スパークプラグ外部電極の材料コストを半減、田中貴金属が白金チップを新開発:材料技術
田中貴金属工業は、ガソリンエンジンの点火に用いるスパークプラグの外側電極の材料コストを半減できる白金チップを開発した。白金合金とニッケルをクラッド(異種間接合)した製品で、白金使用量を大幅に低減することで、コスト削減につなげた。
田中貴金属工業は2014年11月4日、ガソリンエンジンの点火に用いるスパークプラグの外側電極の材料コストを半減できる白金チップを開発したと発表した。白金合金とニッケルをクラッド(異種間接合)した製品で、白金使用量を大幅に低減することで、コスト削減につなげた。2015年1月から評価サンプルの提供を始める。年間売上高目標は約20億円。また、ドイツ・ミュンヘンで開催される展示会「electronica 2014」(2014年11月11〜14日)で展示する予定だ。
近年、自動車開発は環境規制への対応が迫られており、エンジンの燃費性能の向上は必須の課題となっている。そのためガソリンエンジン車には、ターボチャージャーなどの過給機を使って排気量を減らしながら高い出力も得られる直噴ターボエンジンが搭載されるようになっている。こういった燃費の良好なエンジンは、スパークプラグへの要求電圧(放電に必要な電圧)が高い。また、さらなる耐久性も求められる傾向にある。高い要求電圧に対応し、耐久性も向上するには、スパークプラグの電極サイズを大きくすればいいが、そうすると高価な白金の使用量も増えてしまう。
長寿命タイプのスパークプラグでは、外側電極に白金合金チップを使って、電極の高耐久性を確保している。この白金合金チップは、ニッケル製の電極の台座と溶接して接合するが、その接合界面に台座のニッケルと白金合金が溶融した合金層が数100μmに渡って形成される。つまり、放電に寄与しない溶接部に使用する必要のない白金が多く存在していることになる。
今回、田中貴金属工業が開発した白金チップは、白金合金とニッケルがフラットに固相接合されたクラッドチップとなっている。外側電極に組み付ける際には、接合信頼性を確保するのに必要な20〜30μmの厚さを持つニッケル部と、ニッケル製の電極の台座を溶接することになる。ニッケル同士の溶接なので、放電に寄与しない溶接部に白金を使わずに済むというわけだ。
このクラッドチップに用いる白金の使用量は顧客が決めることになる。ただし、田中金属工業によれば、材料コストを50%削減したクラッドチップを使っても、白金合金の無垢材を使う場合と同じ性能を発揮できたという。
この他、今回発表した白金合金チップのバリ―エション製品として、白金合金と耐熱ニッケル合金で構成されたテープ形状のクラッド材の提供も可能だという。これにより、顧客ごとに異なるスパークプラグの設計と生産プロセスに対応したい考えだ。
なお、今回の製品開発では、大阪大学マテリアル生産科学専攻の教授である藤本公三氏と、同准教授である福本信次氏と2010年から共同で研究を行った成果を活用した。両氏とは、接合のプロセスウィンドウや、生産ラインでの接合モニター因子などについての研究を行い、接合方法の実用性を確認したとしている。
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