検索
連載

なぜ設計プロセスで「完璧な設計」ができないのか製品リコールを生む品質不良の原因と対策(3)(1/3 ページ)

設計品質と量産品質の構造を整理し、品質不良が生まれるメカニズムを体系的に考察する連載「製品リコールを生む品質不良の原因と対策」。第3回では、設計プロセスにおいて完璧な設計ができない理由と、その対策について解説する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 設計プロセス量産プロセスも、製品を作製した後には必ず製品を確認する作業が入る。これらをマトリクス図にしたものが図1である。図1右側には、設計プロセスを外注するODM(設計製造委託)を行う場合があるため「ODMの問題」を、量産プロセスでは部品を外注先から購入するのが一般的であるため「外注先の問題」を追加している。

設計プロセス/量産プロセス、製品を作製/製品を確認のマトリクス図
図1 設計プロセス/量産プロセス、製品を作製/製品を確認のマトリクス図[クリックで拡大]

 完璧な設計であれば審査や試験は不要であり、完璧な量産(組み立て)であれば受入検査、工程内検査、出荷検査、監査も不要である。受入検査は自社で量産しない外注部品の品質確認であるが、外注先が完璧な部品を量産していれば、これも不要となる。

 まず、図1の設計プロセスを見ると、現実には完璧な設計ができないため、その後に審査や試験が存在している。では、なぜ完璧な設計ができないのかについて、以下で説明する。なお、ここでいう完璧な設計とは、審査や試験で追加の不具合が発見されない水準の設計を指す。

設計プロセスで完璧な設計にならない理由と対策
図2 設計プロセスで完璧な設計にならない理由と対策[クリックで拡大]

 完璧な設計にならない理由は、次の2つである。

  • 設計者の設計スキルが低い
  • 製品メーカーの品質レベルが低い

 今回は「設計者の設計スキルが低い」について解説する。

設計者の設計スキルが低い

 製品メーカーの品質レベルは、そのメーカーに一任されている。よって、設計者の設計スキルが低いこと自体は問題とはいえない。ただし、法規制を満たさない/リコールにつながる/ユーザーに迷惑を掛ける製品を設計してはならない。

 また、製品メーカーが定める品質レベルを満たす設計ができないほど設計者の設計スキルが低い場合は、社員教育によって設計スキルを一定のレベルまで引き上げる必要がある。

 例えば、設計スキルの低い新人社員について、筆者が新人であったころを振り返ると、次のようなものであった。

 入社後最初の2年間は、上司の下で比較的簡単な派生モデルの設計を行った。最初は上司主導の設計を手伝い、次に筆者主導の設計を上司の指導の下で進めた。そして、3年目からは自立して設計を行ったが、随所で上司の指導を受けていた。

 最初の2年間をOJT(職場内訓練)期間と考えると、期間は異なっても、その内容は他の企業でもおおむね同様であろう。しかし、OJTがあっても設計者や上司によっては設計スキルが十分に向上しない場合もある。そのため、次の方法で設計する製品の品質レベルを担保する。

漏れのないフォーマットを作成して審査する

 試作セットを作製する前に、設計者が作成した設計データ(CADデータや部品表)を関係者で確認する審査を行い、品質不良の原因となり得る問題点を抽出する。

 審査項目はあらかじめ定めておき、それに従って審査する。品質レベルを製品メーカーの定めるレベルに合わせるためには、大項目をフォーマットとして定めておくことが望ましい。製品ごとに異なる内容は小項目として個別に記載するが、類似カテゴリー製品ごとにフォーマットを作成する場合は、共通する小項目をあらかじめ記載しておいてもよい。

 図3は、扇風機を例にした審査と試験/測定の項目である。大項目には、以前の連載で設計品質として示した「安全性」「信頼性」「製造性」に加え、広義の設計品質として「機能性」「サービス性」「社内ルール」「総部品コスト」も記載している。

扇風機の審査と試験/測定の項目
図3 扇風機の審査と試験/測定の項目[クリックで拡大]

 法規制である安全規格の確認は、安全性の一部である。審査で可能な範囲の確認を行うが、試作セットの完成後に専門機関で確認することが有効だ。防水/防塵(じん)性能などの規格は信頼性の一部であり、JIS(日本産業規格)などに基づく試験が必要となるが、審査でも可能な限り確認する。例えば、防水機構であれば、適切な箇所に防水パッキンがあるか、嵌合寸法は適切か、パッキンの材料は適切かなどを確認する必要がある。

 審査は設計データで確認するのが一般的であるが、CADのシミュレーション機能を活用すれば、多くの項目を確認できる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る