線路の冠水を防ぐ排水ポンプ、JRとパナソニックが遠隔監視に取り組む:鉄道技術(1/2 ページ)
JR東日本とパナソニック エレクトリックワークス社はJR武蔵野線に導入した排水ポンプ監視の取り組みを発表した。
東日本旅客鉄道(JR東日本)とパナソニック エレクトリックワークス社は2024年10月28日、JR武蔵野線に導入した排水ポンプ監視の取り組みを発表した。
故障を示す分電盤の表示や貯水槽の水位をAI(人工知能)カメラで監視することで、異常を把握してから技術部門の担当者が対応するまでにかかる時間を短縮する。まだ故障や異常は発生していないが、復旧までのダウンタイムが3分の2程度に短縮できる見込みだ。
パナソニック エレクトリックワークス社は2026年の事業化に向けて、AIカメラなどによる設備監視ソリューションをパッケージ化し、2025年からJR東日本向けに排水ポンプ以外にも展開していく。また、AI機能の拡張により検知対象を拡大する。
AIカメラによる遠隔稼働監視は、排水ポンプの設備更新のタイミングに合わせて導入した。JR東日本 八王子支社管内には、11カ所に路盤排水ポンプが設置されている。線路で勾配がついているところには地下水や湧水、雨水がたまってしまうため、これらを線路外に排水するためのポンプが欠かせない。
2020年6月には、大雨により線路が冠水。複数の排水ポンプをフル稼働させても排水しきれず、この影響で46本が運休し、7本が遅延。遅延時間は最大で316分にもなった。雨が降って地面に水が湧いてくるまでは時間がかかる。雨が降った後2〜3日をかけて路面に浸透し、勾配になっているところに流れ込む。流れ込んだ水は貯水槽で受け止めており、ポンプは水が流れ込んできたことを検知すると稼働し、排水する。
ポンプの状態の監視は、線路に沿って敷かれた専用線による沿線電話で指令部門に連絡することで行われてきた。指令員がポンプに異常があることを電話で知らせ、技術部門の担当者が目視で確認するため現場に向かう。その時点で故障の種類までは把握できず、排水が満杯なのか、ポンプが故障しているのかは分からない。
そこからさらに、ポンプなど設備メーカーへの対応を要請する場合もあり、時間がかかるのが課題だった。状況に応じて、仮設ポンプを用意したり、部品を交換するなど修理して復旧させたりする。ポンプの状況が早い段階で把握できれば、2020年6月のような場面で仮設ポンプの手当てなどを迅速に判断でき、遅延の影響を抑制することもできた。
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