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屋外なのに夏は涼しく冬は暖かい、パナソニックが駅のホームで「頭寒足熱」鉄道技術(2/2 ページ)

大阪メトロは大阪・関西万博の会期中の混雑に対応するため、ホーム上の待合室を撤去した。これまで設置されていた待合室は扉で区切られた個室で、ホームのスペースを狭める。そこで、狭いホームでも快適さを提供したいと考えた大阪メトロが設置したのは、パナソニック 空質空調社が開発した扉のない前面開放型の「待合ブース」だ。

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快適さが狙い通りに好評

 待合ブース内に設置したセンサーでデータを収集したところ、個室型の待合室と比べて冬は足元が13.4℃暖かく、夏は頭部が4.5℃涼しくなることが分かった。また、個室型の待合室では夏冬ともに足元よりも頭部の体感温度が高くなったが、待合ブースでは頭部の方が温度の低い頭寒足熱を実現した。

 一般の利用者に待合ブース内に設置したQRコードでアンケートをとった結果、扉のない待合ブースは個室型の待合室よりも「快適だ」とする回答が大幅に増えた。アンケートでは、冬は電車通過時や強風時などに暖かさが感じられないこと、夏は時間帯によって直射日光で暑いことなども指摘された。これに対しては、待合ブースの壁や天井の形状を工夫して対応できる見込みだという。

冷房時の待合ブースに座ったときのサーモグラフィー。着座直後(左)。着座1分後(中央)。着座5分後(右)[クリックで拡大] 出所:パナソニック

夏は暑く冬は寒い場所に向けて幅広く提案

 これまで設置されていた個室型の待合室は風の影響を受けにくい半面、夏は冷えにくくエネルギー効率が悪かったり、冬は暖気が上にたまって足元が冷えたりするなどの課題があった。

 個室型の待合室はホームを狭めるだけでなく、快適とはいえない部分もあったとパナソニック 空質空調社は説明する。荷物で両手がふさがっている人や高齢者にとっては扉を開けにくい。不特定多数が触る扉や、狭い空間は感染症の懸念もある。狭い空間で知らない人と一緒に過ごす不安や、イヤフォンからの音漏れ、飲食のにおいなどの不快さも指摘されているという。

 また、鉄道会社としては、扉の故障や天井に設置された空調の整備など、個室型の待合室のメンテナンスにも課題を感じていた。

 大阪メトロは大阪・関西万博終了後に駅のホームに待合スペースを改めて設置する計画だ。これに向けてパナソニック 空質空調社は、実証実験の成果も踏まえて待合ブースの常設を提案していく。

 2025年10月に待合ブース設置の実証実験が終了した後は商品化に向けた開発を進め、2026年度冬または2027年度夏の実用化を目指す。また、5年後に累計30億円以上の事業に育てる計画だ。商品化に向けて、価格低減や施工体制の用意、施工時の組み立て性のよさ、施工後のサービスやメンテナンスなどさまざまな側面を作り込んでいく。ホームの両側に線路がある島式のホームへの設置方法も検討する。

 また、待合ブースのベンチは4人掛けで、ベンチに座っている人以外は冷暖房を感じにくい。待合ブースで立つ人も対象にした空調のゾーニングは、今後の検討課題の1つだという。

 今回は駅のホームでの設置だったが、公園や飲食店のテラス席など、夏は暑く冬は寒い場所に向けて幅広く提案していく。海外展開も視野に入れる。また、次亜塩素酸による除菌脱臭技術「ジアイーノ」や、フレグランスなどを冷暖房に組み合わせることも検討している。

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