線路の冠水を防ぐ排水ポンプ、JRとパナソニックが遠隔監視に取り組む:鉄道技術(2/2 ページ)
JR東日本とパナソニック エレクトリックワークス社はJR武蔵野線に導入した排水ポンプ監視の取り組みを発表した。
AIカメラで故障の内容を迅速に把握
そこで、JR東日本とパナソニック エレクトリックワークス社は、AIカメラを用いてポンプの稼働状況をチェックできるか検討を始めた。ポンプの分電盤には故障の種類や、貯水槽の流量を示すランプがついている。分電盤のこれらの表示を映像で見られるようにすることが、利便性が高く故障からの復旧にかかる時間も短縮できると判断した。
AIカメラを採用したことで、LTEや5Gを使えるため光ケーブルのコストを削減できる他、PCとカメラをセットで置く必要がないため設置する機器をシンプルにすることができたという。AIカメラはネットワーク接続に対応しており、高度な映像分析を実現するプロセッサも内蔵している。分電盤のランプ点灯を検知すると、システムによって画像を添付して報告メールが送信される。
1カ所の排水ポンプにAIカメラは2台使用する。分電盤と貯水槽の水位をそれぞれ監視する。また、電力量を計測するためのエネルギーモニターとマルチ監視ユニットも設置した。エネルギーモニターの情報はJR東日本 八王子支社のオンプレミスサーバで管理する。詳細な状況確認ができることで、将来的な予防保全にもつなげる。また、クラウドではポンプの計測データとイベントデータを収集し、可視化や集計を行う。また、これから設置拠点を拡大した際にも一元管理で運用の効率化を図る。
また、ポンプの電力量の計測によって、稼働状況も把握している。エネルギーモニターは排水ポンプの分電盤に設置されている電路保護配線用遮断器に取り付け、回路ごとの電流や電力、積算電力量を監視する。これらの数値から故障の内容を遠隔地から予測することもでき、効率的なメンテナンスに貢献している。
パナソニックとJR東日本のかかわり
パナソニックとJR東日本は2017年から駅の設備でかかわりがある。2017年には上野駅にデジタルサイネージ付き分電盤を設置。駅利用者に向けた案内を充実させるため、これまで人目につかない場所に置かれていた分電盤を活用した。
2021年からは、設備監視用のAIカメラの検討を始めた。安価な設備監視を実現するため、パナソニック製の汎用品で構成されたシステムを開発。2022年からは、武蔵野線の排水ポンプにAIカメラを導入し、このほどの実運用に向けて検討を重ねてきた。2023年には、JR東日本の電力部門でもAIカメラの活用が始まった。排水ポンプの遠隔監視は現在、JR東日本 八王子支社管内の3カ所に導入されている。他の支社も興味を持っており、排水ポンプ以外の用途にも対応できるか関心が集まっている。
関連記事
- 相鉄バスの新型自動運転バスに見る可能性、レベル4技術は鉄道に応用できるのか
2019年から自動運転バスの実用化に取り組んできた相鉄バスだが、2024年に入ってから新たなスタートを切った。新型自動運転バスの実証実験の内容について紹介するとともに、これらの技術を鉄道に応用する可能性を検討してみたい。 - 鉄道関連ニュースまとめ
MONOistに掲載した主要な記事を、読みやすいPDF形式の電子ブックレットに再編集した「エンジニア電子ブックレット」。今回は、鉄道会社に関連したニュースをまとめた「鉄道関連ニュースまとめ」をお送りします。 - 鉄道車両用主電動機向けに銅ダイカスト回転子を製品化
日立インダストリアルプロダクツは、鉄道車両用主電動機向けに銅ダイカスト回転子を製品化した。既存の回転子と比べて軽量化している。同社発表によると、世界初だという。 - 世界初、新幹線にドライバーレス運転を導入へ
JR東日本は、世界で初めて新幹線にドライバーレス運転を導入する。上越新幹線での導入を皮切りに、北陸新幹線、東北新幹線に順次拡大する。ドライバーレス運転の技術開発の促進により、世界の鉄道をリードしていく。 - 東海道新幹線の大規模改修工事に用いる新工法を開発
JR東海は、東海道新幹線の大規模改修工事に用いる新工法を開発した。コンクリート橋に炭素繊維シートを用いるもので、軽量化やコスト低減が可能。2024年9月より、同工法での施工を順次進める。 - 鉄道に次世代バイオディーゼル燃料、JR西日本が営業車両で長期テスト
JR西日本は燃料に次世代バイオディーゼル燃料を100%使用した鉄道車両の走行試験を実施する。営業車両を次世代バイオディーゼル燃料100%で走らせるのは「国内初」だとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.