平面度を上げても均一加圧できない ナノインプリント金型設計をCAEで追い込む:冴えない機械の救いかた(4)(1/6 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第4回は、ナノインプリント加工用金型の開発事例を取り上げる。均一な圧力で押せないという問題に対し、感圧紙による“見える化”とCAE解析による試行錯誤を組み合わせながら、短時間で最適な金型形状を導き出していった過程を紹介する。
今回は、微細加工の1つであるナノインプリント加工用金型の失敗事例と、その開発経緯についてのお話です。
読者の方の中には、大きな印鑑を押したとき、均一に押したはずなのに、図1のようにハンコの中央部分が少し薄くなった経験がある方もいらっしゃるかと思います。このようにならないよう、押印時には紙の下にゴムシートを敷きます。
本稿では、押したときに均一な圧力が発生する金型を開発した際の、初期段階での失敗事例と、シミュレーション技術を駆使して目標を達成した事例を紹介します。圧力均一性が評価指標だったため、評価手段である感圧紙と、感圧紙を用いた圧力数値化方法(次回で説明します)についても解説します。
ナノインプリント加工
露光装置を使った半導体製造では、微細加工のサイズ(ここでは「線幅」と呼びましょう)は、露光する光の波長の制約を受けます。筆者は半導体製造の仕事をしたことがないので詳しくはないのですが、大体、線幅と同程度の波長の光が必要なようです。
今回の話は20年ほど前のことで、線幅は2桁nm(ナノメートル)の小さな分類というかなり微細なサイズでした。試作品であれば露光装置を使った加工で対応できたのですが、量産を前提としていたため、別の方法で加工しようということになりました。
それがインプリント加工です。nmサイズの加工を行うので、ナノインプリントと呼んでいます。ナノインプリント加工にもいろいろありますが、ここで紹介するのはハンコ方式です。図2に、ハンコ方式のナノインプリント加工を示します。ハンコ方式なので、光の波長による制約はありませんが、原子直径より小さな凹凸を形成することはできません。
スタンパ(原盤)に使用する材料の原子半径が0.135[nm]くらいだとすると、今回の線幅には150個弱くらいの原子が並ぶことになります。そのため、ハンコ方式でも凹凸を形成できました。
均一加圧ができる金型が必要だ
図2(4)のスタンパを均一な圧力で押し付ける工程を考えましょう。図3にナノインプリント装置を示します。……といっても、どこにでもあるダイセットですね。量産を前提とすると、装置は単純な構成にしなければなりません。
スタンパとベース基板(以降、「ワーク」と呼びます)を金型で挟み、プレスで加工します。このとき、プレスや金型に何らかの不都合があって圧力が均一にならなかったとすると、図4のようになるでしょうか。なお、ワークの直径についてお話しすると何を生産しているのかがバレてしまいますので、伏せておくことにします。
実は、自由表面を扱える流体解析ソフトで図4のレジストの挙動をシミュレーションしていたのですが、本題からそれるので割愛することにします。
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