半導体検査装置のプローブピン用パラジウム合金材料を開発、硬度は640HV:材料技術
田中貴金属工業は、半導体パッケージの後工程における最終テストで使用されるプローブピン用パラジウム合金材料「TK-SK」を開発した。
田中貴金属グループの中核企業として産業用貴金属事業を展開する田中貴金属工業は2024年10月17日、半導体パッケージの後工程における最終テストで使用されるプローブピン用パラジウム(Pd)合金材料「TK-SK(ティーケーエスケー)」を開発したと発表した。同社は2028年までにTK-SKの出荷量を、既存製品の1.5倍にすることを目指す。
プローブピンの摩耗による変形を軽減
近年、半導体製造の前工程と後工程向けの検査装置で使うために、高硬度プローブピンの需要が高まっている。しかし、プローブピンは硬度を高めると、切削の際に破損するなど、材料の加工が難しくなるといった課題があり、市場に流通するパラジウム合金系材料の硬度は560ビッカース硬度(HV)程度が最大とされていた。
そこで、同社は独自の加工技術により硬度640HVのTK-SKを開発した。TK-SKの用途は後工程で行われる通電試験の最終テスト用テストソケット材料を想定している。
なお、通常のテストソケットには、探針としてポゴピンタイプのプローブピンが使用される。プローブピンの先端(プランジャー)は、検査時に基板との接触で生じる摩擦によって摩耗する。プランジャーには、はんだ材料が付着する場合があり、クリーニングのためにはんだ材料を削り落とす必要があり、その際にもプランジャーは摩耗により変形してしまう。このため、検査装置のプローブピンは定期的にメンテナンスする必要がある。
これらの解決策として高硬度のプローブピンを採用することで、摩耗による変形を抑えられる。検査装置の長寿命化と低コスト化への寄与も期待できる。
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