直動パーツフィーダー不具合をばね−マス系で読み解く:冴えない機械の救いかた(3)(4/4 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第3回は、同一設計にもかかわらず性能にばらつきが生じる直動パーツフィーダーの不具合を取り上げ、ばね−マス系と伝達関数の考え方から原因と対策の方向性を整理する。
「オイ、糸魚川の件、忘れていないか」
機械の挙動が再現しない理由は説明しました。しかし、「糸魚川の件はどうなったのか」と読者の方はお思いでしょう。図8に、第1回で示した振動しているお皿に載っている角砂糖に作用する力を示します。角砂糖が前進する理由は、「お皿の移動方向によって角砂糖に作用する摩擦力が変化するためだ」と述べました。
今、式11の変位でお皿が振動しているとしましょう。
角砂糖に作用する摩擦力は、慣性力が主たる理由であるといえます。そして慣性力は加速度に比例します。では、お皿の加速度を計算しましょう。「2階微分」ですね。
2階微分ですが、勤めていたときに社内的な報告書で「2階微分」と書いたところ、査読された方(かなり偉い人)から「2回微分」ではないかとの指摘がありました。これ、間違いを説明すると査読された方の気分を害するのではないかと思い、文章をかなり変えて、2階微分という単語が出てこないように書き換えたことがありました。
成田空港、つまり糸魚川の東側の電源周波数は50[Hz]です。変位振幅Xを0.001[m]とすると、加速度振幅は(2πf)2Xであり、97.7[m/s2]です。
次に、糸魚川の西側の電源周波数は60[Hz]です。同じ変位振幅でパーツフィーダーを動かしたら、142.12[m/s2]の加速度となります。1.44倍の加速度なので、慣性力も1.44倍となり、角砂糖が必要量以上に供給されてしまいます。
それでは都合が悪いので、ボリュームを絞って同じ加速度にします。60[Hz]で同じ加速度となる変位振幅は0.00069[m]です。これは1.44分の1、つまり0.69倍となります。
お皿の変位振幅が小さくて済むのだから、ボルトに作用する繰り返し荷重振幅も減ります。この結果、糸魚川の西側のパーツフィーダーは全然大丈夫だったということです。表1にまとめます。
次は全然毛色の違う話をします
次回は、全然毛色の違う話をします。本命馬と穴馬が逆転したとか、ミイラ取りがミイラになった(ミイラになった方、ゴメンなさい)という話です。お楽しみに! (次回へ続く)
Profile
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
共振はなぜ起きる? ばね−マス系と伝達関数で考える
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第2回は、振動トラブルの背景にある「共振」に焦点を当て、ばね−マス系モデルと伝達関数を用いてその本質を整理する。
同じ機械なのに1号機はOK、2号機はNG 設計者を悩ませる“再現しない不具合”
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第1回は、同じ図面で製作した複数台の直動パーツフィーダーにおいて、ボルトが1週間で折れたり折れなかったりするという、再現性のない厄介な事例を紹介する。
ストップ! 外注丸投げ――CAE解析や冷却系の設計を自分でやれるようになろう
CAE解析とExcelを使いながら冷却系の設計を“自分でやってみる/できるようになる”ことを目指す連載。連載第1回では、冷却系設計に関する題材をいくつか紹介し、本連載で取り上げるトピックスについて整理する。
連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」の内容と有限要素法
金属疲労を起こした際にかかる対策コストは膨大なものになる。連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」では、CAEを正しく使いこなし、その解析結果から疲労破壊の有無を予測するアプローチを解説する。連載第2回では本連載の「あらすじ」と「有限要素法」について取り上げる。
解析専任者に連絡する前に、設計者がやるべきこと
連載「CAEと計測技術を使った振動・騒音対策」では、“解析専任者に連絡する前に、設計者がやるべきこと”を主眼に、CAEと計測技術を用いた機械の振動対策と騒音対策の考え方や、その手順について詳しく解説する。連載第1回では、本連載の趣旨、振動対策や騒音対策が必要となる場面などについて取り上げる。
設計者なら一度はやってみたい形状最適化、お金をかけずにどこまでできる?
原理原則を押さえていれば、高額なソフトウェアを用意せずとも「パラメトリック最適化」「トポロジー最適化」「領域最適化」といった“形状最適化”手法を試すことができる! 本連載ではフリーのFEM(有限要素法)ソフトウェア「LISA」と「Excel」のマクロプログラムを用いた形状最適化にチャレンジする。


