140周年迎えた田中貴金属、狙うは「リサイクル事業拡大」と「白金の新用途創出」:材料技術(2/3 ページ)
宝飾品や金地金で知られる田中貴金属グループが、創業140年を機に、プレスカンファレンスを開催した。電気自動車の普及による白金(プラチナ)需要の減少という危機を前に、老舗メーカーの同社が打ち出した解決策や、環境に貢献するリサイクル事業の強化など、新たな貴金属ビジネスが明かされた。
注力する3つのテーマ
田中貴金属工業では現在、「循環型社会の実現への貢献」「水素社会の実現への貢献」「健やかで豊かな社会への貢献」という3つのテーマに向けた取り組みに注力している。
リサイクル事業で進めている「循環型社会の実現への貢献」では、顧客の製造工程で発生するスクラップや市場由来の集荷物から貴金属をリサイクルし、再び製品として加工/供給することで、循環型のプラットフォームを構築。この仕組みにより、資源の有効活用と安定供給を両立している。
リサイクル由来の貴金属は、鉱山由来の貴金属と比較してCO2換算の排出量が少なく温室効果ガスの削減にも貢献する。
貴金属のリサイクルでは、事業継続計画(BCP)対応の観点から、金/銀系をリサイクルする湘南工場(神奈川県平塚市)とプラチナ系をリサイクルする市川工場(千葉県袖ケ浦市)への大型設備投資を計画しており、これにより安定かつ持続可能な供給体制をの構築を進める。田中貴金属工業 代表取締役副社長執行役員の多田智之氏は、「大型の投資を行うことで、両工場の設備刷新や自動化を計画している」と話す。
海外では、成都光明光電との共同出資会社である成都光明派特貴金属を通して、中国でガラス製造装置の貴金属リサイクルを展開している。マレーシアでは2024年に、大手資源回収企業であるMEP Enviro Technologyと貴金属回収に関する技術援助契約を締結した。台湾では、現地法人である台湾田中貴金属工業の湖口工場の新棟が2024年に稼働したことで場内の床面積が6倍になり、リサイクル能力が向上した。
多田氏は、「当社では現在、売上高全体のうちリサイクル事業の割合は15%だが、今後はその割合を着実に拡大する。将来は主要な貴金属原料を全てリサイクル由来に転換することを目指している」と述べた。
「水素社会の実現への貢献」では、グローバルシェア1位の燃料電池用電極触媒やPEM(プロトン交換膜)形水電解用電極触媒、アンモニア改質触媒、水素透過膜の開発と供給を進める。2026年には、成都光明派特貴金属の四川省雅安拠点に投資を行い、燃料電池用電極触媒の供給を中国で開始する。
「水素関連技術は各国の政策によって需要が変動するものの、20〜30年後には水素社会が到来すると確信している。日本での開発技術を生かし、今後も積極的に投資を続け、グローバル市場で貢献することを目指す」(多田氏)
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