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直動パーツフィーダー不具合をばね−マス系で読み解く冴えない機械の救いかた(3)(3/4 ページ)

本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第3回は、同一設計にもかかわらず性能にばらつきが生じる直動パーツフィーダーの不具合を取り上げ、ばね−マス系と伝達関数の考え方から原因と対策の方向性を整理する。

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共振点がずれてしまう状態

 まず前者(図4)です。板ばねの材質と板ばねの厚さは同じ設計なので、変動の余地はありません。板ばねを留めているボルトの締め付け具合を考えてみましょう。

入力の周波数を少しずらしたときの伝達関数
図4再掲 入力の周波数を少しずらしたときの伝達関数[クリックで拡大]

 過去のシリーズで、「ボルトが発生する軸力はばらつく」と書きました。「締め付け係数Q」なるものが定義されており、式10となります。

式10
式10

 検索するといろいろな値が出てきますが、トルクレンチで締め付けた場合、Q=1.4〜3[-]と筆者は認識しております。板ばねはボルトで「ギューッ」と締め付けられていますが、その度合い、つまり軸力が1.4〜3倍変わるということになります。

 軸力がばらつく理由はいくつかありますが、1つ目は摩擦係数のばらつきです。また、ボルトの軸力は機械を稼働すると初期段階から低下するといわれています。その理由は、ボルト締結面の小さな凹凸がつぶれるためといわれています。さらに、ボルト締結体に作用する力はいくつかありますが、その力の分配が変化するためだと考えています。

 「ギュー」っと締め付けられている力が大きいと、ばねの変形量は小さくなることが想像できます。ボルトの軸力が前述した程度に変化するので、板ばねユニットのばね定数kが容易に変化すると考えられます。

 ばね定数kが変わると、図4において状態がCase1からCase2に変わります。つまり、パーツフィーダーのお皿の振動の振幅が小さくなります。そのため、所望の量の角砂糖を供給するには装置の電源のボリュームを上げる必要が生じます。

 この結果、必要量以上の力が装置に作用し、ボルトの繰り返し荷重が増加して、疲労破断につながったと考えています。

減衰が変化する状態

 次は後者(図5)の状態を考えましょう。パーツフィーダーの板ばねが変形するとき、板ばね同士は少しだけ滑ります。この摩擦によって減衰効果が働きます。この滑りはクーロン摩擦と考えましょう。

減衰を大きくしたときの伝達関数
図5再掲 減衰を大きくしたときの伝達関数[クリックで拡大]

 ボルトの軸力が変わると摩擦力が変わります。軸力の変化は、板ばね同士の滑りの際に発生する摩擦力を変化させます。さらに、機械の稼働によって板ばねが摩耗し、板ばね同士の摩擦係数も変化していきます。

 以上の理由から、ばね−マス系の比例粘性係数c、すなわち減衰比ζが変動します。減衰比ζが変わると、図5において状態がCase1からCase3に変わります。振幅が小さくなるため、所望の供給量を維持するにはボリュームを上げる必要があり、結果としてボルトの疲労破断につながります。

 前述した2つの理由から、繰り返しとなりますが、ボリュームを上げることで装置に加わる力が増大し、ボルトへの変動荷重が増加して、疲労破断につながったと考えられます。

 「1号機はうまくいっているのに2号機は性能が出ない」理由は、ボルト軸力のばらつきと摩擦による減衰力の変動にあり、これらを同一の値に制御できなかったためだと考えられます。

 対策された機械は、ボリュームを変えても疲労破断しないものとなっていましたが、今回の仕事は、その対策した機械が大丈夫かどうかを調べるものでした。

 作業としては、(1)板ばねの振動を加速度ピックアップで測定し、アナログ積分器を2つ通して変位信号に変換し、振動変位として扱います(前のシリーズで紹介)。この振動変位をベースとしてCAE解析を行い、ボルトの応力振幅を求めました。

 次に、(2)計算した応力振幅と、ボルト材料の切欠係数βを考慮した疲労限度とを比較し、疲労破断がないことを確認しました。

 普通の金属疲労対策では(1)(2)で十分でしたが、今回は再現性のない問題だったため、これだけでは顧客の不安は払拭(ふっしょく)されません。よって、(3)AMラジオを例にして、前述した事情を説明し、納得していただきました。

 この手の問題の対策としては、角砂糖の供給量が少なくなったからといってボリュームを大きくするのではなく、機械を調整する箇所は他にもあるため、これらを調整したり、1日1回点検したりして、お皿の振幅が最大となるように調整することが必要だと考えています。

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