なぜ設計プロセスで「完璧な設計」ができないのか:製品リコールを生む品質不良の原因と対策(3)(3/3 ページ)
設計品質と量産品質の構造を整理し、品質不良が生まれるメカニズムを体系的に考察する連載「製品リコールを生む品質不良の原因と対策」。第3回では、設計プロセスにおいて完璧な設計ができない理由と、その対策について解説する。
自社製品を参考にする
自社製品を参考にすることは、非常に重要である。既に市場に出ている自社製品であれば、現時点で品質不良を発生させておらず、その製品メーカーが許容する品質レベルを満たしているはずである。既存製品から類似する設計箇所を見つけ出し、それを参考にするのである。筆者は設計に悩むと、社内を歩き回り、分解してある自社製品の設計を参考にしていた。
審査と試験の内容を考えるのが難しい問題
リコールが多い二次電池の品質不良が、これに当てはまる。電気用品安全法の対象となる製品や関連する安全基準に適合していても、現実には多くの製品が発熱や発火事故を起こしている。最近は、二次電池を内蔵する製品のバリエーションが広がり、二次電池の形状も多種多様である。さらにハンディー製品が多いため、ユーザーの製品の使い方もさまざまである。そのため、適切な審査や試験の内容を考え出すことは難しい。
できることは、前述したFMEAを十分に行い、ユーザーのあらゆる使用方法と使用環境を漏れなく想定し、複数の試験を実施することである。例えば、手で持つ携帯型扇風機の二次電池の発熱/発火の危険性を確認する試験であれば、下記を想定してFMEAを行い、それに基づいて審査と試験内容を検討する。
- 使用方法
- ネックストラップの掛け外し中に、頭上の高さから製品が落下する
- ハンドストラップを手に持ち、製品が電柱などにぶつかる
- 製品を手に持ち、バッテリー部が温まる
- 充電しながら製品を使用する
- 使用環境
- 製品を車内に放置し、高温状態で使用する
- 高温の作業場で製品を長時間使用する
- 顔や手からの汗が製品内に入る
- 噴水/海の近くで使用し、製品内に水滴が入る
ユーザーの使用方法や使用環境を想定できることも、設計者の重要な設計スキルの一つである。 (次回へ続く)
筆者プロフィール
オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)
上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。
◆ロジカル・エンジニアリング Webサイト ⇒ https://roji.global/
◆著書
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