田中貴金属工業が真空成膜装置部材に付着した貴金属の新たな回収方法を確立:材料技術
田中貴金属工業は真空成膜装置部材に付着した貴金属の新たな回収方法として治具洗浄法「TANAKA Green Shield」を確立したことを発表した。
田中貴金属グループの中核企業として産業用貴金属事業を展開する田中貴金属工業は2024年1月23日、治具洗浄法「TANAKA Green Shield」を確立したことを発表した。
2025年までにPGM膜の剥離回収量を現状の6倍に拡大
真空成膜装置※1部材の治具洗浄方法は、物理剥離(ブラスト処理)やアルミニウム溶射下地成膜などの方法がある。物理剥離は、研磨剤(洗浄剤)を吹き付けることで付着膜を削り取る洗浄方法であり、低コストなため、現在主流となっている治具洗浄方法だ。この方法では、研磨剤の使用による基材表面へのダメージが基材のライフサイクル低下につながる。
※1 真空成膜装置:スパッタリングや蒸着など、半導体の製造工程において薄膜成形のプロセスで用いる装置。
加えて、飛散による地金回収ロスの発生がデメリットとなっていた。一方、アルミニウム溶射下地成膜による治具洗浄は、あらかじめ防着板※2にアルミニウムを溶射法にてコーティングし、薬液でアルミニウムを溶解することで付着膜を剥離する方法だ。この方法では、アルミニウムの非成膜面への付着膜の回収が困難である他、アルミニウム成膜費用が高価であることがデメリットとなっている。
※2 防着板:成膜装置のチャンバー(物理的、化学的反応を起こさせるための密封した反応容器)の内壁への着膜を防止するために設置される板。
一方、今回、田中貴金属工業が開発したTANAKA Green Shieldでは、防着板にあらかじめニッケルめっきによる下地加工を行う。例えば、スパッタリング加工(防着板使用)後、防着板とPGM※3スパッタ膜との間に施したニッケルめっきコーティングのみを溶解することで、基材を傷つけずにPGMスパッタ膜だけでなく、さまざまな成分の付着膜を剥離することができる。
※3 PGM:貴金属のうちプラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムの6種類を指す。
この下地加工は、防着板やスパッタ膜との密着性が高く、スパッタ膜が剥がれることによるスパッタ加工不良を防ぐことができ、多様な形状の部品にもめっき加工が行える。同洗浄法では、基材劣化を防げる他、アルミニウム成膜に比べ低コストを実現する。また、洗浄剤の使用量も減らせるため、環境にやさしい次世代の治具洗浄法だ。
今後、田中貴金属工業では、TANAKA Green Shieldについて、2025年までに多種多様な形状/サイズの部材に対応可能な体制を整え、PGM膜の剥離回収量を現状の6倍に拡大することを目指す。
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