メカトロ機器を素早く動かしたい、LMガイドの剛性を見積もる:冴えない機械の救いかた(11)(4/4 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第11回は、メカトロ機器を素早く動かしたときに発生する振動問題を取り上げる。LMガイドやボールねじの構造を確認し、LMガイドにホリゾンタル荷重やヨーイングモーメントが作用したときの剛性を見積もる。
ばね定数を提示されてもピンと来ないよな
2つのばね定数が出ましたが、1つ目はホリゾンタル荷重による変位、2つ目はヨーイングモーメントによる回転角を表すため、そのままでは大小を比較できません。
図10に示すように、1つのLMブロックの上に板が付いているとして、板に荷重をかけ、その変位を求めてみましょう。図10に、ホリゾンタル荷重とヨーイングモーメントを発生させる荷重を示します。
表4にホリゾンタル荷重による変位量δlinear、表5にヨーイングモーメントによる変位量δrotを示します。同じ荷重なのに、ホリゾンタル荷重による変位量10[μm]に対し、ヨーイングモーメントによる変位量は1309[μm]となり、約130倍の違いがありました。原稿を書きながら、やっぱりこうなるよなと思いました。
「おい、ホントかよ」という気分になられた読者もおられると思うので、ラフな検算をしましょう。
ボールは8個なので、ボール1個当たりのホリゾンタル荷重は全体の8分の1となり、ボールのつぶれ量は式15となります。
LMブロックの変位量は、上記つぶれ量の倍なので10[μm]ですね。
今度は回転角の検算です。一番端のボールだけがあると仮定しましょう。図10から、ヨーイングモーメントを発生させる腕の長さは0.1[m]ですね。ヨーイングモーメントは式16となります。
図11に、一番端のボールだけがある場合を示します。ボールのピッチを4[mm]とすれば、L4=14[mm]=0.014[m]となり、中心回りのモーメントのつり合いは式17となります。
ボールに作用する荷重P4は式18となります。
ボールのつぶれ量は式19で表されます。
LMブロックの回転角は、上記のつぶれ量を2倍してL4で割ればよいですね。
ばね定数はモーメント÷回転角でした。
radは無次元量なので省略できますが、あえて書いておきました。
では、中心から100[mm]の位置の変位は式22となりますね。
前述した回転による変位量の倍ちょっととなりました。ボール2個しか荷重を支えていないので、こんなところでしょう。つまり、オーダーは合っていて、計算間違いはなさそうです。
ここで驚愕の事実があります。以下です。
LMガイドはモーメント荷重に対しては垂直荷重に比べて100倍以上柔らかい。
最初に面接触とボールを使った接触の剛性は2桁程度後者が小さいと書きました。それに加えて、LMガイドのモーメント荷重による剛性はあと2桁小さいということになりました。
実は、LMブロックの口開きも考慮する必要がありましたが、結論は変わらないので省略しました。LMガイドの剛性データ(ばね定数)は、メーカーに聞いていただければ簡単に教えてくれるので、前述した計算は不要です。
次回は、LMガイドのレイアウトをいろいろ変えたときの、1個使い、2個使い、4個使いの剛性について、失敗事例を交えてお話ししましょう。 (次回へ続く)
Profile
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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