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平面度を上げても均一加圧できない ナノインプリント金型設計をCAEで追い込む冴えない機械の救いかた(4)(6/6 ページ)

本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第4回は、ナノインプリント加工用金型の開発事例を取り上げる。均一な圧力で押せないという問題に対し、感圧紙による“見える化”とCAE解析による試行錯誤を組み合わせながら、短時間で最適な金型形状を導き出していった過程を紹介する。

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2.5次元の誘惑

 あらためて図14を見ていただくと、3次元問題を2次元問題で実現したような感じで、「お得感」があります。「2.5次元」と呼んでもいいと思います。1回の試行錯誤に要する時間が大幅に短縮されるので、かなり魅力的です。最適解探索問題などでは、積極的に採用を検討したいところです。

 軸対称要素のもう1つの利点は、剛体変位が原理的にないことです。図10の解析だと、ワークとスタンパは滑って水平方向に剛体変位する可能性があり、非線形解析が収束しないことがあると書きました。しかし、図14の軸対称要素では、ワークとスタンパは水平方向に剛体変位しません。水平方向の移動があるとすれば弾性変形です。垂直方向は金型に挟まれているので、比較的早く計算が収束します。

 2次元解析の注意点も述べておきます。図18に、2次元問題の3D CADモデルを示します。これから要素分割する面(オレンジ色で示した面)は、必ずXY平面上に配置してください。軸対称問題では、回転軸はY軸と一致させます。

2次元問題の3D CADモデル
図18 2次元問題の3D CADモデル[クリックで拡大]

 図19に要素分割図を示します。図18のオレンジ色の面に対して要素分割を行います。全ての節点のZ座標はゼロです。

要素分割図
図19 要素分割図[クリックで拡大]

 問題は荷重の与え方です。通常の2次元問題では、図20左図に示すように、単位長さ当たりの荷重値を入力します。ここで、有限要素法モデルが[mm]単位で作られているのか、[m]単位で作られているのかを知る必要があります。昔の有限要素法ソフトでは、自分で節点座標を入力していたので、すぐに分かったのですが、3D CADで作成したSTEP形式のモデルを読み込んだ場合などは、モデルの単位を知るのに少し骨が折れます。

荷重値
図20 荷重値[クリックで拡大]

 軸対称問題の荷重値は、1[rad]当たりの荷重値を入力することが多いのですが、360度1周分の荷重値を入力するものもあるようです。この問題も、ソフトの取説と格闘することになり、なかなか厄介です。

 解決策は、荷重値を[N]単位で設定するのではなく、圧力である[Pa]単位に換算して、圧力荷重として設定することです。これなら、荷重値に関するお約束を調べる必要がありませんね。

感圧紙を使うときの注意点

 もし感圧紙に測定レンジ以上の圧力がかかった場合、どうなるのでしょうか。紫色になるわけではなく、真っ赤になります。つまりサチュレートします。

 感圧紙を使うときは、図7の色見本を見ながら、全体がピンク色になるような加圧力で測定しなければなりません。これは大切なことです。

 仮に、客先納品物の検収条件が「加圧力が一定であること」だったとして、図21左図のように検収条件を満たさなかった場合、どうするのでしょうか。もちろん、再設計ですね。

 でも、荷重条件を変えて高い圧力で測定すると、感圧紙はサチュレートして真っ赤になります。その結果、図21右図のように、あたかも圧力が均一かのようなデータが取れてしまう、というチートがあります。

測定レンジを超える圧力で測定した例
図21 測定レンジを超える圧力で測定した例[クリックで拡大]

 筆者は、このようなインチキテクニックを教えているつもりは毛頭なく、このようなチートを見破る方法を紹介しているのです。いわば、「ホワイトハッカー」的な活動をしているのです。筆者は決して、定年を境にハッカーからホワイトハッカーに転身したとか、黒魔術師から白魔術師へ変身したわけではありません。入社したときから、ホワイトハッカーを目指していたはずです。



 次回は、感圧紙画像を「パッと見」だけで判断するのではなく、数値化する方法を紹介します。昭和のテレビも登場します。 (次回へ続く)

参考文献:

  • [1]富士フイルム|Webサイト
  • [2]特許第4718946号

⇒「連載バックナンバー」はこちら

Profile

高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表

1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。

構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ


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