ヘリウムフリーの新型MRIを発売、AIで投影時間を最大50%短縮:医療機器ニュース
シーメンスヘルスケアはAIとセンシング技術を融合した1.5T MRI装置「MAGNETOM Flow.Elite」を発売した。被験者の動きや操作者の熟練度に左右されない高精度な検査を提供する。
シーメンスヘルスケアは2025年11月4日、AI(人工知能)による画像再構成技術と高度なセンシング技術を組み合わせたヘリウムフリー1.5T MRI装置「MAGNETOM Flow.Elite(マグネトム・フロー・エリート)」を発売すると発表した。70cmのワイドボア設計を採用し、被検者の動きやオペレーターの熟練度に左右されず、高精度な検査を可能とする。
画像再構成技術「Deep Resolve」により、撮像時間を最大50%短縮しつつ空間分解能を2倍に高めた。呼吸や心臓の動きを非接触で検出する「BioMatrix Technology」で、安定した高品質画像を提供する。また、体動補正技術や自由呼吸下での心臓および腹部撮像を可能にするデータサンプリング技術「GRASP」などを搭載し、検査の効率化と患者負担の軽減を図った。
新設計のブランケット型コイル「BioMatrix Contour coils」は軽量かつ柔軟性が高く、装着時の負担を軽減する。位置認識センサーによって、ポジショニングはワンタッチで可能だ。ワイヤレス音響システムにより検査時の騒音を低減し、オペレーターの声や音楽を聞きやすくするなど、被検者体験を向上させた。AIによる自動撮像支援機能「myExam AutoPilot」により、頭部や脊椎などのルーティン検査をワンクリックで実施できる。
また、冷却に液体ヘリウムをほぼ使用しない独自の「DryCooling Technology」を採用。従来最大1500L必要だった液体ヘリウムを0.7Lまで削減し、ヘリウムの再補充が不要な完全密閉構造の冷却機構とした。さらに、省電力機能「Eco Power Mode」「Eco Gradient Mode」により、電力消費量を最大40%削減。設置面積25m2、重量約3.7tの小型設計で、クエンチパイプ工事も不要なため施工コストを抑えられる。
シーメンスヘルスケアは、経営効率や人手不足の課題に加え、環境負荷低減にも貢献する医療機器として、持続可能なヘルスケアを目指すとしている。
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