なぜ設計プロセスで「完璧な設計」ができないのか:製品リコールを生む品質不良の原因と対策(3)(2/3 ページ)
設計品質と量産品質の構造を整理し、品質不良が生まれるメカニズムを体系的に考察する連載「製品リコールを生む品質不良の原因と対策」。第3回では、設計プロセスにおいて完璧な設計ができない理由と、その対策について解説する。
メンバーを決めて審査する
審査に参加するメンバーは、あらかじめ決めておくことが望ましい。図3右側に担当者を記載している。現実には、これらの担当者全員が同席する会議を開催するのは難しい。また、項目によっては不要な担当者もいる。そのため、担当者ごとに確認会議を開くか、設計者が一通り確認した後に、判断が難しい内容のみを個別に確認する方法もある。
安全性については、「FMEA(故障モード影響解析)」で小項目を洗い出す。詳しくは「試作セットの設計検証(試験や測定)項目の決め方【前編】」を確認するとよい。また、信頼性と製造性については「試作セットの設計検証(試験や測定)項目の決め方【後編】」で取り上げている。
- 参考記事:
- 【安全性】試作セットの設計検証(試験や測定)項目の決め方【前編】
- 【信頼性/製造性】試作セットの設計検証(試験や測定)項目の決め方【後編】
試験と測定で確認する
機能性の一部(例えば、扇風機の首振り角度など)は測定によって確認し、安全性と信頼性は試験によって確認する。試験項目は審査項目と同様であるため、前述の記事を参照するとよい。一般的な製品で実施される試験内容はJISなどに記載されているが、それ以外については、製品メーカーが独自に試験内容を決める必要がある。
Web検索で「扇風機 試験」と入力すると、JIS規格や試験機関が表示されるため、それらを参考にするとよい。全くのオリジナル機能の試験内容は、製品メーカーが一から検討するか、専門家に相談する必要がある。
試験内容の考え方は、「製品が簡単に壊れると、ユーザーはがっかりしませんか?」を参照するとよい。法規制で定められる安全規格以外の試験内容は企業機密であるため、公開されない。つまり、独自に決めた試験内容がその製品メーカーの品質レベルとなる。
品質不良の実例
空中を樹脂製の羽根が回転しながら飛ぶ円盤状の玩具がある。遊び方によっては、回転する羽根が人に触れてけがをする可能性があることからリコールとなった。これは、FMEAで危険な使用方法を十分に想定できなかったことが原因の一つである。過去に前例のない製品では、FMEAをはじめとするリスク分析が極めて重要になる。
最近、筆者が愛用しているメガネの開閉部(丁番)にクラックが入り、テンプル(つる)が外れてしまった。メガネを片手で持つときや外すとき、テンプルがやや大きく開くため、その角度に耐えられる設計と、その後の審査や試験が重要である。設計上、亀裂が入りやすい形状であることを審査で把握できず、開き角度と開閉回数を適切に設定した試験が十分に実施できなかったことが、原因の一つであると考えられる。
設計基準書を確認する
設計基準書を作成し、それを参考に設計を進める。設計基準書の該当項目を審査項目として活用してもよい。
だが、そもそも設計基準書がない製品メーカーも多いのではないだろうか。製品の仕様は千差万別であり、新しい材質や部品が次々に登場し、法規制も頻繁に変わる。例えば、樹脂部品によく見られる、ビスを固定するボスの穴径に決まった値はない。同じ直径のビスを使用しても、部品の目的や製品に必要な法規制によって樹脂の材質は異なり、ボスの位置によってビスの長さも異なる。これらの組み合わせによってボスの穴径は少しずつ変わるため、絶対的な設計基準書は作れない。つまり、たとえ作成してもすぐに陳腐化し、参考程度にしかならないため、設計基準書を作らないのである。
しかしながら、参考という形であっても設計基準書を作成することは重要である。上記のボスの穴径の場合では、ある樹脂の材質とビスの長さでの設計例を示しておき、樹脂の材質やビスの長さによって最適な穴径が変化することを理解できるようにし、最終的には試作部品での確認が必要であると記載しておけばよい。
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