世界経済が混迷し、先を読むことがいよいよ困難となってきた。コスト削減のために、在庫圧縮も叫ばれている。こんな時代だからこそ、注目を集めているのが需要予測支援システムである。需要予測システム市場において、世界1万2000社以上、日本国内でも350社以上で導入されているのが「ForecastPRO」だ。キッコーマンではForecastPROの可能性にいち早く着目し、活用を始めてから数年がたつ。今回、その使用現場を訪問して、抱えていた課題と解決方法、ForecastPROの効果的な活用方法などを聞いた。
需給担当者の業務効率向上を実現できること
従来の人間系の予測ステップを変更することなく導入できること
専門知識なしに誰でも簡単に予測業務が可能なこと
時間をかけず需要予測の精度を向上できた
低コストながら期待どおりの効果を得ることができた
キッコーマンは、千葉県野田および流山の醤油製造家8家が合併して誕生した企業であり、最も古い家は1661年に創業している。
食に関して歴史のある日本を代表するメーカーであるが、早くからグローバル化を推進。すでに、海外の売り上げ割合は30%、利益は55%に達する。国内の醤油工場3カ所に対して、海外は米国2カ所、オランダ、シンガポール、台湾、中国と7カ所を持ち、100カ国に製品を提供している。
国内の醤油需要の減少傾向をいち早くとらえ、食品、酒類、飲料、医薬品など事業の多様化を進めてきた。キッコーマン株式会社 広報・IR部 伊東 宏氏は、「その1つがおそうざいの素『うちのごはん』シリーズです。フライパンで簡単におかずを作ることができ、弊社の主力製品に成長しつつあります」と説明する。
また、同社では食育活動にも注力している。小学校への社員による出前授業も積極的に行っており、年間全国で百回以上開催している。「2005年に『食育宣言』をしまして、全社をあげて取り組んでいます」(伊東氏)。
嗜(し)好の多様化やグローバル化に伴い、現在、同社では約2000アイテムの商品を提供している。その需要と供給のバランスを図り、最適な生産と在庫を確保するのが、ホストコンピュータで構築している需給システムである。
需要数量を予測する需給担当者は7人。当月の生産と販売量をチェックするとともに、翌月の需要予測をしている。同社 物流部 物流センター長 参事 松浦(まつら) 宏信氏に伺った。
「1人数百アイテムを担当するわけですが、日々の在庫チェック業務に需要予測業務が重なると大変です。経験に頼った予測ですから時間がかかっていました」。
毎月15日から20日過ぎまでがピークで、この期間の業務負荷が増えていた。そこで、松浦氏は予測業務の効率化を目指す支援ツールの導入を検討する。ところが、そのパッケージが途方もなく高い。見積もりは数千万〜1億円にも達する。「数人で行っている業務の効測精度の誤差を率化が大きな目的。これだけの投資をしても、とても回収を期待できません」(松浦氏)。
そんなときに見つけたのが日立東日本ソリューションズの提供するForecastPROであった。
松浦氏はForecastPROを試験導入し、驚いたことが3つあったという。
「まず、予測精度が高額なパッケージとほぼ同じレベルだということです。高額パッケージは予測機能以外に生産管理や在庫計画などのモジュールが付いているぶん、高くなっているようです」(松浦氏)。同社では構築済みの需給調整在庫管理システムがホストコンピュータで稼働している。付加機能の充実したパッケージは金額が張るだけで、魅力に乏しかった。
もう1つはForecastPROのスピード。「1000アイテムほどを選び、数年分のデータを入れて予測させました。そしたら1分ほどで結果が出てしまうのです。何かの間違いかと思ったほどです。ForecastPROのパフォーマンスは、当時のパソコンでも非常に高速に動きました」と、松浦氏は高く評価する。
そして3つ目が簡単な操作だ。「詳しいことは何も分からなくても、ワンボタンですぐに高精度な分析を開始します」(松浦氏)。ForecastPROには高度な分析アルゴリズムが複数搭載されているが、利用者はそのどれを選択するか考える必要がない。最適なものをForecastPRO側が自動で選択してくれる“エキスパートシステム”を搭載している。
導入したのは2002年。当時、日本での導入事例は少なかったものの、ForecastPROは世界でもトップクラスのシェアを誇り、多くの実績があった。「これだけの性能と価格、そして実績で導入を即決しました」と松浦氏は振り返る。
ForecastPROを導入してすぐに利用を開始したわけではなかった。どのアイテムをどの周期パターンで予測するかの検証を数カ月間行っている。
