140周年迎えた田中貴金属、狙うは「リサイクル事業拡大」と「白金の新用途創出」:材料技術(3/3 ページ)
宝飾品や金地金で知られる田中貴金属グループが、創業140年を機に、プレスカンファレンスを開催した。電気自動車の普及による白金(プラチナ)需要の減少という危機を前に、老舗メーカーの同社が打ち出した解決策や、環境に貢献するリサイクル事業の強化など、新たな貴金属ビジネスが明かされた。
「健やかで豊かな社会への貢献」
「健やかで豊かな社会への貢献」では、半導体分野とメディカル分野に向けた取り組みを進める。
半導体分野では、製造プロセスを対象に多様な製品の開発/供給を通じて、技術の進化を後押しする。化学気相成長(CVD)/原子層堆積(ALD)といった半導体の薄膜形成プロセスに向けては、微細化と高耐久性のニーズに応えるルテニウム(Ru)プリカーサーを開発し、次世代半導体のプロセス要求に対応。パワー半導体分野には、放熱部材として使える活性金属ろう材や銅複合材を開発し、次世代ヒートシンクの実現を支援している。
メディカル分野では、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症をはじめ、帯状疱疹などで独自の各種診断キットを受託製造。さらに、カテーテルをはじめとした血管内治療デバイス向けに、高い生体適合性やX線不透過性を有する貴金属素材の特徴を生かした部材を幅広く提供している。
今後の展開について
多田氏は、「プラチナは現在、その需要のほとんどがガソリン車やディーゼル車の排ガス触媒に使われている。しかし、電気自動車(EV)の普及により、プラチナ需要の大幅な減少が予測されるため、新たな用途開発が急務であると考えている」と警鐘を鳴らす。
そこで、田中貴金属工業では新用途の創出を目的に、CO2から燃料を生み出すプラチナ系触媒の開発を進めている。
また、2016年に実施したMETALORの買収により、田中貴金属の産業事業は大きな変化を遂げているという。「田中貴金属工業は、プラチナ系貴金属のリサイクルに強みを持つ一方、METALORは金銀系のリサイクルに優れている。互いの長所を生かすことで、製品や地域におけるリサイクルの相互補完性が高まり、シナジー効果を生み出している。両社が力を合わせることで、将来は売上高全体のうちリサイクル事業が占める割合は30%になると見込んでいる」(多田氏)。
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