品質は誰が、どのように確認しているのか:製品リコールを生む品質不良の原因と対策(2)(1/3 ページ)
設計品質と量産品質の構造を整理し、品質不良が生まれるメカニズムを体系的に考察する連載「製品リコールを生む品質不良の原因と対策」。第2回では、設計品質と量産品質が誰によって、どのような方法で確認されているのかを整理する。さらに、設計プロセスと量産プロセスの両方で担保される「製造性」に着目し、品質不良が安全問題やリコールへとつながる構造について解説する。
品質確認の内容と担当者、確認方法
連載第1回では、設計プロセスと量産プロセスの中で品質確認が行われていることを説明した。今回は、製品メーカーが確認する「設計品質」と、組立メーカーが確認する「量産品質」について、それぞれの確認内容、担当者、確認方法を整理する。
製品メーカー
製品メーカーでは、設計者と品質担当者が審査と試験によって、次の3つの設計品質を確認する。
試作を行う前に設計データで確認するのが審査であり、試作セットを用いて確認するのが試験である。試作セットが正常に機能することを確認した上で試験を行うため、機能性は満たされていることが前提だ。
- 安全性(審査と試験で確認)
- 信頼性(審査と試験で確認)
- 製造性(審査と試作セットの組み立て時に確認)
製造性を確認するための試験はないので、試作セットを組み立てる際に確認する。この確認は、設計者だけでなく、組立メーカーの製造技術者や品質担当者と一緒に行うことが望ましい。
設計品質の詳細については、以下の連載を参照してほしい。
組立メーカー
組立メーカーでは、次の方法で量産品質である製造性を確認する。
製造性とは「正しく組み立てやすいこと」である。「受入検査」「工程内検査」「出荷検査」では、「正しく組み立てられている」という製造性の結果を確認し、「監査」では製造性を担保する品質管理システムを確認する。
- 受入検査(購入部品が設計仕様通りか)
- 工程内検査(製品が正しく組み立てられているか)
- 出荷検査(製品が正しく組み立てられているか)
- 監査(品質管理システムが適切に機能しているか)
監査は品質担当者が行い、工程内検査は組立作業者が行う。受入検査と出荷検査の担当者は、組立メーカーによってさまざまだ。
また、組立メーカーでは製品を組み立てるが、その前段階として、製造技術者が正しく組み立てやすいことを配慮して製造ラインを構築する。よって、上記4つの確認作業は「製造ラインが適切に構築されているか」を確認しているともいえる(図1)。
受入検査の対象となる購入部品には、新たに設計した部品と、ビスなどのカタログ品がある。新規に設計した部品は、設計者が作成した設計図や仕様書に基づいて検査するが、カタログ品は良品を前提として検査を行わない場合も多い。このカタログ品の不良が、製品の品質不良の原因となるケースも少なくない。
製造性は設計プロセスと量産プロセスの両方で担保される
製造性とは「正しく組み立てやすいこと」であり、設計プロセスと量産プロセスの両方で担保しなければならない。
製品メーカーの設計者は、設計プロセスにおいて正しく組み立てやすいことを配慮して設計を行い、審査や試作セットの組み立て時にそれを確認する。この際には、組立メーカーの製造技術者や品質担当者にも立ち会ってもらい、設計プロセスだけでは配慮しきれない内容を量産プロセスで対応できるかどうかを検討する。
これを、2次バッテリーを内蔵する製品を例に説明する。
図2のように、2次バッテリーと上下カバーの間に両面テープ付きクッションを挟み込む組み立てを行うとする。図2上段の3つは、いずれも正しい組み立て例である。ここでは赤枠で示したクッションの位置に着目してほしい。
例えば、図2下段の3つのように、2次バッテリーの両側面に貼るクッションを誤って上方の位置に貼ってしまったとする。そして、その直後の目視による工程内検査で気付かず、さらに2次バッテリーが下カバーに取り付けられた直後の工程内検査でも見逃された場合、2次バッテリーは左右に動く状態となってしまう。そうすると、衝撃を受けた際にバッテリーが発熱や発火する危険が生じる可能性がある。
このように、正しく組み立てられているかどうかを量産プロセスの工程内検査だけに依存すると、図2のような問題が発生する可能性がある。
しかし、設計プロセスの段階でも製造性に配慮した設計は可能である。図3のように、クッションを2次バッテリー側に貼るのではなく、下カバーに当て付けてから下カバーのリブに貼り付ける構造にすればよい。
この場合、工程内検査ではクッションが下カバーに当て付けられて貼られているかどうかを目視で確認すればよい。クッションと2次バッテリーとの曖昧な位置関係を確認する必要がなくなり、判定が容易になる。さらに、クッションを当て付けて貼る作業は容易であるため、組み立て作業時間の短縮にもつながる。
ただし、設計上の制約などにより、図3のような設計に変更できない場合もある。その場合には、クッションが2次バッテリーの適切な位置に確実に貼られるような治具を作製する、あるいは量産プロセスの工程内検査をより確実に行う工夫をするなどして、製造性を担保しなければならない。
このように、正しく組み立てやすいことを示す製造性は、設計プロセスの設計者と量産プロセスの組立作業者の両者の協力によって担保されるものである。そのため、設計プロセスの試作セットの組み立て時には、製品メーカーの設計者と組立メーカーの製造技術者や品質担当者が話し合い、協力して検討を行うことが重要になる。
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