平面度を上げても均一加圧できない ナノインプリント金型設計をCAEで追い込む:冴えない機械の救いかた(4)(5/6 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第4回は、ナノインプリント加工用金型の開発事例を取り上げる。均一な圧力で押せないという問題に対し、感圧紙による“見える化”とCAE解析による試行錯誤を組み合わせながら、短時間で最適な金型形状を導き出していった過程を紹介する。
で、どうやったの?
図15に、解析モデルのうち金型だけを描いております。
着色した要素をマウスでポチッと選択して削除し、圧力分布を計算しました。試行錯誤の回数は数回だったと記憶しております。
いくつかの要素を削除した場合の計算結果(新しい金型)と、要素を削除しない金型(従来)の圧力分布を図16に示します。
普通、このような生々しいデータは公表できないのですが、この図は特許資料なので公知のものです。図示したように、圧力分布が均一になる金型形状が見つかりました。
Ansysから節点座標を出力し、その数値を使って製作図面を描きました。朝から始めて10時半ごろに解が見つかり、製作図面の作図まで午前中で済んだと記憶しております。
「マウスでポチポチッと選択したらできちゃった」というのは、かなり行き当たりばったり的なのですが、後にパラメーター最適化問題として解いています。結果はあまり変わらなかったと記憶しております。最適化問題では大量の解析を実行するので、1回当たりの計算時間を短くすることは有効です。
本命と穴馬の逆転、Ansys恐るべし
筆者が勤めていた会社には研究所がいくつかありました。社内では研究所の格付けなどは禁句ですが、筆者なりの評価基準として、博士号を持っている研究者の比率や、所長が会社役員かどうかで格付けすると、筆者の所属していた研究所は下の方でした。この金型の仕事は、最上級クラスの研究所から委託されたものでした。
委託元のグループは、もともと金型専業メーカーに金型を発注していました。ただ、当時は潤沢に研究費があり、筆者のところにも「試しに作ってみてください」的な感じで、金型製作の発注があったのでした。金型専業メーカーを本命馬とすると、筆者は穴馬以下の立ち位置だったといえるでしょう。
そのような状況の中で、前述した金型を作ったところ、図17のような結果となり、一発で性能が出たのです。
CAE解析は強度計算に使われることが多く、強度が出て当たり前ともいえます。そのため、強度計算という行為自体が、直接的な付加価値として見えにくい場合もあります。しかし、今回の例は価値あるものを生み出したことになります。設計において、シミュレーションの威力が発揮された例といえるでしょう。
この感圧紙画像にはパンチというか説得力があり、前述した本命馬と穴馬が逆転しました。その後、かつての本命馬は出走しなくなりました。本命と穴馬が逆転したので、「Ansys恐るべし」です。でも、研究所というのは自主研究だけではなく、委託元から研究費を受けて研究することも多くあります。今回は、研究を委託されて研究費をもらっていた研究所から仕事をいただいて、研究費をもらっていたのですから「ミイラ取りがミイラになった」ようですね。
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![圧力分布のシミュレーション結果(参考文献[2])](https://image.itmedia.co.jp/mn/articles/2605/14/ay4328_saenai04_fig16_w590.jpg)
