が必要となる。

 スマートグリッドの例でいうと、電気メーターなどの個々の端末側が一定のデータを蓄積する機能を持つのはもちろんだが、最終的にはそれらデータをリアルタイムに集積した上で集中管理する。その理由の1つはエネルギーの生産と消費の需給をよりきめ細かく制御し、無駄をなくすためだ。この部分は社会インフラとして特定の事業者が参入してくることだろう。一方で、デバイスが発信する情報そのものは、特定の事業者にのみ解放されるものではなく、ある意味で自由な領域である。個人の利用しかり、特定のサービス事業者へも情報発信者本人の合意がありさえすれば提供できるものだ。

 これは、デバイスメーカー自身がアイデアを持ってサービス開発を行い、ある種のインフラを提供できるチャンスがここにあることを意味する。しかし、ハードウェアメーカーにとっては、ITサービス開発は未知の領域かもしれない。

M2Mクラウド全体を包括するサービスもOracle全体でカバーできる

 Oracleといえばエンタープライズデータベース製品のベンダーとして有名だ。そのOracleがBerkeley DBを提供する真意はどこにあるのだろうか。

 「Berkeley DBが世界中のデバイスに実装されたとして、そのデータを吸い上げ、管理していく上位レイヤーのデータベースもOracleの中でワンストップで提供できるのです。そのための接続のサポートはOracleとして保証しています。また、Oracle Big Data Applianceは、非構造化データを『Oracle Database 11g』に対して取得/整理/ロードするシステムですが、その構成要素の1つである『Oracle NoSQL Database』は、Berkeley DBを原型に開発されたものです」(信太氏)

システム構成図 システム構成図 デバイスから収集したデータを集中管理するには、Oracle Database Mobile Serverを経由してOracle 11gなどのデータベースサーバに集約できる。各製品間の連携についてはOracleがワンストップで提供できる利点がある
スマートグリッド向けのシステム構成の例 スマートグリッド向けのシステム構成の例 ここではARM版LinuxカーネルにJava版のBerkeley DBを実装した場合の例。こちらもOracle Database Mobile Serverを経由してOracle Databaseに接続できる

 デバイスとは双方向の通信が可能であり、Berkeley DBがプロファイルパラメータやその変更履歴を保持しているので、情報の抽出だけでなくデバイスの一括管理にも適した構成を組むことができる。Berkeley DBの場合、前述の通り、保持させるデータの定義はフレキシブルであるから、製品出荷時に想定していなかったような市場ニーズに対しても、ハードウェア側の制約がなければ、デバイスの構成変更である程度対応可能だろう。大量の端末を配布することになるスマートグリッド端末のような製品にとって、出荷後の製品サポート容易性は大きなアドバンテージとなろう。

 もちろん、最初からこうした大きなサービスを想定してスタートする必要はない。ミニマムな構成セットでスタートしたとしても状況次第では、同じソフトウェアアーキテクチャを採用したまま、上位のデータベースとの接続やその先のサービスを構築していくことができる。

 Appleが未来のテクノロジートレンドを考慮して製品ローンチ計画を進め、成功したように、この先の技術革新と市場ニーズを組み込んだアイデアを今のデバイスに落とし込んでおく準備ができれば、現段階では十分であろう。技術革新は、天変地異ではない。論路的に予測できる世界であり、それを予測できるのは技術を知る者の特権ともいえる。

 だからこそ、組み込み機器をいまその手で開発している技術者こそが世界を変える絵を描けるはずだ。

M2Mビジネスの発展を支援するための体制

 Oracleでは、デバイスメーカー向けの支援を積極的に行っている。

 例えばM2M向けのデバイスを開発しているとして、実装から製品化〜納品・設置が完了してからの改修となると、開発初期で大きな投資が難しい場合が少なくないはずだ。Oracleでは、こうしたビジネス上の課題に対して柔軟に対応する体制を整えているという。というのも、Oracle自身も新しいビジネス創造に向けた活動に積極的にコミットしているからだ。

 Oracleは、例えばヘルスケア機器向けのM2M通信規格策定にコミットしている。多くのハードウェアベンダーと並んで、新しいサービスのアイデアを自ら検討しているというわけだ。来るべきM2Mの世界にOracleとしてどのようにコミットしていくか、そしてそこに参加するプレーヤーたるデバイスメーカーをどのように支援していくべきかを積極的に検討しているという。

 「新しいデバイスやサービスの企画について、Berkeley DBやOracleがどう支援できるかについては真剣に共に考えていきたいと考えています。ですからデバイスの初出荷の段階で、出荷台数がある程度立ち上がるまでの期間のキャッシュアウトを避けるため、ライセンス費用の支払い方法について柔軟な対応が可能なケースもあるはずですから、一度声をかけてほしいと思います」(信太氏)

誰もが幸せになるサービスを、デバイスメーカーが作っていける世界

 Berkeley DBがコミットする世界について、信太氏は次のように語る。

 「M2Mの世界はエネルギーインフラを変えるだけに止まりません。ある通信事業者が電気ポットと通信デバイスを使い、ポットを押した動作を信号として高齢老人の行動把握サービスを展開しました。これは特定用途での利用例ですが、センサーデバイスの普及とM2Mの世界ではさらに高度な情報分析とそれによる社会貢献が可能になります。例えば病院のベッドに温度や動作を感知するセンサーを設置すれば、ナースコールのボタンを自身の意思で押せない状況を救えるかもしれません。誰もが幸せになるサービスを、デバイスメーカーが作っていける世界なのです」(信太氏)

 こうした世界を、多数の実績を持つBerkeley DBを軸としたデバイス、デバイスネットワークとITインフラが支えていく世界をOracleは期待しているという。


スマートグリッド向け組込機器の市場分析と事例紹介

 近い将来マーケットの拡大が見込めるスマートグリッド業界。しかし、その適用範囲は広く参入者も多い。統一の標準が策定されていないため、参入企業側としては具体的な展望が把握しにくく、いまだ踏みきれていない。

 このセミナーでは、組み込み機器の視点にフォーカスし、機器のタイプごとにマーケットの成長速度、展望、アプローチを、独自調査に基づき解説する。


日時 2012年5月9日(水)13:00 〜17:00(受付開始 12:30〜)

会場 日本オラクル株式会社 本社13Fセミナールーム

   〒107-0061 東京都港区北青山2-5-8オラクル青山センター(地図


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Berkeley DB 技術資料

Oracle Berkeley DB技術解説(PDF) Oracle Berkeley DBのアーキテクチャ、サポートする機能、SQLiteとの互換性、Mobile Sync ServerによるOracle DatabaseとのSyncについて紹介しています。

Oracle Berkeley DB開発者向け情報(PDF) Berkeley DBの入手方法から実際のアプリケーション開発までを解説しています。

Berkeley DB: Data Storage for the Edge and Beyond(PDF) Oracle Berkeley DBの製品の位置付け、特長、採用事例を紹介しています。



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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2012年5月11日

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(受付開始 12:30〜)
会場 日本オラクル株式会社 本社13Fセミナールーム
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