「ForecastPROは予測精度の誤差をグラフ上で確認できます。それによると例えば野田工場では500アイテムほど生産していますが、有効なのは150アイテムほどでした」と、松浦氏は語る。
周期パターンも1年を日/週/月いずれで切ると適正かを検証。週単位が最も高い精度を得られたが、週単位といっても週始めを元旦からの7日ずつで切るか、年初の月曜開始とするかなどの検証も重ねていった。さらに運用方法もシンプルにしていくことにした。ForecastPROを利用する需給担当者は専門職でも統計学の基礎知識を持っている社員でもない。前出のエキスパートシステムを最大限に活用して、素人でも即日使える簡単な使い方に徹している。
ホストコンピュータから販売データをForecastPROのインストールされたパソコンにダウンロードして、需要を予測。得られた結果をホストコンピュータに返して、需給調整システムに取り込んでいる。人が予測していた工程を、そのままForecastPROに置き換えたのである。
ForecastPROを導入して大きく変わったのは、需要予測業務の負荷軽減である。これは目的どおりの効果だ。さらに、予測精度も向上した。ForecastPROの出す予測値の精度が高いことが、人手をかける作業効率にも、良い相乗効果を生み出した。「それまで全アイテム一様に時間をかけて需要予測をしていました。しかし、ForecastPROにより瞬時にできるものが増えたため、予測が難しいアイテムにかける時間を増やせたのです。どうしても人間系でなければできない予測もありますし、人ならではの精度の向上もあります。その両方を使い分けることで、結果的に精度が向上できました」と、松浦氏は効果を語る。
ForecastPROの需要予測結果を松浦氏は毎月チェックしている。
「何らかの原因で、突然当たらなくなることがあります。そのアイテムをすぐに外して人間系に戻さないと、在庫が増え過ぎたり、欠品して販売機会損失になるからです」(松浦氏)。この作業のほか、年に2回は対象アイテムの見直しをしている。
「コンピュータと人間にはそれぞれ得手不得手があります。その振り分けが大切です。予測という未来の現象に関しては、コンピュータだから100%正しいというわけではないのです」と、松浦氏は説明する。
同社では全工場のアイテムにForecastPROによる需要予測を適用しているわけではない。「今後は活用範囲を広げていきたいですね。新製品導入など企画や開発部門でも使えるのではないかと考えています」と、松浦氏は抱負を語る。キッコーマンにおいて、ForecastPROの重要性はますます高まろうとしている。
社名 | キッコーマン株式会社 |
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設立 | 1917年(大正6年)12月7日 |
本社 | 〒278-8601 千葉県野田市野田250 |
代表取締役社長 | 染谷 光男 |
資本金 | 115億9900万円(2008年3月31日現在) |
従業員 | 個別:1771名(単独 2008年3月31日現在) |
第21回 設計・製造ソリューション展で、より詳細な在庫適正化の事例を紹介します。日立東日本ソリューションズ DMS特設サイト内セミナー情報をご覧ください。
いすゞ自動車株式会社 自動車サービスパーツの需要予測と発注改善
株式会社オートバックスセブン ロジスティックスセンターの在庫適正化
株式会社ポーラ 事業計画立案の業務改善
キッコーマン食品株式会社 需給計画立案の業務改善
井関農機株式会社 開発日程計画の「見える化」による設計プロセスの改善
設計業務での文書管理システム連携成功事例
富士ゼロックス株式会社 アークスウィート連携による設計プロセスの工数大幅削減を実現
ポーラ化成工業株式会社 商品企画および研究部門での総合的な「見える化」システムの実現
会期 | 2010年06月23日〜25日 |
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会場 | 東京国際展示場(東京ビッグサイト)東京都江東区有明3-21-1 |
ブース番号 | 東2ホール 14-001 |
出展情報 | 第21回設計・製造ソリューション展出展のご案内 |
※詳細は出展案内のページをご覧ください。
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提供:日立東日本ソリューションズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2010年6月30日