イノベーションを組織で生み出す OKIがISO 56001を生かしたIMS支援サービス開始:製造マネジメントニュース
OKIはISOによって発行されたイノベーションマネジメントシステムの国際規格である「ISO 56001」認証取得で培ってきた実績を基に、企業のイノベーションの推進体制を構築する「IMS支援サービス」を提供する。
OKIは2025年8月29日、東京都内で記者会見を開き、ISO(国際標準化機構)によって発行されたIMS(イノベーションマネジメントシステム)の国際規格である「ISO 56001」認証取得で培ってきた実績を基に、企業のイノベーションの推進体制を構築する「IMS支援サービス」を同年9月から開始すると発表した。同サービスは、各企業の文化や事業特性に合わせたイノベーション推進体制を、ISO 56001の要求事項である「経営層によるリーダーシップ」「実践支援」「人材育成」「マネジメント(計画/評価/改善)」という4つの観点を踏まえ、迅速かつ効率的に構築できるように支援する。
OKIは2025年7月に国内で初めてISO 56001認証を取得した。加えて、BSI(英国規格協会)によって発行された「BSI Kitemark」認証も受けており、BSI Kitemark認証製造業として世界で初めてのISO 56001の認証取得となった。OKIがISO 56001をベースとしたIMS支援サービスを展開する理由について、OKI 常務理事 イノベーション責任者 デジタル責任者兼イノベーション推進室長の藤原雄彦氏は「将来的に産官学連携のような形で、IMSという共通言語による新しいビジネス創出とエコシステムの構築を大きな目的としている。その第一歩としてIMS支援サービスを立ち上げて、実施していく」と語る。
OKIが取り組む社内IMS「Yume pro」の取り組み
OKI社内では、Japan Innovation Network(JIN)と連携しながらISO 56001に基づくIMS「Yume pro」を構築し、全部門で運用している。2018年から全社的に実施され、最初は40件ほどしか集まらなかったアイデアが、2020年頃からは年間300〜400件ほど集まるようになったという。2024年度には件数から質へと焦点が移り、事業化につながるアイデアも幾つか生まれている。OKIのこれらのプロジェクトでは、デザイン思考に基づき、BMC(ビジネスモデルキャンバス)を活用している。藤原氏は「多くの人はBMCの使い方を間違っていて、キャンバスをただ埋めていってしまう。まずは顧客が誰かを特定し、困りごとを抱える人にどのような価値を、どのような手段で提供するかという順序で考えなければならない」とコメントした。
OKIでは取り組みを加速させるため、AI(人工知能)エージェント「ダビンチ グラフ」を活用し、イノベーション活動に取り組んでいる。同AIは、OKIが実施している社内アイデアコンテスト「Yume pro チャレンジ」2023年度で優勝した案を基に開発された。直感的なUIと高精度な会話が可能な「グラフ文書技術」が特徴であり、AIと対話をしながら立てた仮説を検証/改善したり、IMSのプロセスや社内ルールの不明な部分をサポートしたりし、OKI社内のIMS活動を支援している。
AIにはIMSのプロセスやOKIの社内ルール、技術情報、過去に指導を受けた新規事業家の知見、市場データの内容などを学習させ、LLM(大規模言語モデル)とグラフ文書を関連付けることでデータの解像度を高めている。また、「グラフ文書技術」について、OKIは特許を取得している。OKIイノベーション推進室 部長の青木聡氏は「将来的にはダビンチ グラフを商用化させ、IMSの質と量の向上や効率化を推進するツールとして展開し、エコシステム強化につなげていきたい」と今後の展望を述べる。
新しいイノベーションを現場に取り入れる上で必要なこと
既存のコア事業を持つ企業に対して、新たな手法を導入しようと働きかけた場合に、現場からは反対の声が上がることが懸念される。既存事業と売り上げ向上に日々取り組む社員に対して「新しいことを考えろ」と指示をしても「やり方が分からない」「人を集めることができない」「そもそも新しいことに取り組む時間がない」という課題がある。
これらの課題解決の糸口について藤原氏は「時間を与えなければならない。リーダーに対して『1週間の中の特定な曜日だけは新しいことを考えなさい』と伝える必要がある」と強調する。OKIでは実際にマネジメント層に対して新しいことを考える時間を与えた事業本部があり、その事業本部ではYume pro チャレンジの提案件数が一気に増加し、その年の大賞を受賞したという。人が足りない場合は、新しいアイデア出しをする際に、他の部署と共同で提案するという形にすることで、社内のエコシステムにつなげることができる。
青木氏は「相談を受けた企業の実際の現場に足を運んで色んな話を聞いていくと、『実はここで困っている』『昔こういうことを試したが失敗した』といった話を聞き出すことができ、当初の相談内容とは違う新しい製品が誕生した」と述べる。現場の声を聞くことで新たな課題を発見し、それに対して技術的なアプローチをすることで、結果的に新しいソリューションにつながる。青木氏は「当初の提案が何回か通ううちに全く違うものに変化し、根強いニーズがある製品化までつなげることができた」と述べ、現場に入り込んで課題を見つける重要性を伝えた。
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