締結されたボルトの許容繰り返し荷重、2本なら単純に2倍でよいのか?:冴えない機械の救いかた(8)(4/4 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第8回は、規定トルクで締め付けられたボルト1本構成の許容繰り返し荷重と、ボルト2本構成の場合の考え方を取り上げる。
ボルトが2本の場合
では、筆者の言いたいことを書きましょう。ボルトが2本以上の場合、前述した内力係数は使えません。ボルトが1本の場合でも、力の作用線がボルトの軸と一致しない場合は使えないのです。理由は、内力係数(式11の方です)ほど応力振幅が小さくならないためです。
内力係数を使ってボルトの設計をすると、危険側の見積もりをしてしまいます。つまり、計算上は大丈夫だが、実際に作ってみると疲労破断する可能性があると筆者は考えています。このようなことが書かれている文献は、筆者が調べた限りありません。筆者一人の主張です。強烈な少数派意見ですね。
では、その理由を述べましょう。ボルト2本の場合を計算してみました。図11に境界条件を、図12に解析結果を示します。図11では、ボルトの初期締結力をシミュレーションで再現してあります。
図12左図(初期締結、荷重なし)を見ると、ボルトが「ギューっ」と被締結体を締め付けていることが分かると思います。
図12左図で、口開きが発生していることに注目したいと思います。ボルト締結体の接触面は、接触していない領域(口開き領域)がかなり広いのです。そして、荷重を印加すると、図12右図のように口開きが広がります。
見た感じではボルト締結体はぴったり密着しているように見えますが、ミクロ的な観点で見るとこうなります。
口開きがあると、ボルトに発生する応力はどうなるかを検討しましょう。図13にボルト断面の応力分布を示します。図13右図に示すように、ボルト断面の応力分布は一定値ではなくなります。ボルトに曲げ応力が発生しているわけです。
図14に、ボルトに発生している応力振幅を示します。ボルト1本の場合は一様な応力分布ですが、図14を見ると、ボルト2本の場合は、荷重の総量(応力に微小面積を掛けて積分したもの)が同じでも、曲げ応力成分によって最大応力は大きくなります。つまり、応力振幅が増大します。
「ボルトをもっとギューっと締め付ければ、曲げ応力成分は無視できるほど小さくなりますよ」との反論があろうかと思いますが、曲げ応力成分は、荷重の作用線とボルトの軸線が離れるほど大きくなります。いずれ数値で示しますが、ボルトの位置や被締結体の板厚で曲げ応力成分が変化し、場合によっては内力係数Φでの“お得感成分”が帳消しになります。
何回か別の話題をお話しした後で、「ボルト破断事例の残り」と称して、前述した内容を説明しようと思います。現時点で言えることは以下です。
文献に従って、ボルト1本での許容繰り返し荷重を求めた後、ボルト2本構成の部品を設計したとする。ボルト2本構成での許容繰り返し荷重は必ずボルト1本構成の2倍以下となるため、1本構成で求めた値を単純に2倍してはならない。
主張する人が筆者一人だけだという、定説になりようのない理屈を展開しました。ボルトの話は少し飽きましたね。いくつか異なる事例を紹介してから、ボルトの後半を話しましょう。次回は、「弱い箇所が1か所でもあると台無しメカになった失敗事例」を2つ紹介します。 (次回へ続く)
Profile
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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