140周年迎えた田中貴金属、狙うは「リサイクル事業拡大」と「白金の新用途創出」:材料技術(1/3 ページ)
宝飾品や金地金で知られる田中貴金属グループが、創業140年を機に、プレスカンファレンスを開催した。電気自動車の普及による白金(プラチナ)需要の減少という危機を前に、老舗メーカーの同社が打ち出した解決策や、環境に貢献するリサイクル事業の強化など、新たな貴金属ビジネスが明かされた。
田中貴金属グループは2025年7月31日、東京都内で「140周年プレスカンファレンス」を開催した。本稿では、同カンファレンスで紹介された「産業事業の現状と今後について」を中心に紹介する。
ボンディングワイヤが売上高で最も大きな割合を占める
冒頭、田中貴金属グループ 代表取締役社長執行役員の田中浩一朗氏は、「当社は1885年に日本橋で両替商を行う田中商店として創業した。1889年には貴金属メーカーに転身し、白金の工業製品の国産化に成功するなど、貴金属業界をけん引してきた。戦後復興期には、電電公社(現:NTT)の通信網整備に使われる『クロスバー交換機』の接点などを製造/販売し、大きく成長した。過去50年間で海外拠点も増やした他、2016年にはスイスの貴金属メーカーであるMETALORを買収することでグローバル展開を加速させた。私が2020年に社長に就任した後の2021年度には、短期的な中期計画ではなく、創業200周年となる2085年を見据えた超長期経営計画『TANAKAルネッサンスプラン』を発表した。そのため、短期的な利益追求ではなく、長期的な視点での研究開発や投資判断を重視している。社内では『田中流の両利きの経営』として、新しい事業の『探索』と既存事業の『深掘り』を同時に進めている」とあいさつした。
田中貴金属グループの産業事業を担当する田中貴金属工業は、金属加工製品や化学品、貴金属のリサイクル事業を幅広く展開している。現在は売上高全体のうち、ボンディングワイヤ事業が20%を、接点とリサイクルの事業がそれぞれ15%を、スパッタリングターゲット、化合物/触媒、白金加工品の事業がそれぞれ10%を、ペースト、めっき液、接合材の事業がそれぞれ5%を、その他が3%を占めている。
用途別では、民生/産業機器向けの製品が40%、半導体向けとモビリティ向けがそれぞれ20%、リサイクル向けが15%、水素関連向けが3%、メディカル向けが2%の割合となっている。
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