感圧紙の「赤」を見ちゃダメ RGB値で加圧力を数値化する方法:冴えない機械の救いかた(5)(1/5 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第5回は、感圧紙のRGB値を用いて加圧力を数値化する方法と、測定値を扱う際の注意点について解説する。
前回は、微細加工のうち、ナノインプリント加工用金型の失敗事例と開発経緯について取り上げました。今回は、加圧力を数値化するお話です。
感圧紙のピンク色から赤色に分布した画像は、「パッと見」だけでも十分価値のある情報ですが、ここでは図1のように圧力を数値化する方法を紹介します。
といっても、これは20年前のお話です。今では感圧紙メーカーから、圧力値などを数値化するスマホアプリが販売されているので、これを使えば問題解決です。ですが、今回はスマホアプリを買わずに、自分で数値化する方法を解説します。
また、「計測器メーカーは助けてくれない」という話をいずれ紹介するのですが、自分自身で測定問題を解決するためのヒントになればと思い、取り上げることにしました。
圧力数値化ソフトを作ろう
当時も、圧力を数値化するソフトは販売されていました。しかし、事務所にスキャナーがあり、さらにビットマップ形式の画像データ(*.bmp)を読み取る「Visual Basic」のソースコードが手元にあるような状況だと、ソフトを発注する前に、自分でプログラムを作ってしまいますよね。
ビットマップ形式の画像データを読み取るVisual Basicのソースコードは巻末に記載してあります。これは他の目的で、1994年に「Windows 3.1」マシン向けに作ったものです。……といっても、もはや誰も使わないですよね。今なら「ChatGPT」に作ってもらった方がいいでしょう。
圧力の数値化作業では、最初に感圧紙をスキャナーで読み込み、24bitのビットマップ形式(*.bmp)で保存します。jpg形式で読み込んで、後からビットマップ形式に変換することもできますが、jpg形式だと、後に説明するRGB値が少しおかしくなります。どうしてもjpg形式を使うのであれば、画質レベルを最高(圧縮率は最低)に設定します。
白い光の波長
虹を見ると、太陽光は7つの色が重なっている(足し算されている)ことが分かります。色と色の境目はなく、色(色相)の変化は連続しています。では、誰が「7色」と決めたのでしょうか。楠田枝里子さんの著書によると、虹の色は5色の国もあれば、3色の国もあるそうです。若いころ、「虹の青色の外側は紫外線だから、見つめない方がいいよ」なんて、おバカなことを言ったりしていました。
子どもが描いた虹の絵や、大人が描いた虹のイラストを見ると、きっちり7色に塗り分けられています。多分、目の網膜には色の境目のない虹が結像されていると思うのですが、脳内で変換されて、塗り分けられた絵になるのでしょう。
モノづくりの現場で問題が起きたときや、筆者の場合だと、生産現場で使われる装置に何らかの問題が起きたときに、ワークの状態、装置の挙動、測定データを見てアクションを起こします。でも、「見た通りの現象に従ったアクションを本当に起こしているのか?」を疑う必要があると考えています。
コストや納期、その他のいろいろな要因によって、見た姿に従った本来取るべきアクションとは別の方向へ、脳内で変換されてしまっているかどうかを俯瞰(ふかん)してみる必要があると思います。
虹のイラストという身近な例が転がっているのだから、モノづくりの現場にも、この手のことはゴロゴロ転がっているのかもしれません。
似たようなことは、時間軸でもあるように思います。林修先生の「いつやるの? 今でしょ」という発言を知らない人はいないでしょう。では、それを実践しているサラリーマンは何%くらいいるのでしょうか。知っていながら、ゆっくり仕事をしていて、何かいいことがあるのでしょうか。……話がかなりそれてしまいましたね。
以前のシリーズで、音や振動の周波数分析を紹介しました。光も周波数分析ができ、これを「分光」といいます。この場合は周波数ではなく、「振動数」と呼びます。波長は光の速さを振動数で割ったものなので、光の周波数分析の横軸は波長となります。
太陽光の周波数分析結果(「太陽光のスペクトル」といいます)を図2に示します。
では、「白色」のスペクトルはどのようなものでしょうか。詳しくはないのですが、正午ごろの太陽光を白色と考えていいと思います。白い石こう球を買ってきて、お昼ごろに一眼レフのデジカメで撮影したものを図3に示します。筆者には白く見えます。
実は、この石こう球は2つの光源に照らされています。1つは太陽、もう1つは青空です。この結果、ベース板の球の影になっているところが水色になっています。
また脱線しましょう。NHKの番組で紹介されていた内容です。昔の日本には、色は4色しかなかったそうです。色の名前がそのまま形容詞になる色がそれで、「白い」「黒い」「赤い」「青い」の4色です。筆者の上の子が幼稚園児だったころ、「ピンクい」と言っていたのは例外です。
白、黒、赤は、例えば夕日などのように対象物がはっきりしています。白、黒、赤以外の色は、全て「青」だったそうです。沖縄のおばあちゃんに黄色を見せたところ、「青」と答えていたNHKの映像を記憶しています。遠くに見える「青い山脈」の色は、木の葉の緑色には見えませんよね。もやがかかっていて彩度が落ちているというか、灰色に近いような感じです。そんな感じの色が青だったそうです。信号機の青信号も、筆者には緑色に見えますが、読者の皆さんには何色に見えているのでしょうか。
本題に戻りましょう。白色のスペクトルについては分かりました。では、図4に示した昭和のテレビのブラウン管を虫メガネで見てみましょう。
ブラウン管には、赤、青、緑色の小さな粒が光っています。ということは、図2のような連続スペクトルでなくても、人の目には白色に見える別のスペクトルがあるようです。
図5に、筆者が想像した「ブラウン管が白く見えるスペクトル」を描いてみました。図2とは全然違うのですが、白に見えるのです。
なぜ、赤色、青色、緑色だけで白に見えたり、いろいろな色を表現できたりするのでしょうか。これは、目の網膜に、赤色、青色、緑色の光にそれぞれ感度の高い錐体細胞があるためです。読者の皆さんもご存じだと思います。
あと1つ、白に見えるスペクトルを紹介します。白色LEDです。液晶表示パネルのバックライトに使われるLED照明には、赤色、青色、緑色成分が含まれています。一方、普通の白色LED照明の場合、LED本体は短めの波長の青色光を発光するだけで、その青色を当てると、黄色を中心とした幅広いスペクトル光を発光する蛍光体で構成されています。端的にいうと、青色と黄色で白色を表現しているのです。
どうして、冴えない機械の説明で、白色のことをくどくどと話しているのかというと、いいかげんな方法で感圧紙の色を測定すると、ダメダメな結果になってしまうことを説明したいからです。
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